廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

真の実力が発揮された佳作

2022年03月06日 | Jazz LP

The Junior Mance Trio / That's Where It Is !  ( 米 Capitol ST-2393 )


ジュニア・マンスはボビー・ティモンズなんかと一緒で、大抵「ファンキー」やら「ブルージー」の一言でかたづけられてしまって、
それ以上顧みられることはない。このわかったようなわからないような形容のせいで軽く扱われてしまっているのは何とも残念だし、
そもそもこれらが本当に適切な表現なのかどうかも怪しい。

1947年にジーン・アモンズのバンドに参加したのを皮切りに、レスター、パーカー、スティットとの共演、兵役を経てキャノンボールの
最初のバンドのレギュラー・ピアニストを務め、ダイナ・ワシントンの歌伴もやるなど、自身のリーダー作 "Junior" を作るまでに長いキャリアを
積んでいる。その後、リヴァーサイドと契約してトリオ作を多数リリースすることで独立したピアニストとして認知されるようになった。
その次に契約したのはメジャーレーベルのキャピトルで、このアルバムはその時期のもの。

どこかのラウンジでのライヴ録音のようだが、観客のたてる雑音が聴こえないことから(アメリカの観客にしてはお行儀が良すぎる)、
もしからしたら拍手は後からオーヴァーダブされたものかもしれない。非常にいい音で録音されているので、彼の繊細なタッチやピアノの
音色の美しさがこれでもかという感じで聴くことができるが、これでわかるのは彼の演奏は物凄く洗練されている、ということだ。

レッド・ガーランドにも劣らないくらいに音色の粒立ちの良さが際立っているし、正確なタイム感と抑制の効いたフレーズに圧倒される。
「玉を転がすような」とはこういうことを言うのだろう。

ブルース形式の曲がメインとなっているが、そのブルース感は上質で、「ブルージー」という語感からはほど遠い。
そういう雰囲気よりも上品なピアニズムが生み出す快楽度のほうが遥かに高い。他のピアニストを寄せ付けない、独自の輝きを持っていると思う。

ジョージ・タッカーのベースもクリアに録られていて、音質的にはパッとしないキャピトルのイメージを根底から覆す高音質が嬉しい。
イージーリスニングっぽいという先入観を裏切る素晴らしいピアノトリオの演奏が聴ける。



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