廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

バイヤーの見識と矜持

2015年06月06日 | Jazz CD
今週はめぐり合わせが良くて、かなり成果がありました。 買った枚数も多くて、20枚弱。 そのうちの半分はフリーですが、これらはテーマごとに
まとめて書いたほうがよさそうなので別の機会に譲るとして、残りの半分は主流の新品でした。

別に強制されている訳でもなく好きで中古漁りをやっているのですが、その中で思うのは、新品で買えるんならさっさと新品で買っとけ、ということです。

中古漁りというのはモノを買うこと以前に「探すこと自体が愉しい」という重要なファクターがありますが、その反面、しんどいなと思うこともあるし、
費やす時間のことを考えるとぞっとすることもあるし、欲しいものがあってもコンディションのことで悩まされることもある。 だから、新品で買える
ならさっさと新品で買っとくほうがいいのです。 だから、新品のチェックも抜かりなくやります。

DUさんは全体で共通して販売する新品CDとは別に、各店舗ごとに独自の視点で新品の仕入れをしていて、その店舗でしか買えないCDというのがあります。
これが面白いものが多くて狙い目なんですが、この部分に一番力を入れているのが Jazz Tokyo です。 どうやって探し出してくるのかはよくわかりませんが、
その種類の多さや頻度や回転の速さはなかなか凄くて、私にはついて行けなくて買い逃してしまうこともよくあるくらいです。
ただ、ここ最近入荷したものの中には他の物を全て後回しにしてでも買っとかなきゃいけないものがいくつかありました。





■ Paolo Fresu Quintet / Ballads  ( Splasc(s) Records CDH366.2 )

これは長らく廃盤で入手困難だったものの再入荷です。 夜のしじまに漂うような深いバラードばかりのアルバムで、素晴らしい出来です。

トランペットはマイルスのようなレガートを多用したなめらかな奏法で、ミュートなんかはマイルスそのもの。 硬質で深いトーンのテナーも
控えめに吹いていて、全体的なアルバムのムードを壊さないように注意を払った演奏で好感が持てます。

録音も抜群に良くて、真夜中に歩道を歩くコツコツという音が静かに響いているような、静寂感に満ちた音場が部屋の中に拡がります。


■ Alf Kjelman / Feather, But No Wings  ( Reflect NO EFY 0802 )

テナーとトロンボーンの2管編成で、1999年ノルウェーのスタジオ録音。 こちらも何度目かの再入荷です。

2管のハーモニーが何とも柔らかく、ゴルソンハーモニーとはまた別の独自のシルクのようなハーモニーとなっていて、これが素晴らしいです。
全体的にゆったりと穏やかな演奏で、全曲オリジナル曲にも関わらずどれもが聴かせる佳作揃い。 王道のモダン4ビートですが、北欧ジャズが
伝統的に持つ清潔さに覆われているので、極上の雰囲気があります。 現代の欧州ジャズが持っている最良の部分がうまく前面に出た傑作だと思います。





■ Josep Tutusaus / Missing Link  ( Temps Record TR1467-GE14 )

2014年のスペインのスタジオ録音で、トロンボーンのワンホーンカルテットに所々テナーがオブリガートをつけますが、これが傑作です。
大げさな販促文も、今回ばかりは嘘のない内容です。

何よりトロンボーンの音がとても大きく張りと艶があって、まるでトランペットのように聴こえる箇所があります。 もこもこ、ぼそぼそ、と
こもった音を出す人が多い中で、これは最大の美点です。 バックのピアノトリオも切れ味抜群で粒立ちの良さが際立つ素晴らしさで、
ダレる箇所が1つもない。 どこを切っても素晴らしい演奏です。

オリジナル曲とスタンダードのミックス構成ですが、オリジナル曲のほうの出来がいいです。 こういう風にスタンダードの良さに頼らずに
アルバムの出来がいいというのは素晴らしいことです。

とうとうトロンボーンのアルバムの真打ちが登場した感があります。 これを超えるアルバムはなかなか出てこないのではないかと思います。


これらの優れたアルバムを聴きながら、Jazz Tokyo のバイヤーさんの見識と努力は素晴らしいと思いました。
もちろんただ仕事をしているだけなのかもしれませんが、ジャズが心底好きじゃなきゃ、こうはいかない。 
評価の固まった名盤・廃盤やマニア本に載ったレア盤の周りをただうろついているだけの停滞した行動とは一線を画す、素晴らしい姿勢だと思いました。
これが、DUの途切れることのない発展を底支えしているんだろうなあ、と思います。



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