黒古一夫BLOG

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「増補 三浦綾子論」刊行

2009-04-25 01:35:39 | 文学
 昨年来、作業が続いていた『増補 三浦綾子論―「愛」と「生きること」の意味』(柏艪社 281ページ 2400円)がようやくできあがりました。23冊目の自著ということになりますが、いつものことながら新著が刊行されると、新たな感慨を覚えます。
 特に今度の本は、1994年に小学館から刊行され、長らく絶版になっていたものの『増補版』なので、全くの新刊と違って刊行に関しては様々な思いがあります。前著は、キリスト者でない批評家(研究者)の初めてのまとまった作家論として、全体としては好評を持って迎えられたのであるが、今回の本は、その旧著の刊行後に『国文学』や『北海道新聞』などに求められて折々に書いた計100枚余りの「新稿」を加えて成ったもので、ページ数も大幅に増えて280ページを超える本になった。
 三浦綾子文学に対する僕の考えは旧著(小学館版)で書いたときから基本的には変わっていない。熱心なキリスト者である作家が書いた作品が、なぜキリスト者の枠を超えて多くの読者を獲得したのか、それはキリスト教の教義と関係しながら人間存在の「普遍」に関わる問題を三浦綾子が描き出したからではないのか、というモチベーションを堅持しつつ、あくまでも「書かれた物=作品」を一人の批評家として鑑賞し批評したものが旧著であり、今回の「増補版」における新稿にも同じ姿勢が貫かれている、と僕は思っている。
 大袈裟にも「100年に一度の大不況」といわれる今日であるが、本書は全く「素朴」に人間存在に対して「信頼」し続け、そのような人間観で作品を書き続けた三浦綾子文学の意味をもう一度考える一助になる本である、と著者の僕は思っている。どうぞ手にとって読んで欲しい、と思う。装幀は旧著と同じ司修さんにお願いしたのだが、旧著とは全く違ったイメージの本になり、なるほどと納得させられる装幀で、大変嬉しく思っている。司修さんに感謝である。
 版元が札幌の出版社なので、なかなか手に入りにくい(宣伝が行き渡らない)かも知れないが、もし購入したい人がいたら、僕のメール<kuroko@slis.tsukuba.ac.jp>(大学のメールアドレス)か、あるいは柏艪社に直接注文していただけると助かる。朴、あるいは版元への直接注文には、便宜を図る予定です。
 柏艪社の住所:札幌市中央区北1条西3丁目2番
     電話:011-219-1211
     担当:山本哲平
 以上、よろしくお願いいたします。

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