黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

新著『魂の救済を求めて』が刊行されました。

2006-11-15 18:45:17 | 仕事
 いよいよ新著『魂の救済を求めて-文学と宗教との共振-』が出ました。
 来週には店頭に並ぶと思いますが、
 版元:佼成出版社
 定価:2200円+税
 装幀:司修
です。僕としては19冊目の本、連載ものが本になるのは初めてなので、どのような形で読者の目に触れ、読んでもらえるのか不安でもあります。内容については、大江健三郎、遠藤周作、宮澤賢治、宮嶋資夫、北村透谷、三浦綾子、野間宏、高橋和巳、水上勉、立松和平、林京子、玄侑宋久、大岡昇平、石川達三、吉本ばなな、等について「文学」と「宗教」との関係に焦点を当て書いたもので、そのモチーフにはいささか自身はあるのですが、読者はどう判断するでしょうか。
 ともかく、読んで欲しいというのが、今の心境です。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 もし、書店が近くにない場合、あるいは忙しい場合、直接僕に注文して下さい。こちらからサイン入りで送ります。
 では、また。

『個人的な体験』(大江健三郎)を読み直して

2006-11-02 14:47:10 | 仕事
 何度目になるか分からないが、今日(12月2日)からの授業で大江健三郎の『個人的な体験』を講義するために、また読み直した。
 この長編は、読み直すたびに「新しい発見」というか、「読み落としていていたこと」「気づいていなかった点」が出てくる不思議な小説なのだが、今回も全く「新しい発見」というわけではないのだが、「菊比彦」という同性愛者が何故登場しなければならなかったのか、もしかしたら三嶋由紀夫がこの長編を高く評価したのも、この「菊比彦」が登場したからではないのか、と考えさせられた。
 僕は、大江の作品の中でこの長編は文句なしに1番か2番の作品だと思っているが、今では当たり前のようになってしまった小説への「同性愛者=ホモ」の登場を、1960年代の半ばで行った大江の先駆性は、同じく1960年代に『夢の浮橋』でスワッピングを取り入れた倉橋由美子の「新しさ」に匹敵するのではないか。もちろん、三島にはすでに『仮面の告白』という「名作」が存在するということがあったが、『仮面の告白』の隠微な印象と『個人的な体験』の実存主義的な存在感とでは、ずいぶん異なるという感想を持たざるを得なかった。
 いよいよ、僕の新著の刊行がカウント・ダウンになってきた。来週の木曜日(9日)には「見本」ができるという。いつも新刊が出るたびに思うのだが、わくわくとドキドキが同居した変な気持ちになる。今は、版元に迷惑をかけなければいいな、と思うばかりなのだが、どれほどの人が読んでくれるか、それが心配である。相手が見えない分だけ「不安」になるが、310頁で定価が2200円とのこと、決して高くないと思うので、このブログの読者の皆さん、是非お買いあげ下さい。期待は裏切らないつもりなのですが。
 よろしく。