黒古一夫BLOG

文学と徒然なる日常を綴ったBLOG

何のために?「軽い言葉」とともに

2007-12-13 14:34:55 | 近況
 昨日の橋下弁護士(タレント)の大阪府知事選への出馬表明には、笑ってしまった。なぜなら、トレードマークの薄い色のサングラスはかけていない、そのラフなファッションが売りだったのに、スーツにネクタイをつけ、「子供が笑える大阪」「職員が汗を流す大阪」をアピールしていたからである。本人は大真面目になんと4時間も記者会見に応じていたというが、テレビ報道の部分からは全く見えてこなかったのが、橋下氏が「何のために」大阪府知事選に出ようとするのか、ということであった。
 法律の専門家としてテレビ出演を重ねているうちに、いつの間にか「人気者」になってしまったことから、それが自分の「力」と錯覚しての所業なのであろうが、人口が900万に達しようとしている大都市の「再建」が、果たして「子供が笑える大阪」などというスローガンを掲げたタレントによって成し遂げられるものなのか。橋下氏は、現職知事が「金」がらみのスキャンダルで次回選挙に出ないということが分かって時点の早い時期から自民・公明の与党から出馬の打診があったというが、選挙に勝つためにはなりふり構わないという政治風土、まだまだ「民主主義」社会・思想からこの国は程遠いところに存在するのだ、と思わざる得ない。
 同じようなことで、年金問題に関して、舛添厚労省大臣、福田首相、および町村官房長官たちによる「来年3月までに年金問題に決着をつけるといった覚えはない」といった弁明のオンパレードにも言える。小学生でも「3月までに年金問題に決着を付ける」と自民党が「公約」に掲げ、参議院選挙を戦ったことは知っている。「私の内閣においてすべて解決する」と安倍前首相が街頭演説で絶叫していたのは、たった5ヶ月前の7月である。「舌の根の乾かぬうちに」という言い方があるが、舛添大臣を筆頭に、自民党のお歴々が「そんな約束したことはない」というのは、彼らの言葉に対するセンスがお粗末というだけでなく、この日本社会において「信」なるものが何もないことをあからさまにすることであり、この社会の倫理や道徳が混迷・迷走している証拠を見せてしまっている、ということになるのではないか。お粗末である。
 言葉が「軽く」なっていると実感されるようになったのは、小泉政治が始まってからであるが、最近はますますその傾向を強めているのではないか、と思える。「国際貢献」「国際貢献」という言葉だけが先行して、自衛隊がインド洋(ペルシャ湾)で何をしているのか、それにはどんな意味があるのかが十分に論議されないまま、どうも「新テロ特措法」は成立しそうである。何度でも言うが、そんなにブッシュ政権に寄り添っていていいのか、もしヒラリー・クリントン民主党候補が大統領になったら、イラクやアフガンから米軍が撤退したら、自衛隊の艦船はどうするのか。もういい加減に「戦争」のための「国際貢献」ではなく、別な方法を考えた方がいいのではないか、と思うが。「何のために」福田政権がアメリカ追随外交にこだわっているのか、どうも理解できない。まさか、「軍事大国」としての日本を世界にアピールするよい機械だと思っているわけではないと思うが、逮捕された守屋前防衛省次官(及び軍需産業・会社)などの存在を考えると、あながち穿った考えではないようにも思えるのだが、どうだろうか。

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3 コメント

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ナイーブ (joe)
2007-12-14 22:05:20
 いつもながら、黒古先生のナイーブさはいいですね。インド洋での給油は、結局はお金での「貢献」であり、そこが評価されているのはご承知のとおり。
 でも、クリントンが大統領になったらどうするって、かなり音痴っぽいです。クリントンとブッシュとどれほどの違いがあるのでしょうか。あからさまに力を見せつけるか、真綿で締め付けるかという程度の違いでしょう。
 アメリカは民主党と共和党の政権交代劇を演じて、世界を欺いてきたのではないでしょうか。アメリカの民主党は、所詮、AFL-CIO、日本で言えば連合の代弁者に過ぎないんじゃあないですか。大企業の腐れ労働貴族ですね。変わりようがない!
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その通りです。 (黒古一夫)
2007-12-15 06:40:25
 ナイーブなんて言われるのは何十年ぶりなので、それが「皮肉」であるかどうかを判断するのに時間がかかりました(こんなことを書くと、またナイーブと言われそうですね)。
 確かに、アメリカの大統領が共和党から民主党に替わろうが、アメリカが「世界の警察」面してこの世界に君臨することに変わりなく、今後も大企業(コングリマリット=世界複合産業)に奉仕する体制を維持し続けるだろうとは思います。
 ただ、ことアフガン戦争やイラク戦争に伴う自衛隊の海外派兵に関しては、アメリカがそこから撤退すれば、存在意義が消滅した自衛隊も自動的に引き揚げるであろうし、今一度原点に戻って自衛隊の海外派兵について論議する機会も生じるのではないか、と思います。(もちろん、日本において自民党と民主党とどこが違うのだ、民主党の中にだって自衛隊の海外派兵に賛成している議員がたくさんいるいるではないか、という意見が存在することは百も承知です。)
 ですから、僕は「joe」さんにようにシニカルになってはいけないのではないか、シニカルからは何も生まれないのではないか、と考えています。かつて、1970年前後の「政治の季節」の中で「敗北感」を嫌と言うほど味あわされ、ずっと長い間シニカル(虚無)の中に沈潜していた経験を持つ僕としては、「ナイーブ」と言われようが、ここが踏ん張りどころなのではないか、と考えています。以上。
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お褒めをいただいて恐縮です (joe)
2007-12-15 21:19:42
 「シニカル」などといっていただくと、つい喜んでしまいます。
 でも実はナイーブな人間です(と勝手に思い込んでいる)。
 来年の米大統領予備選で注目すべきは、オバマでしょう。エリートであっても黒人は黒人です。アメリカの寛容度を図る意味でも見逃せません。
 クリントンにはあまり興味ありません。
 日本の民主党も角栄の子分だった小沢では期待しろというほうが無理というものでしょう。
 
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