牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

導入牛の受け入れ後の事務作業(2)

2009-10-21 00:00:46 | 素牛


素牛を導入することで、その異動報告やマルキン事業への新規登録、家畜共済加入の追加登録などが必要となる。
これらの手続きに必要な書類作成のための作業を伴う。
これらの大部分は、コピー作業などであるが、導入時に出荷時の書類を整えるために、子牛登記のコピーを行っている。
購買明細書のコピーと個々の購買伝票のこぴー、子牛登記のコピーを一気に済ませる。
実は1回約60頭分のこれらのコピーは、結構手間が掛かる。
コピーを終えると導入牛の個々のデータの入力であるが、エクセルを独自に改造した牛管理用ソフトを用いている。
導入時に入力する項目は、同ソフトの<sheet1=データ入力>画面で、横の列に沿って、①牛の管理番号、②10桁番号、③産地、④性別、⑤生年月日、⑥導入月日、⑦導入価格(含諸手数料)、⑧導入体重、⑨パソコン作業日当たりの生後月齢(日令)、⑩産次、⑪生時体重、⑫在胎日数、⑬名前、⑭母の名、⑮父の名、⑯母の父の名、⑰母の祖父の名、⑱母の登録審査得点、母の育種価表示、母の登録番号、生産者名、5種混合ワクチン接種日、⑲ヘモフイルスワクチン接種日(1回目および2回目)、その他のワクチン接種日、抗生剤等投与日、⑳導入時の体調や素牛の良し悪し等の記録を行う。
ここまでの入力で、⑨や推定DGは自動的に表示される。
これだけを行うことで、疲れ目とやれやれ感が伴う。
このデータを最初に活かすのが、個体識別番号報告のための作業である。
この作業については前述したが、エクセルの通し番号と産地番号を入力することで、同センターが当初から指示している指定用紙に自動的に印字できるようにしており、それをそのまま家畜改良センターへFAX送信している。
この際、2枚ずつ印字し、1枚は同センターとの間で、トラぶった時のために保存用とし、2枚目はマルキン事業への新規登録用に添付するためである。


導入牛の受け入れ後の事務作業(1)

2009-10-19 23:06:36 | 素牛



いつもは奇数月に鹿児島県産素牛を大型車2台ずつ導入しているが、最近は偶数月にも年4回宮崎県産を1車ずつ導入している。
その他に月単位で10頭程度他所から導入している。
導入牛や出荷牛の事務処理一切は筆者の担当であるが、この作業だけでも結構な作業量である。
導入時は、当施設専用の管理用通し番号を印字した(個体識別番号用耳標とは別に)耳標を個々の牛に装着して導入してくるので、導入市場から子牛とともに子牛登記書、個々の購買伝票(県により1~2種類)、生産履歴書の3~4枚をホッチキスで留めたものとセリ落とした全頭の購買計算書が届けられる。
最初にホッチキスを外すことになるが、これらを2重3重にステップルを重ね打ちしている市場があり、頭数が多いとほとほと無駄な苦労をする。
その点、宮崎中央のは、1箇所のみを止めてあるので、感謝したいぐらい楽であり、担当者の事務能力を讃えてやりたいほどである。
ステップルを外したそれぞれの用紙には、管理用耳標番号をそれぞれに記入する。
管理用耳標番号は、概ねセリ順通りではないため、その確認がかなり面倒でもある。

牛だって怒る

2009-10-18 23:24:40 | 予防治療

新政権は、生活者のための政策を売り物に誕生したが、このところ政権のための集票政策だけが目に付く。
新政権の経済対策次第では、年末の景気動向を不安視する専門家の判断があり、それらの見通し次第では、農産物とくに牛肉の消費動向のさらなる低迷が予測される。
それらが現実となれば、諸に第一次産業いじめの政権政策となる。
第一次産業を活気づける農政や消費回復策無くしては、生産活動のやる気を失し、その結果つまりは日本力の低下に至るは、火を見るより明らかとなろう。
昔から、百姓は活かさず殺さずの補助金漬け政策で、第一次産業のやる気を削いできたのは厳然たる事実で、この様な机上の農政の結果が、自給率40%未満という生産力低下に至ったのは周知の事実である。
新政権は、消費者の顔だけに焦点を合わせて、高い集票をものにした。
議員獲得数の弱い農村或いは地方票の掘り起こし作戦に、改革が売り物であったはずの新政権は、旧政権より無策とも思えるあめ玉政策を執ろうとしている。
大多数が米作農家だから、そのためのあめ玉で、集票を期待するなどは、農業の実際に無知な農政としか云いようがない。
政治改革は不可避なことであるが、農政に関しては、政府のやっつけ仕事としか思えない。
その結果は、大規模農家だけが漁夫の利を得て、中小規模の農家の生産意欲を削いでしまう結果になる確率は非常に高いと思われる。
昔から生産者より、流通関係者や小売店の方が利益を得ている傾向がある。
この現状を改革する施策があれば食糧自給率はかなり改善されるはずである。
政府は、農家の顔色ではなく、農業の根本問題を解決する意欲を施策に挑んで貰いたいものである。

筆者が農業高校の生徒であった頃、大した勉強はしなかったが、担任教諭が話した一言を鮮明に記憶してることがある。
上農は草見ずして草を取る。中農は草を見て草を取る。下農は草を見て草取らずと言う諺であった。
つまり、上農は作物をりっぱに育てようと、雑草が生えないうちからしっかり田畑を見回り高い収穫を上げ、中農は生えた雑草に気付いてから仕方なく草取りをするもので、下農は草が生えていても除草する意欲がないという教えであった。
これはものの例えであり、農業も政治も常に上農であるべきであり、やっつけ仕事は下農にも及ばない。

牛の学習には、手助けがいる

2009-10-16 18:20:21 | 予防治療



牛にも賢い奴がいると前述したが、大多数はそうでもないのが現実である。
写真を注視しすると、いい加減学習しろよ!と言いたくなるような画面である。
群飼いなのに飼槽にへばり付くように横たわって昼寝を決め込んでいて、他の牛らが、餌を漁ろうにも邪魔で仕方がない。
一方昼寝中の牛はと云えば、逆に彼らが邪魔で仕方がないのである。
この房ではこういう光景をよく見かける。
牛は、どちらかと云えば習慣性に富み、狭い房では寝る場所が決まっている。
他にいじめられるのにいつも同じ箇所で寝る。
一日中暇を持て余しているというのに、少しぐらい学習しろよと云いたくなる。
いつもその場で寝たら、その都度起こしてしまえば、それが学習になるはずである。




牛房の縦柵はトラブルの因となる

2009-10-15 23:37:41 | 畜舎



角のある家畜は、写真のような縦柵の中で飼育するのは好ましくない。
写真の子牛らは、生後月齢が7ヵ月未満で角がまだ伸びていないから、このような牛房に入れている。
角が伸びれば、柵の間から頭部を出すが、柵から頭部を引き抜くことが出来なくなるケースが良くある。
中には、チンパンジーのアイのように、日常行動に知恵をこらす賢い牛がいて、角が伸びても、両角を左右に動かしながら旨く柵から抜け出す。しかし、大方の牛は、柵から頭部を抜こうとして、旨くいかなかった場合は、その瞬間から両角を柵に掛けたまま、ひたすら後すざりするのみで大パニックとなる。
こうなれば、牛は前や左右に機転を利かすこともなく、おまけに人を巻き込んでの大騒ぎとなる。
牛房の縦柵は、この様にパニックから事故を伴うケースもあるために好ましくない。
写真の子牛らは、幼く体格が小さいため、通常の育成房に入れても容易に脱柵するために、およそ2ヶ月間にわたり予備房としている状態である。
だから、肥育センターで写真のような情景を見かけることは稀である。


複数回給餌が肉質を良くする

2009-10-14 22:39:15 | 肥育



肥育センターにより、配合飼料の与え方は一定していないようである。
それらは飼養規模など物理的な問題や、少数精鋭など給与回数を小刻みにしたり、自動化したり様々である。
約500頭規模のあるセンターでは、早朝から深夜12時に掛けて、日に6回給与することで、肥育前半から摂取量が増加し、その分増体量が増えて、枝肉量と良好な肉質をものにしているという。
数千頭規模の場合は、完全自動給餌装置により、日に2回給餌のケースが多いようである。
前者は、良く聞くことであるが、牛の顔色を見ながら適量を与える業師的な牛飼いである。
後者は、規模が大きく、省力化優先で、マニュアル通りの給餌法を取らざる得ない。
当然、前者の方は手作り的な肥育法であり、その結果増体速度も速く、やや大きめの枝肉量が確保できて腿抜け効果もある様である。
日に1回給餌でも、複数回給餌と同様の摂取量であれば、増体量も多くなるはずであるが、1回給餌ではなかなか摂取量が上がらない。
摂取量が上がらないから、給餌回数を多くして、摂取量を伸ばそうと言うことになる。
毎日5~6回も給餌していては、労力的にも大変な負担である。
その様な場合は、自動給餌装置によるケースが多いようである。
給餌回数は、多いほど摂取量も増える傾向にあり、体重が順調に増加することで、体脂肪の蓄積も多く、その効果により、サシも潜在能力を伸ばすことになる。
ちなみに、配合飼料の固定式自動給餌装置は、40m牛舎4列(40マス)で、約270~280万円程度のようである。


鰻線のある牛

2009-10-13 19:27:10 | 牛の躯



牛の背腰の中心線だけが、写真のように本来の毛色ではない色で筋状となっている牛を最近は余り見かけなくなった。
60年頃には、珍しくないほどこの様な牛はいたものである。
このような筋状を鰻線と呼んでいる。
これも、明治期における外国種との交配によるもので、その改良速度が遅れている牛に鰻線は出易いと習ったものである。
子牛の頃には、差ほど目立たなかったが、肥育後半になって鮮明に現れた。
先のコメントにもあったように、肉質には差ほど影響しないようである。
鰻線の存在がどうのこうのではなく、今ではその様な子牛を欲しがる購買者もいたりする。
赤茶けた毛色の子牛を好むように。
タイプ的には、良好な肥育成績になるような仕上がり具合であり、楽しみにしている次第である。

白斑のある和牛

2009-10-10 19:50:22 | 素牛


1,000頭もいれば、時には一風変わった素牛がいても不思議ではない。
写真の牛は、明らかに乳房が白く、その他の毛色は真っ黒でホル黒F1牛に酷似している。
飼育月齢とともに、この白色の範囲は拡大している。
和牛は過去の改良の過程で外国種を交配した経緯があり、そのための遺伝子が潜在的に存在し、その複雑な遺伝子の発現によっては、乳座白や白舌などは珍しいことではない。
古い話であるが、40数年前に和牛から褐毛が生まれたという例に遭遇したことはあった。
その当時、耳にしたことだが、和牛の改良が遅れている証拠だなどと専門からに聞かされたものである。
写真の牛には歴とした子牛登記と個体識別番号が取得されている。
よもや、ホル黒F1牛ではないだろうが、肥育結果に注目しているところである。



酪農離農施設を活かせ

2009-10-09 22:29:29 | 素牛



近年、北海道などでは黒毛和種の繁殖雌牛の飼養頭数が増加しつつあると聞く。
酪農家が、和牛経営に転換しているというものである。
中には、競争馬の生産牧場が、和牛経営に替えるケースもあるという。
そのうち、鹿児島県の飼養頭数を抜いて北海道がトップになる勢いとも聞く。
その反面、和牛の子牛生産頭数は、生産地によっては微減の様相を呈している。
一方、和牛の肥育施設でも、1万頭を超えるセンターも実在しており、さらにその数は増加するとも聞く。
肥育センターの規模が大きくなれば、当然のように素牛不足に至る可能性大である。

そこで、自治体やJA関係者に提案したい。
農業共済関係者によれば、近年酪農家が離農するケースが、町村単位でも年間2~3軒が離農しているという。
この酪農離農者に和牛飼養への転換で、安定した経営を持続して貰いたいのである。
酪農家の場合は、牛への飼料設計、繁殖管理、健康管理に関しては、プロの実績を持つ。
乳牛を手放す計画があるなら、是非とも最後は、全頭の乳牛に和牛の受精卵移植を実施して貰いたい。
そして、新たな和牛飼養のための繁殖素牛を自らで生産して移行することを推奨したい。
素牛を超安価で入手する手だてを酪農家は潜在的に保有しているのである。
何も素牛を市場から導入することだけが和牛経営の始まりではなく、酪農家にはかなり効率的に素牛が入手できるのである。
乳牛であっても、生乳の生産が目的でなければ、和牛並みの飼料給与で1産や2産は可能である。

和牛の生産頭数が減少している自治体では、その回復処置に苦慮しているようであるが、これら離農施設の情報をもとに、和牛への転換のための経営指導や、高齢化の離農のケースでは、若者への牛毎の貸与や譲渡などにより、和牛の増頭を計ることを推奨したい。




順調に育った牛の鼻

2009-10-08 17:54:07 | 牛の鼻と口



仕上げまで残り3~4ヵ月の去勢牛の鼻である。
見るからに肥育が順調に経過している牛の鼻である。
健康で食欲旺盛であることもこの写真から判断できる。
既に体重800kgをオーバーしているが、どう見ても増体型の牛である。
導入時から、粗飼料をかなり食い込んだ結果である。
どの牛もこの様に順調に経過してくれることを願っている。

ところで、今日から福島県で肉用牛研究会が開催されることになっていたが、コマネズミの如く過ごしているため、うっかり忘れてしまっていた。
昨夜、出版社の編集者から知らされたが、後の祭りであった。
夜来からの台風18号の来襲が参加者の脚を削いでしまったのでは無かろうかと懸念される。
来季は、京都での開催が決定しているようなので、拝聴したいと思っているところである。