企業家が語る「実践的パンと平和論」のブログで、「右傾化」(2011年11月18日)のテーマに書いてある文書を転載します。
先日、東京北青山で行われた2回目の「河野洋平氏を囲む会」に出席してきた。
前回は7月であったから4ヶ月振りである。出席者は前回と殆ど同じ。
食事をしながら、河野洋平氏と子息の太郎代議士の語る政界のよもやま話を、
6~7名の経済人が伺って雑談をするだけのことである。しかしこれがなかなかおもしろい。
まず河野親子の感じが良い。確か洋平氏は、何年か前に肝硬変で重態となり、
その時子息の太郎氏から肝移植を受けて一命を取りとめている筈だ。
今は顔色も良く健康そのものに見えるが、もしこんな経験ができたら、
父は息子が単に可愛いというだけでなく、大きなカタルシスを彼からあたえてもらったことになるだろう。
それは息子にとっても同じことかもしれない。父と息子は互いに愛し合っていても、
それぞれの未熟さの為に色々忸怩たることを相手にしているものだ。
しかし仲々そのことを素直に認めて謝ることができない。だが肝移植のような劇的な体験をすると、
何かお互いに今まで申し訳ないと思っていたことを、相手から許されたような気持ちになるのではないだろうか。
とにかく二人の関係は、傍からみていて気持がいい。
その日洋平氏は、最後になって政界の右傾化についてコメントされた。
以下それを要約する。
かつてのように社会党が1/3も議席を持っていると、
自分のような自民党では少数派にすぎない護憲論者にとっても、
それが大きな味方になったものだが、今は民主党も殆ど改憲勢力である。
特に松下政経塾出身者が民自双方共に強硬な改憲勢力となっている。
民主党はかつての社会党出身者との軋轢を恐れて、
党内では憲法の議論を禁止しながら、着々と改憲にカジを切っている。
中曽根内閣の官房長官でカミソリと言われた後藤田正晴氏が亡くなった時、
自分は公開されなかった彼の遺書を読んだが、
それには改憲は絶対にしてはいけないと切々と書かれていた。
こういう人が今や政界から殆ど消え、
改憲を唯一のリアリズムと考える単細胞で短絡的な人ばかりが残ってしまった。
社民党はやり方によっては次の選挙でもっと議席をとれると思うが、
福島瑞穂のやり方では難しい。
横路さん(衆院議長)位の人が社民党の党首になれば良いと思うのだが。
すると私の隣に座っていたある大手企業のトップであった方が、
後藤田さんはそんなことを言っていたのですかと尋ねられた。
しかし、私にはそれは意外ではなかった。
護憲は単なる理想論ではなく、外交的リアリズムの観点から言っても、
日本の取り得る最もまともな選択だと思う。
特に大恐慌前夜のような世界情勢にある今、
単純にアメリカの世界戦略に巻き込まれるのを是認するだけの改憲は、
日本の生き残りにとって決してクレバーな選択ではない。
松下政経塾出身者は、松下幸之助氏のように人は良さそうだが、
政治的にはナイーブすぎるように思われる。
堂々と世界に向かって9条を変えないことを主張して行くのは、
そのような人達には荷が重いのかもしれない。
会の終り際に洋平氏に挨拶に行くと、彼は何やら私にお礼を言いながら一枚のコピーを手渡した。
それはある雑誌に彼が書いた文章で、
まだ自分が衆院議長の時、園遊会に招かれた東京都の某教育委員(確か将棋指し)が天皇陛下に、
自分の仕事は日本中の学校で国旗を掲げ、君が代を斉唱させることですと言ったのに対して、
それは強制でないことが望ましいですねと、すかさず陛下が答えられたのを聞いて、
大いに感銘を受けたという内容であった。
少し前に私は、「最高裁の君が代強制斉唱合憲判決を批判する」という小論を週刊金曜日という雑誌に投稿し(同文は6月29日ブログに掲載)、それを河野氏に送ったことがあるが、
彼はそれについてお礼を述べられ、そのコピーで君の意見に賛成だよと言われたのであった。
先日、東京北青山で行われた2回目の「河野洋平氏を囲む会」に出席してきた。
前回は7月であったから4ヶ月振りである。出席者は前回と殆ど同じ。
食事をしながら、河野洋平氏と子息の太郎代議士の語る政界のよもやま話を、
6~7名の経済人が伺って雑談をするだけのことである。しかしこれがなかなかおもしろい。
まず河野親子の感じが良い。確か洋平氏は、何年か前に肝硬変で重態となり、
その時子息の太郎氏から肝移植を受けて一命を取りとめている筈だ。
今は顔色も良く健康そのものに見えるが、もしこんな経験ができたら、
父は息子が単に可愛いというだけでなく、大きなカタルシスを彼からあたえてもらったことになるだろう。
それは息子にとっても同じことかもしれない。父と息子は互いに愛し合っていても、
それぞれの未熟さの為に色々忸怩たることを相手にしているものだ。
しかし仲々そのことを素直に認めて謝ることができない。だが肝移植のような劇的な体験をすると、
何かお互いに今まで申し訳ないと思っていたことを、相手から許されたような気持ちになるのではないだろうか。
とにかく二人の関係は、傍からみていて気持がいい。
その日洋平氏は、最後になって政界の右傾化についてコメントされた。
以下それを要約する。
かつてのように社会党が1/3も議席を持っていると、
自分のような自民党では少数派にすぎない護憲論者にとっても、
それが大きな味方になったものだが、今は民主党も殆ど改憲勢力である。
特に松下政経塾出身者が民自双方共に強硬な改憲勢力となっている。
民主党はかつての社会党出身者との軋轢を恐れて、
党内では憲法の議論を禁止しながら、着々と改憲にカジを切っている。
中曽根内閣の官房長官でカミソリと言われた後藤田正晴氏が亡くなった時、
自分は公開されなかった彼の遺書を読んだが、
それには改憲は絶対にしてはいけないと切々と書かれていた。
こういう人が今や政界から殆ど消え、
改憲を唯一のリアリズムと考える単細胞で短絡的な人ばかりが残ってしまった。
社民党はやり方によっては次の選挙でもっと議席をとれると思うが、
福島瑞穂のやり方では難しい。
横路さん(衆院議長)位の人が社民党の党首になれば良いと思うのだが。
すると私の隣に座っていたある大手企業のトップであった方が、
後藤田さんはそんなことを言っていたのですかと尋ねられた。
しかし、私にはそれは意外ではなかった。
護憲は単なる理想論ではなく、外交的リアリズムの観点から言っても、
日本の取り得る最もまともな選択だと思う。
特に大恐慌前夜のような世界情勢にある今、
単純にアメリカの世界戦略に巻き込まれるのを是認するだけの改憲は、
日本の生き残りにとって決してクレバーな選択ではない。
松下政経塾出身者は、松下幸之助氏のように人は良さそうだが、
政治的にはナイーブすぎるように思われる。
堂々と世界に向かって9条を変えないことを主張して行くのは、
そのような人達には荷が重いのかもしれない。
会の終り際に洋平氏に挨拶に行くと、彼は何やら私にお礼を言いながら一枚のコピーを手渡した。
それはある雑誌に彼が書いた文章で、
まだ自分が衆院議長の時、園遊会に招かれた東京都の某教育委員(確か将棋指し)が天皇陛下に、
自分の仕事は日本中の学校で国旗を掲げ、君が代を斉唱させることですと言ったのに対して、
それは強制でないことが望ましいですねと、すかさず陛下が答えられたのを聞いて、
大いに感銘を受けたという内容であった。
少し前に私は、「最高裁の君が代強制斉唱合憲判決を批判する」という小論を週刊金曜日という雑誌に投稿し(同文は6月29日ブログに掲載)、それを河野氏に送ったことがあるが、
彼はそれについてお礼を述べられ、そのコピーで君の意見に賛成だよと言われたのであった。