雑録+/ふたたび、1984年への追憶・・・
1983年高校生の頃、秋~冬に胃潰瘍で入院。
治らないままクリスマスの日に退院、病み上がりにこたつで見た年末のYMO散開ライブ。
そしてYMOが消えてしまった、祭りの後の1984年。その年が明けた。
そんな流れ。
そんな1984年幕開けだったから・・
という単純な理由でもなく、何もかもが終わりではないかという希望の無さが満たしていた。
寄る辺のない、色あせた世界。
果たしてそんな1984年に一番聴いていた新譜は何だったのだろうか?。今も当時もいろいろ聴いているが、どの新譜もアルバム丸ごとは心の芯に響かないものばかりだった。例えば1982年の「Avalon」みたいに聴いたらすぐ感染してとりこになるような、恋焦がれる音楽は無かった。
そんな中、一番繰り返し聴いていたのは多分トンプソン・ツインズの「イントゥ・ザ・ギャップ」だった。それくらい特別なレコードなのか?というとそんなレベルでは全然ない。しかし胃潰瘍のカラダに響きにくい可愛らしい打楽器たち、そしてシンセ類の優しい音。幻想を受け入れてくれる世界観、ポップな曲調、はっきりしたメロディ、仮想敵を責めるばかりのロックのワンパターンから意図的にずらし外し続けているところが気にいった。嫌悪すべき汗臭いだけのロック臭が一切しない世界。
当時深夜のラジオ番組「マイ・サウンド・グラフィティ」でエアチェックしたカセットテープで繰り返し聴いた。この番組ではのちにシングルカットもされたA面2曲目の「You Take Me Up」がかからなかったが、それ以外のアルバム収録曲全部を掛けてくれたので、90分テープ片面全部でアルバム通して一気に聴けた。
トンプソン・ツインズはシングル「イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」で知り、アルバム3枚目「サイド・キックス」で大好きになり、そしてこの4枚目「イントゥ・ザ・ギャップ」さらには5枚目「ヒューチュア・デイズ」までファンとして密接な関係が続いた。売れても世間のプレッシャーに負けずに走り続けるトム・ベイリーは強くすごい人だなあ、なんて思う事も多かった。ピーター・ゲイブリエルのWOMADにも参加していて、第三世界の音楽にも知見があったし。。。
しかし、5枚目から後、メンバーが3人から2人になったところから自分は聴くことをやめた。
その4枚目を、あれから41年目の夏、久々に取り出して聴いた。
もうあのときの必死さや、大事に思った気持ちは消え、心地よくしてもらった魔法は解けていた。そんな40数年目の今、せっかく聴いたのだからどれか1曲を選ぶとしたら、、B面終わり近いところにある曲「ストーム・オン・ザ・シー」だろうか。
1984年夏は、エアコンをつけた自室の勉強机に座り、部屋の大きな窓ガラスから見える青空を大きな入道雲が優雅に流れうつろう中、このアルバムやドゥルッティ・コラム、ニューアコースティック・サウンドなどをひたすら聴いていた。
それを思い出す。しかしその家も部屋も今では丸ごとなくなってしまい、いまや幻のようだが。。。
■Thompson Twins「Storm on the Sea」1984■
250713