こころとからだがかたちんば

YMOエイジに愛を込めて。

吉田戦車  「はまり道」'94

2009-01-27 00:19:17 | 雑記帳


「伝染るんです」は、一番有名だけれども、「ちくちくうにうに」「超ちくちくうにうに」も好きです。

この「はまり道」は、まだ年始の頃、神保町の古本屋街で300円で発見したもの。
この3日間、布団とトイレを行きかう中、横になって読んだ。

***

内容は、どうやら、ゲームのパロディが主を占めているようだった。
自分は、いっさいゲームはやらない人間なので、そのギャグがどういう意味なのか?全くよくわからない。
スーパーマリオのニセモノのようなものが出てきたり、ゲームの中のキャラクターのまがいものがたくさん出てくる。

これは困ったものだと思いながら、めくっていたが、この本の収穫は、残り1/3のページにあった。

エッセイがイラスト入りで挿入されており、これが実に面白かった。
吉田戦車というのは、文章も達者なのであった。
是非、これだけで、1冊作って欲しかったと思う。

他愛も無い日常の出来事を、ある種空想の領域も加えてアレンジしながら語っている。
ここには、吉田戦車が仲が良いという「近所犬」が出てくるが、その近所犬は、一緒にキャンプに行ったり、ちゃんと日本語でおしゃべりをしたり、時に語らいあう仲間だ。

とあるくだり。

「・・・・この犬は近所の犬で、最近友達になった。
よくこうやって飼い主に無断で鎖を外し、一緒に遊びに出かけるのだ。
頭にはボクシングのヘッドギアを改造したものをかぶらせている。
犬ひもをつけなくても、これをかぶらせているだけで人は「安全そうな犬だ」と思うものらしく、誰もこの人ごみの中のひもなし犬にいやな顔をしなかった。

犬に例のフライを食べさせてから、おれはこの日の目的である見世物小屋に向かった。

見世物小屋は小学生のころから一度観たいと思って観たことがなかったからだ。
入り口でじいさんがダミ声を張り上げて口上を述べていて、その上にはおどろおどろしい絵がかけてある。
出し物はカッパ小僧と天才犬とヘビをおばばと頭だけの人である。
まあ、感想これから観る人のために言わないでおこう。

犬は天才犬の利巧さにやたら感心し、おれは客の仲に特殊漫画家の根本敬さんがいるのをめざとく見つけ、ひとり喜んでいた。
犬とおれは大いに満足して、花園神社をあとにした。

犬の飼い主はおれのことを警察に訴えると言ったが、おれはまったく気にせずに、飼い主の目を見つめながら、買ってきた切り山椒を食べた。」

***

この人は、やはり1冊、文章だけの本を出すべきだろう。
語り口の面白さは、描くマンガ同様、絶品である。
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