こころとからだがかたちんば

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音盤日誌:フラ・リッポ・リッピ「スモール・マーシーズ」1983年

2020-11-27 19:00:00 | 音楽帳


騒がしい世の中、悪しき企業や悪しき人間、無益な広告や情報三昧の世界に付き合っていたら、気が狂ってしまった。そんな方は多いだらう。そんな病気背負人でなくとも、付き合い疲れたなら、その外側で静かに音楽に向かい合うと良い。

「最近、こんなLPを聴いている。」 ・・・と言っても、いつもと同じ秋冬定番の1枚。
フラ・リッポ・リッピというノルウェーの2人組デュオバンドを知ったのは、雑誌「フールズメイト」1983年12月号のこと。
レコードショップ「イースタンワークス」広告の新譜ジャケットがとても鮮やかで、ヨーロッパの風景の写真が素敵だった。(ペンネームだろうが)古茶大樹さんという方のレコードレビューにも惹かれた。

このLPのタイトル曲「スモール・マーシーズ」を初めて聴いたのは、1984年4月14日のラジオ番組「FMトランスミッション/バリケード」。神経質で鬱を抱えた繊細な世界の音だった。だが、FMで流れたといえば、この1曲くらいのもので、他の番組でかかるなどということはなく、この1曲をエアチェックしたカセットテープのみで、80年代を通り過ぎた。


■Fra Lippo Lippi 「A Small Mercy」1983■

実際のLPを手に入れたのは90年代であったか?
1枚を通して改めて聴いてみると、全体はかなり多様な曲が1枚に入っている。

「私は決して笑いませんよ」と言うかのような硬いヴォーカル。
声そのものがとても沈みがちなのは、日の差す時間が少ない北欧の凍て付き感ゆえのことなのだろうか?
ドラムは一般的な叩き方が半分、残り半分は原始的な拍子や響き。
シンセサイザーはとても優しい音で、全体をまろやかに包み込んでいるが、ヴォーカル同様ググッと沈み込む曲も多い。ピアノや(古茶さんは「ヴァイヴ」と書いているが)鉄琴やチャイムのようなきらびやかな音が心地良い。

LP「スモール・マーシーズ」は彼らの2枚目で、さかのぼって1枚目「イン・サイレンス」を聴くとロック的で演奏も粗いのだが、この1枚目には「例の」ジョイ・ディヴィジョン的世界の影響か?くぐもった曲が多い(が素晴らしい作品。)よく「ポストパンク」と表現されるが、けだるい雰囲気の中、だるそうな演奏が展開されている。
この2枚目は、その1枚目に比べるとクラシカルであるが、ところどころの沈み具合は継続している。
ノルウェーという地、音楽シーンからの影響、彼らそもそもの持つ味、などがブレンドされ、結果的にはとてもバランスの良い1枚の作品になっている。ポップで分かりやすいが、だからと言って聴き込んでも飽きることはない。

彼らは営業面では3枚目「ソングス」で花開くが、その後必要以上に甘ったるくなってしまう。
ヒットでマイナーにとどまろうとする面が減ったか、全体のバランスが崩れた音と聞こえ、自分の関心も薄れていった。
おすすめできる作品は、2枚目・3枚目で、両方ともよく練り上げられていると今でも思う。レコードだとA・B面それぞれの曲順の流れも素晴らしい。

1枚目も今回改めて冷静に聴くと良い作品だった。
ひたすらミニマルに一定音を繰り返す曲の飽きなさや、ギターの響きが(バンドの)フェルトに聴こえてきたり、さまざま発見がある。





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