病院を出ると、丸い太陽が、後楽園の方に沈もうとしていた。
医師の言葉に動揺しなかったか、と言えばウソになる。
この日は、自分が面倒を見てもらっている先生が居ない日で、別の先生に診ていただいた。
50代のおおらかな白髪交じりのぽっちゃりした先生は、おだやかで明るい真綿のような先生だった。
長い間、今までの経緯を聞き込みながらも、お互いの合意形成を目指す先生の優しい語り口。
そこには、先生が多くの人と会話を重ねてきたことが明らかにわかる、プロだった。
先生は、別れ際に「良い方に考えましょう。心配しすぎないように。」と言った。
医師は厳しいほうが良いと思うが、先生の言葉は軽いのに深かった。
表層で人を適当にあやす、適当さはみじんもなかった。
■Robert Wyatt 「At Last I Am Free (邦題:生きる歓び)」1981■