9月11日は、まいまい京都のツアーで京都市山科区にある「栗原邸」を見学しました。
兼ねてから見学したいと思っていた本野精吾設計によるモダニズム建築の先駆けとなった洋館です。
この建物は京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)の校長を務めた鶴巻鶴一の邸宅として建設されたものです。
設計は前述の本野精吾(当時は同校教授)で昭和4年(1929)に竣工しています。
「中村式鉄筋コンクリート建築」と称される当時の最先端技術で建設されています。
建物は老朽化でかなり傷んでいましたが2011年より京都工芸繊維大学大学院の教育プログラムの一環で修復作業が行われてきました。
今は栗原家の誰も住んでいない状態で新たなオーナーを探されています。(2億円だそうです。
染色家でもあった鶴巻鶴一は、襖絵に自身の作品を残しています。
食堂の案内をされている笠原一人先生です。
戦後は占領軍に接収され、本野精吾デザインの家具も白くペイントされてしまっています。
また、床も当初はタイル張りでしたが、床面がフローリングに変えられています。
これも、今後に修復していく予定だそうです。
階段の手摺りのデザインは、算盤玉の反復のような幾何学的なアール・デコ風です。
南側の玄関ポーチ二階部分です。
南側の玄関ポーチ二階部分です。
ウィーン分離派の影響を受けたと思われるデザインです。
南向きなのでサンルームのような雰囲気です。
屋上です。
修復前は防水機能が失われていて、雨漏りがひどかったそうです。
すぐ北側には琵琶湖疎水が流れ、日本で2番目に古いコンクリート橋が架かっています。
さらに北側には曹洞宗寺院の永興寺の境内が広がる風光明媚なところです。
売りに出されてから既に三年が経ちます。
本来なら、京都市が買取り保存するべき文化財ですが、京都市の財政状況は非常に苦しい状況で期待薄です。
(来年度の文化財修復予算は原則"0"だそうです。北海道夕張市のように財政再建団体に転落してしまわない事を願うばかりです。