kintyre's Diary 新館

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映画『少年は残酷な弓を射る』を観て

2012-07-15 22:49:26 | ヨーロッパ映画

12-57.少年は残酷な弓を射る
■原題:We Need To Talk About Kevin
■製作年、国:2011年、イギリス
■上映時間:112分
■字幕:佐藤恵子
■観賞日:7月14日、TOHOシネマズシャンテ



□監督・脚本・製作総指揮:リン・ラムジー
□脚本:ローリー・スチュワート・キニア
◆ティルダ・スウィントン(エヴァ)
◆エズラ・ミラー(ケヴィン)
◆ジョン・C・ライリー(フランクリン)
【この映画について】
ほんの赤ん坊の頃から悪魔的な子どもだったケヴィンに身震いさせられる。彼はなぜあれほど母に手ひどい仕打ちを繰り返すのか。『モーヴァン』から9年ぶりにメガホンをとった本作で脚本も手がけたリン・ラムジー監督は、時系列を巧みに入れ替え、極上のサスペンスタッチでこの残酷な母と子の物語を展開させる。
原作は英オレンジ賞受賞のライオネル・シュライバーによる同名小説。ラムジー監督と長年の友人であるティルダ・スウィントンが主演だけでなく製作指揮を担っている。図らずも母となった悩めるエヴァの変遷を演じて見事なスウィントンはもちろん、それに負けていないケヴィン役エズラ・ミラーの存在感も素晴らしい。(この項、gooより転載しました)
【ストーリー&感想】(ネタバレあり)
自由奔放に生きてきた作家のエヴァはキャリアの途中で、夫フランクリンとの間に子供を授かった。ケヴィンと名付けられたその息子は、なぜか幼い頃から、母親であるエヴァにだけ反抗を繰り返し、心を開こうとしない。やがて美しく、賢い、完璧な息子へと成長したケヴィンであったが、母への反抗心は少しも治まることはなかった。そしてこの悪魔のような息子は、遂にエヴァの全てを破壊するような事件を起こす……。

16歳になる3日前の日、ケヴィンは学校で邦題にある通りの出来事を起こし、帰宅すると父と妹にも弓を射るという大事件を引き起こし母エヴァだけが残された。冒頭でエヴァが外出から家へ戻ると外壁部分にはペンキが一面に塗られていて、それを一人で必死に消そうとしていたのだが、それはこのケヴィンと面会して帰ってきた所で繋がる。
そもそもエヴァはフランクリンと交際していたころは売れっ子の旅行作家であったのだが、取材先にまで押し掛けてきた彼とのセックスで望まない形で妊娠してしまいケヴィンを出産し、その後、妹と二人の母となる。だが、出産直後からケヴィンは母のそういう気持ちを察していたかのように懐かないのがこの映画のポイントである。
父には懐くのだが母には徹底的に反抗的な態度を取っていたケヴィンが、父からの贈り物だった弓矢をその父と妹に放った。残されたエヴァは旅行会社で下働きしながら生活費を稼いでケヴィンと面会するのが日課になった。だが、刑務所で面会しても二人の間に会話は殆どない。なのにエヴァは16歳になったケヴィンと会いに行く。

話は常に母エヴァの視点で進行し「母と息子の関係」が主題なので、観ている側は何故ケヴィンがここまでエヴァを避けているのかを探る必要があるのは、ケヴィンの視点で語られないからだ。原題は「ケヴィンについて話しましょう」だが主語は「We」なのでこの「We」は誰を指しているのかと考えてしまうが、私はそれは「この映画を観た人」かな?って思うのだが・・・。
ケヴィンが取った行動について、彼自身の口から母と面会中に語られることも無く、ナレーションも無いので、だから「我々、映画を観た者が」彼について語ることが必要なのかな?

家族の配役ですが主役のティルダ・スウィントンの中性的な風貌と絶望的な表情がとてもマッチしていて、それとは対照的に楽天的な夫フランクリンを演じていたジョン・C・ライリーも良かった。だが、やはりケヴィンを演じた19歳のエズラ・ミラーの眼力の鋭さと色気がなければ映画全体の印象も変っていたと思う。

母の愛を求めていたケヴィン、その息子への愛情の注ぎ方に迷いがあった母エヴァ。父と妹を排除することで母エヴァへの愛を独占しようと試みた息子。16歳の息子がシャバに出て来る日が来るのだろうか?仮にその日が何時の日か来たら、二人はどう接するのだろうか?最後にそんなことを考えてしまった。


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