浦沢直樹原作、『20世紀少年』!!
全22巻+最後は『21世紀少年』の上・下巻という構成になっている。現在、なかなかの豪華キャストでシリーズ3部作で映画化されており、来年早々、第2章が公開されるので、知っている人も多いだろう。
浦沢直樹は大好きなマンガ家で傑作が多い。最も一般的にも知られているのは、天才柔道少女が主人公の『YAWARA!』であろう。ご存知、柔道の谷亮子のニックネームもここからである。ママになっても「ヤワラちゃん」・・て呼ばれてるんだから、スゴイよなあ・・。
同じくスポーツ物なら『Happy!』というプロテニス界を舞台にした、やはり天才テニス少女が主人公のマンガもなかなかの感動モノだった。
しかし、氏の作品の中でも特に自分が好きなのは、『パイナップルARMY』『MASTERキートン』といった作品だ。たとえば『MASTERキートン』の主人公、平賀・キートン・太一は元英国特殊空挺部隊SASの軍事教官で格闘技とサバイバル技術のプロ。保険のオプ(調査員)をしながら、東ヨーロッパのドナウ文明の発掘を夢見て、大学で客員講師のバイトをしつつ考古学を志すというユニークな経歴をもつ。
なんだかこれだけきくと、非常にいかめしいイメージだが、人間的でユーモアがあって、まわりを楽しく和ませる雰囲気さえもったキャラクターになっているのは、氏の力によるところが大きい。キートンはフォークランド紛争にも参戦し、「戦闘機械(ファイティングマシーン)」の異名さえもつ猛者だが、その時のトラウマか、作品の終盤で銃で人が撃てないコトが判明する。結局その理由は語られないまま作品はおわるのだが、そんなコトはどうでもいいのである。
氏の作品すべてに共通して貫かれているテーマは、人生を肯定的にとらえ、前向きに、希望的に生きよう!という人間讃歌だからだと、個人的には思うからである。
さて、『20世紀少年 』だが、1970年当時、小学5年生だった主人公たちは作者と同世代で、私小説というか、半自伝的な作品か?・・と思わされた。無論、実際には殺人ウイルスや巨大ロボットがあらわれて地球が滅亡する・・なんてコトはないが・・。
作品のタイトルはT-REXというロックバンドの曲「20th Century Boy」からだが、ロック好きの主人公ケンヂは、自らもロック好きでギターも弾く作者の姿と重なる。
ちなみに大まかなストーリーは、子どもの頃の夢かなって、地球滅亡から人類を救う正義の味方にまつりあげられたケンヂは、ナゾのカリスマ”ともだち”を中心にすすめられる地球滅亡計画を阻止すべく立ち向かう。しかし、自分はみんなが思うような人間じゃない・・という思いがケンヂの心を占めていた。子どもの遊びからはじまった人類滅亡計画は、自分の罪から逃げずに、真正面から立ち向かうことで決着する・・という感じかな?
『MONSTER』というサスペンス・タッチの氏の作品があるが、ともすれば、この『20世紀少年』も”ともだち”の正体は誰なのか?・・というコトに終始してしまうのではないか?そして、そこを主眼として読んで来た読者は、いささか消化不良に感じるかもしれない。
しかし、ずーっと通して読んでみると、そんなコトはどうでもよくて、どんなに絶望的な状況でも決して希望を失わず、信じて前向きに戦え!・・という作者の叫びがきこえてきそうな、熱い作品である。
映画化もされて、ずーっと読みたいなあ・・と思いつつ、なかなか手が出なかったのだが、先日、千葉の実家に帰った際、妹が読み終えて処分してくれ・・と放置された全巻があったので、驚喜して持ち帰った。(笑)妹の読むマンガのセンスのよさに感謝!ありがとね。
そういえば、もうすぐ2人目が産まれるそうで・・つわりは大丈夫?くれぐれも体には気をつけて、元気な赤ちゃんを産んでね。