年も押し迫った寒い日に、独り暮らしの息子を訪ねて軽井沢に行ってきた。私の遺伝子を受け継いで掃除が苦手なヤツの部屋を片付けるのと、風邪気味でヨワッテるらしいから、こんな顔でも見せようかと…。ムサ苦しい部屋の大掃除をし、お世話になっているご近所さんや職場の方にあいさつをして、近くのひなびた温泉へ行った。華やかな軽井沢市街から少し離れた追分近くの「ゆうすげ温泉」。庶民的で昭和な感じがおちつけて、ゆったり温まったら疲れと心配が和らぐ。リクエストの豚の生姜焼きを「美味しい!」と絶賛され、もうひとつ和らぐ。帰り道、目の前に広がるまっ白な浅間山がキレイで、なんだか泣けてきそうだった。
学校の図書の先生のTさんからギンナンをいただいた。校庭にある銀杏の木に成ったのを拾い集めて、種を一つ一つ取り出されたらしい逸品である。白く輝く粒の大きな見事なギンナンは、なるほど独特のクサイいい香りがする。(臭いもの好き)
ギンナンも好きだけど銀杏の木も大好き。新緑の小さなキミドリの葉も、鮮やかな黄色に染まる紅葉も…秋のどの色より好きかも。Tさんが言うことには、このギンナンを食べれるのも今年が最後らしく、学校の銀杏の木は切られる運命にあるらしい。こんな大きな実をつけるのだからさぞかし立派な銀杏だろうに…何とかならないものかなぁ。モッチリと香ばしいギンナンで一杯やりながら、銀杏の木のことを考える。
本日お休みをもらって松本のGargas(ガルガ)でやっているようさん工房の“冬のヨウイ!”展に行って来た。お供は仲良しの設計士のおかみさんAちゃん、初めてのツーショットでうきうきとお出かけ。土蔵に住まうAちゃんと土蔵のギャラリーのガルガに行くのはなんとも面白い。ギャラリーの二階に広がる和風の空間で、ようさんのリメイク中心のあったかい布作品を二人でしっぽりと堪能。コーデュロイで市松に継ぎはぎされた湯たんぽの袋(完売)やフカフカのルームシューズ、綿入りのたんぜん、どれもぬくぬくと温かい。ようさんの顔を思い浮かべたら、なおさら温かい。外は寒いのにポカポカとした気分になるカワイイ展示だった。
ガルガで手に入れたのはようさん作の髪留めと、御みくじ柄の日本手拭い、模様入りマスキングテープでした。
スタジオ.アウラの猫(アウラにゃん)は私のキャスケットがすごくお気に召したようで、何とかして帽子の中に入ろうと大奮闘!土鍋の中で猫が丸くなる「猫鍋」は聞いた事があるけれど、猫が帽子に入るのを見るのはお初。いや、正確には入ろうとモガクのをである。一心不乱に身をくねらすアウラにゃん、かわいい!うらやましい!こんなにも我を忘れて何かに夢中になることって最近ない。大人ってつまんない。アウラ、その帽子あげようか?
ご馳走になった美味しいコーヒーと、お土産に持ってったマサムラのベビーシュー。無邪気な猫を見ながらの午後のお茶、楽しいひとときでした。
またアウラに会いに来よ。
思い出したら胸がキュンとして切なくなる時代がある。
高校を出たばかりの18歳、京都で呉服製造の会社の寮に入り手描き友禅をしていた頃。「希望と不安」で胸をいっぱいにし、思うように上達しない仕事や職場の人間関係、小さな事で思い悩んだ日々だった。辛くて寂しくて…でも同じように悩む友達や親切な大人の人に支えられて、思い返せばたくさんの温かい手がまわりにあった。仕事を終えて自転車で走り回った夜の京都。会社の中に寮があったので、自分を見つめる為にも出かけずにはいられなかったあの頃の私。今でも時々「あのあたりはどうなってるんだろう」「あの喫茶店はまだあるかなぁ」と思い出してはその度に切なくなる。私にとって少し苦い、宝物のようなあの時代。
今、まさに息子がそんな胸キュンの頃である。