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ブラームス:「交響曲第4番」の名盤

2010年05月20日 14時17分35秒 | 私の「名曲名盤選」




 2009年5月2日付の当ブログに「名盤選の終焉~」と題して詳しく趣旨を書きましたが、断続的に、1994年11月・洋泉社発行の私の著書『コレクターの快楽――クラシック愛蔵盤ファイル』第3章「名盤選」から、1曲ずつ掲載しています。原則として、当時の名盤選を読み返してみるという趣旨ですので、手は加えずに、文末に付記を書きます。本日分は「第42回」です。


◎ブラームス:交響曲第4番

 古い演奏から書き始めよう。例えばメンゲルベルク/コンセルトヘボウ管の38年録音はテンポの頻繁な変化でこの曲の情感を表現しようと悪戦苦闘したもので、もともと〈古典への回帰〉を目論んでいたブラームスにとって、いらぬお節介なのだが、作品そのものにそうした誘惑があることも事実だ。これほどに極端な例は今日ではまずないが、こうしたテンポの揺れは、後の時代の演奏からも聴くことのできるものだ。
 一方、ヴィクトール・デ・サバタ/ベルリン・フィルの39年録音は、軽くかかるポルタメントが時代を多少感じさせるが、ロマン的というより、古典的造形感がきっちりとした演奏だ。テンポの変化よりも、終止符、付点音符、三連符、スタカート指定などを効果的に音化した率直なアプローチだ。悠然と、淡々と、そしてひっそりとした内省的な思索もあり、ブラームスの演奏様式として戦前の規範的演奏だ。
 デ・サバタが示したような、ブラームス特有の立止まっては動くリズムの形をかっちりと聴かせ、寄せては返す振幅にバネの聴いた理想的なブラームスの語法を実現した演奏に、クレンペラー/フィルハーモニア管がある。ひんぱんに繰り返される高域への大きな跳躍も、悲しいほどにせつない。
 ある意味で、これと対極と言ってよい柔和な表情と、一貫して遅めのテンポを守り通した演奏がバルビローリ/ウィーン・フィルだ。一音ずつ確かめるように開始され、弦は大きく弧を描くようにレガートする。重い腰を何度も持ち上げ直すような音楽の運びは、もう一方の理想のブラームスだ。
 アバド/ベルリン・フィルの録音は、全体を大きく包み込む滔々とした歌にあふれ、堂々とした構えながら、響きはよく芽が摘まれている。これはデ・サバタのスタイルを現代に生かした演奏ととも言える演奏だ。

《ブログへの掲載にあたっての追記》
 この「名盤選」は私の考え方で、通常の「作曲者アルファベット順」ではなく、「作曲者・時代順」で進んでいます。先日、やっとフランス近代のラヴェルに突入したので、もうあと少しで終わってしまうはずだったのですが、保管していた古いフロッピーの中に「追加」という名前のファイルがあることに気付き、内容を確認したところ、ブラームスの2曲の「名盤選」原稿が出てきました。それで思い出したのですが、単行本に収めるために並べ直した時、ブラームスの作品が1曲もないことに気付いて、「それはあんまりだ」ということで、急遽、かなりの無理をして大急ぎで「聴き比べ」を数日間行い、なんとか2曲(交響曲第4番/ピアノ協奏曲第2番)の追加執筆をしたものです。すっかり忘れていました。本来ならば、昨年の12月頃、シューマンの次にブログに掲載しなければならないもので、本でもそうなっています。――というわけで、一度時代が遡ってしまいますが、本日と、次回はブラームスです。その後、ラヴェルの作品に戻ります。
 追加で書いた原稿だけあって、本日のものは、一般的なブラームス演奏論ともなっていると思いました。この考え方は今でも変わってはいません。



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