最近、気が付いてしまったことを、とりあえず、ご報告します。
私は、不幸にも若くして事故死した天才的指揮者グィド・カンテルリの全CDを収集するつもりで、ムキになって購入していた時期があるのですが、その時、残されている放送録音の、ほぼすべてが、イタリアの「AS disc」というレーベルで出ていることに気づいて買い漁りました。1990年代の後半だったと思います。海外版のカタログで調べて都内各店の在庫を探し、ないものは取り寄せるといったことの繰り返しで、その他のレーベルも含めて、70枚ほどになりました。
当時、イタリアは、著作権逃れ天国でしたから、「ASdisc」も同様で、おそらくアメリカのコレクターが作っているのだろうと思っていましたが、他のレーベル(例えば、「stradivarius」)も似たり寄ったり。同じ音源が出ていたりしていて、整理するのに苦労した記憶があります。
結局、ASdiscを基本にして、そこから漏れている音源を補完するという感じで整理しました。同じものは、ASdiscを残して、重複している他社のものは除外しての結果が、EMI系を中心とした正規スタジオ録音を含めて、約70枚というわけです。
その内、ASdiscは、31枚です。
その中に、写真の1枚があります。
ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 第3番」と、ブラームスの「ピアノ協奏曲 第1番」で、ピアノ独奏がルドルフ・フィルクスニー、オーケストラは、どちらもニューヨーク・フィルと記載されています。
録音日は、ベートーヴェンが1955年3月13日、ブラームスが1956年4月1日となっています。
私がASdiscを基準にしているのは、このように、録音日の記載があることも理由となっていました。ところが、これが、信じられなくなったというのが、今回のご報告です。20年以上も信じていたことが、疑わしくなったのです。
事の発端は単純なことです。ひょんなことで手に入れた洋書『Guido Cantelli Portrait of a Maestro』に掲載されているカンテルリの全演奏会記録と照合したら、「えッ!?」となったのです。著者はLaurence Lewisという人物です。
それによると、ベートーヴェンの第3協奏曲を上記の日付で演奏したピアニストは何と「ルドルフ・ゼルキン」だとあるのです。ゼルキンとカンテルリは、この2年前から、ベートーヴェンの協奏曲で毎年のように共演しているので、この「第3」も、ゼルキンだというのが正しいのではないかと、私も思いました。決して、突飛な話ではないのです。
そして、ブラームスのほうは、独奏者こそ「ルドルフ・フィルクスニー」で間違いないようですが、日付が違っていました。4月1日は別の曲目の演奏会で、この協奏曲を含むプログラムは、4月5、6、8日の3回、同一プロで行われていると記載されているのです。
ASdiscの記載は、これまで様々のCDに転用されていますから、困ったことになりました。記載データを鵜吞みしてはいけないということは、昔から自分に言い聞かせてはいることなのですが、独奏者が信じられなくなるとは……困ったことです。