進化論については、いまだに反対説も多く、また誤解も多い。
私たちは進化の系統樹をよく目にしていて、そこで万物の長たる人類は一番頂上に位置付けられている。
当然ながら人類は地球上で一番優れた生物で、そのパーツパーツの機能も最高のはず。
ところがいろいろ詳しく見てみるとさにあらず。人類のいろいろの部位は進化の最終形の完全な姿ではなく、進化の途中形であって不完全なもの。
この本はそんな進化の現実を分かりやすく提示して、目からうろこの思いでした。
進化とは最もその時の環境に適応するということで、進歩とは違う。進化はあっち行ったりこっち行ったりしていて、進化の道はたくさんある。決して人類の生物としての今は完全無欠ではなく不完全な部分を多々抱えている。
地球環境は生命誕生以来30億年以上の間に大きく変化しており、一直線の変化ではないだけにもっとも繁栄する種も変わる。肺・心臓とか目とかのパーツパーツを見てみればよく分かるのだが、例えば呼吸器と肺だけを取り上げれば恐竜とか鳥類の方が優れているとか。哺乳類は気管という同じ管を使って空気を出したりいれたりしている。この仕組みはとてもよくできた仕組みなのだが、同じ管を使って空気を出したり入れたりしている。空気が逆方向に流れるので呼吸器としては効率がよくない。一方鳥類は肺の周囲に気嚢があるので肺にはいつも空気が一方通行で流れる。このため鳥類は他の動物が生きられないような空気の薄いところでも生きていけ、例えばヒマラヤ山脈を越えたることもできる。因みに恐竜もこの優れた呼吸器を持っていた可能性があり、中生代初期の同じころに出現した哺乳類と恐竜ですが、中生代に恐竜が繁栄したのはこの呼吸器の性能の違いで、同じ活動をしても恐竜の方が行きが切れなかったかもしれないとか。
動物は有機物を分解してエネルギーを獲るのだが、結果分解された有機物を体外へ排出する必要がある。水と二酸化炭素は捨てるのに時に問題はないのだが窒素はもっとも単純なものであるアンモニアは毒性が強い。魚類のように水中で生きているものは大量の水に溶かして排出する。しかし陸上で生活する動物は好きなだけ水が手に入らないので、体内から排出する窒素を哺乳類はアンモニアより毒性に低い尿素で排出しているが、尿素は水に溶けにくいため大量に水を飲まなくてはいけない。鳥類はさらに毒性が低く水に溶けにくい尿酸として排出している。鳥のフンの白くてどろりとした部分は尿で少量の水に混じった尿酸です。排出方法の進化系統樹を見てみれば陸上生活に適した進化をしてる鳥類の方が上になる。う~ん、体内で合成して窒素を尿酸として出すとなると結石があちこちに出来そうですけど。
眼がどうやって進化してきたかを見てみると、目の数も色覚も行ったり来たりしているみたいで、色を見分けることが出来る錐体細胞では多くの脊椎動物は4種類の錐体細胞を持っていて4種類の色を見分けることが出来る。ところが多くの哺乳類は2種類しか持っていなくてあまり細かく色を見分けられない。ところが猿の仲間の一部は3種類に増やしたものが現れる。私たちの目は4色型色覚から2種型色覚になりさらに3種型色覚になったということです。優れた視力を持つ生物はいろいろ知られていいて、人類の眼より鷲と鷹の目の方がはるかに優れている。生物が生きていく環境でより適応するためには場合によっては退化している場合もある。夜行性の動物にとって必要なものは色の違いではないだろうし、土の中とか洞窟で暮らす生物の目が退化することはよく知られている。過剰なスペックを維持するために、余分な資源を使うことによって環境に適応できなくなる場合もあるということなのだろう。
後半は類人猿と人類の比較からヒトの在り様を考察してます。
人類は直立二足歩行するように進化してきたけど、類人猿と比較してみるとそれぞれの環境に適応するように進化していて、オラウータン→ゴリラ→チンパンジー→ボノボ→ヒトと一直線に進化してきたわけでなく、共通祖先から枝分かれしてきたみたいで、腕を見てい見ると共通祖先の腕はヒト型の手でそこから今のチンパンジーの手が進化した。ちょっとわかりにくいですけど詳しくは本に分かりやすい図もあるので読んでください。
直立二足歩行に進化したことによって、どうしても腰痛に悩まさられ、難産となり、いいことばかりでもなかったみたいですが、子孫を多く残していき生存競争に打ち勝つのには有利だったということだったと言うことです。
因みに人類は逃げることはできないけど追いかけるのは得意。イギリスで馬とヒトの長距離走競技があるけど、最近はヒトの方が勝つことが多いとか。ヒトは長距離走では体毛が薄くて汗をかきて体温を下げることが出来るのだが、ウシやシカは体温が上がりすぎて長距離が走れなくなり、ヒトの追跡を逃れることが出来なくなるとか。
全部は紹介しきれないのですがとにかく知的好奇心をいたく刺激する内容満載ですし、新書本200ページほどなので、ぜひ一度読んでみてください。
ところでこの本、東海林さだおが読んだ本として紹介しているのですけど、この本だけでなくあと2冊「わたしは哺乳類です」「人体、なんでそうなった」をあげています。
「わたしは哺乳類です」は読んでみたのですが、著者は外国人でどうしても外国名が出てくるし、結構専門的な用語も出てきます。非常に面白かったのですが、読むのにはちょっと苦労しました。それを85歳になりなんとする東海林さんがちゃんと読んだことには驚きです。もう1冊読むならぜひどうぞ。
私たちは進化の系統樹をよく目にしていて、そこで万物の長たる人類は一番頂上に位置付けられている。
当然ながら人類は地球上で一番優れた生物で、そのパーツパーツの機能も最高のはず。
ところがいろいろ詳しく見てみるとさにあらず。人類のいろいろの部位は進化の最終形の完全な姿ではなく、進化の途中形であって不完全なもの。
この本はそんな進化の現実を分かりやすく提示して、目からうろこの思いでした。
進化とは最もその時の環境に適応するということで、進歩とは違う。進化はあっち行ったりこっち行ったりしていて、進化の道はたくさんある。決して人類の生物としての今は完全無欠ではなく不完全な部分を多々抱えている。
地球環境は生命誕生以来30億年以上の間に大きく変化しており、一直線の変化ではないだけにもっとも繁栄する種も変わる。肺・心臓とか目とかのパーツパーツを見てみればよく分かるのだが、例えば呼吸器と肺だけを取り上げれば恐竜とか鳥類の方が優れているとか。哺乳類は気管という同じ管を使って空気を出したりいれたりしている。この仕組みはとてもよくできた仕組みなのだが、同じ管を使って空気を出したり入れたりしている。空気が逆方向に流れるので呼吸器としては効率がよくない。一方鳥類は肺の周囲に気嚢があるので肺にはいつも空気が一方通行で流れる。このため鳥類は他の動物が生きられないような空気の薄いところでも生きていけ、例えばヒマラヤ山脈を越えたることもできる。因みに恐竜もこの優れた呼吸器を持っていた可能性があり、中生代初期の同じころに出現した哺乳類と恐竜ですが、中生代に恐竜が繁栄したのはこの呼吸器の性能の違いで、同じ活動をしても恐竜の方が行きが切れなかったかもしれないとか。
動物は有機物を分解してエネルギーを獲るのだが、結果分解された有機物を体外へ排出する必要がある。水と二酸化炭素は捨てるのに時に問題はないのだが窒素はもっとも単純なものであるアンモニアは毒性が強い。魚類のように水中で生きているものは大量の水に溶かして排出する。しかし陸上で生活する動物は好きなだけ水が手に入らないので、体内から排出する窒素を哺乳類はアンモニアより毒性に低い尿素で排出しているが、尿素は水に溶けにくいため大量に水を飲まなくてはいけない。鳥類はさらに毒性が低く水に溶けにくい尿酸として排出している。鳥のフンの白くてどろりとした部分は尿で少量の水に混じった尿酸です。排出方法の進化系統樹を見てみれば陸上生活に適した進化をしてる鳥類の方が上になる。う~ん、体内で合成して窒素を尿酸として出すとなると結石があちこちに出来そうですけど。
眼がどうやって進化してきたかを見てみると、目の数も色覚も行ったり来たりしているみたいで、色を見分けることが出来る錐体細胞では多くの脊椎動物は4種類の錐体細胞を持っていて4種類の色を見分けることが出来る。ところが多くの哺乳類は2種類しか持っていなくてあまり細かく色を見分けられない。ところが猿の仲間の一部は3種類に増やしたものが現れる。私たちの目は4色型色覚から2種型色覚になりさらに3種型色覚になったということです。優れた視力を持つ生物はいろいろ知られていいて、人類の眼より鷲と鷹の目の方がはるかに優れている。生物が生きていく環境でより適応するためには場合によっては退化している場合もある。夜行性の動物にとって必要なものは色の違いではないだろうし、土の中とか洞窟で暮らす生物の目が退化することはよく知られている。過剰なスペックを維持するために、余分な資源を使うことによって環境に適応できなくなる場合もあるということなのだろう。
後半は類人猿と人類の比較からヒトの在り様を考察してます。
人類は直立二足歩行するように進化してきたけど、類人猿と比較してみるとそれぞれの環境に適応するように進化していて、オラウータン→ゴリラ→チンパンジー→ボノボ→ヒトと一直線に進化してきたわけでなく、共通祖先から枝分かれしてきたみたいで、腕を見てい見ると共通祖先の腕はヒト型の手でそこから今のチンパンジーの手が進化した。ちょっとわかりにくいですけど詳しくは本に分かりやすい図もあるので読んでください。
直立二足歩行に進化したことによって、どうしても腰痛に悩まさられ、難産となり、いいことばかりでもなかったみたいですが、子孫を多く残していき生存競争に打ち勝つのには有利だったということだったと言うことです。
因みに人類は逃げることはできないけど追いかけるのは得意。イギリスで馬とヒトの長距離走競技があるけど、最近はヒトの方が勝つことが多いとか。ヒトは長距離走では体毛が薄くて汗をかきて体温を下げることが出来るのだが、ウシやシカは体温が上がりすぎて長距離が走れなくなり、ヒトの追跡を逃れることが出来なくなるとか。
全部は紹介しきれないのですがとにかく知的好奇心をいたく刺激する内容満載ですし、新書本200ページほどなので、ぜひ一度読んでみてください。
ところでこの本、東海林さだおが読んだ本として紹介しているのですけど、この本だけでなくあと2冊「わたしは哺乳類です」「人体、なんでそうなった」をあげています。
「わたしは哺乳類です」は読んでみたのですが、著者は外国人でどうしても外国名が出てくるし、結構専門的な用語も出てきます。非常に面白かったのですが、読むのにはちょっと苦労しました。それを85歳になりなんとする東海林さんがちゃんと読んだことには驚きです。もう1冊読むならぜひどうぞ。