怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「養老先生、病院に行く」養老孟司・中川恵一

2021-09-11 07:15:34 | 
自他ともに認める医者嫌いの養老先生。
とにかく57歳の時に肺に影があり、肺がんの疑いがあると言われた以来掛かっていないとか。その時、肺がんだとしたら残りの人生は限りがあり、できる間に好きなことをやろうと定年前に東大を退官したそうです。結局肺がんではなかったのですが、以来健康診査の類は一切行っていない。
糖尿病はかねてより分かっていたそうですが、現代の医療システムに巻き込まれたくないという考え。いったん医療システムに巻き込まれたら「俎板の鯉」となり自分の行動が制限されすべてを委ねなくてはいけなくなる。自身の「身体の声」を聞けばいいと言うことですが、何やら五木寛之さんも同じようなことを書いていた記憶があります。
五木寛之さんも歯医者以外は医者に行ったことがなく、体調が悪い時は自分の身体に聞いて養生しているとか。加えて信じられないことに髪の毛も洗っていない。これは余計なことでした。
そんな養老先生が東大病院の中川恵一先生に受診したのです。

どうも「身体の声」が尋常ない状況だと悲鳴を上げたみたいです。
体重が1年間で15キロも減り、なんだか調子が悪く、元気も出ずにやる気も出ないと言う不定愁訴があり、受診前3日ほどはほとんど寝ていたとか。
連絡を受けた中川先生は、体重減少について糖尿病かガンを疑い、外来診察では血液検査とCT、そして心電図を取ったのですが、糖尿病からの心疾患を疑い念のため行った心電図がビンゴでした。
詳しい病状は中川先生がリポートしていますが、心筋梗塞で受診がもう少し遅れていたら危なかったという切迫した状況。左冠動脈前下行枝の末端が完全に詰まり、左冠動脈主幹部にも梗塞がありかなり閉塞しかけていた。すぐにカテーテル検査と一緒にステント治療も行いICUに入ることに。一般病棟に移ってからはがん検査も行い、胃癌はないもののピロリ菌は陽性、大腸にはポリープがあり、軽度の肺気腫もありました。ついでと言っては何ですか、白内障もあり眼内レンズ手術して、これは寝転がって本が読めるので快適だとか。
心筋梗塞については、まさに一命をとりとめ、いったん医療システムに巻き込まれてしまったなら、そのシステムに合わせるしかないと言う考えなのでしょう、入院している間は医師の指示に従いおとなしくしていたみたいですが、果たして医療に対する考えは変わったのか。
養老先生は、そう簡単には考えは変わらなかったみたいです。検査結果からのピロリ菌除去もポリープ切除も拒否。白内障の眼内レンズは入歯みたいな感覚なのでしょうが、基本的に医療システムには巻き込まれたくないみたいで、80歳過ぎまでこうやって生きて来たんで今更なんでしょうか。ピロリ菌除去は抗生剤を1週間飲むだけなので、入院することもなく、以前私もピロリ菌陽性と言われやったことがありますけど抗生剤を飲んでいる1週間は下痢しがちだったぐらいでしたけどね。
通常、心筋梗塞と言うと激しく胸に痛みが走るのですが、養老先生は痛みの訴えはなかった。どうやら糖尿病が進行していて神経障害を起こし、痛みに対する感覚が鈍く成っていたみたいです。痛みはないので本人的には至って気楽に眠いだけだったのはいいことかどうか。
ところで養老先生には高齢の愛猫のまるがいて、体があちこちガタが来ているのか、動物病院に連れて行くと慢性心不全。薬は飲もうとしないので、半月に一度ステロイド注射を打ち、2日に1回胸水を抜く。猫に自身の意思表明はできないのですが、保護者としてはかなり手厚い医療を受けさせています。そこは一人称と二人称の違いか。
この機会に中川先生としては養老先生の医療に対する考えを変えたかったみたいですが、東大病院に定期受診もしないで中川先生に処方箋だけ頼んでいるという不良患者のまま。でも処方された9種類の薬はちゃんと飲んでいるみたいですけど。
放射線科医の中川先生としては、みんなにがん検診はちゃんと受けて健康診査も受診してほしいのですが、胃がん・大腸がん・肺がん・乳がん・子宮がんの検診は国際的にも死亡リスクを下げることが証明されており受けるべき。一方、前立腺がんと甲状腺がんは見つけることの不利益の方が大きいので見つけなくてもよいがんとか。う~ん、PSA検査で前立腺がんの死亡を防ぐことができるのは1000人に1人と言われるとやっぱりやめておこうか。
身体の声に従って受診していなければ危うく死線を彷徨うところだったのですが、そんなことがあってもひょうひょうとした養老先生の生き方は変わらなくて、フムフムと読めました。私もどちらかと言えば医者嫌いで、健康診査は受けていますが、高脂血症で要医療でも身体の声に従って、まあいいかなとスルーして、がん検診は受けず。頑固に身体の声に従う養老先生にちょと共感。
そういう人も多いのか、この本、図書館でも予約待ちだったし結構売れているみたいですね。
コメント
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