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怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「23区格差」池田利道

2016-02-19 07:13:47 | 
東京23区と言えば田舎者の私から見るとほぼ同じような大都会にしか思えないのですが、実情を見てみるとバラエティに富んでいて、格差もあります。23区は多様な街の複合体で人口が伸びている区もあれば減っている区もあります。
そんな23区の実情を、基本は国勢調査の結果に他の統計データも引用しつついろいろな角度から分析していったものです。
読んでみると公表されている統計データに基づいてだけでこんなにもいろいろな比較できるのかと感心します。ここで使われているデータは主に「国勢調査」のほか事業所や従事者に関する「経済センサス」、工業に関する「工業統計」です。この他には医療機関に関しては東京都の「東京都の医療施設」、福祉関係、理容美容、公衆浴場などは東京都の「福祉・衛生年報」に依っていますが、これに類した統計は愛知県なり名古屋市でもまとめています。「住みたい街ランキング」は最近名古屋でもリクルートが公表しています。
ということは名古屋市16区でもこういう比較ができるはず。もちろん行政区と特別区の違いがありデータが行政区ごとになっていないものもありますが、かなりのことはできるはずです。以前瑞穂区が16区で一番のものを出してくれないか、統計から見る瑞穂区の特色を分析してくださいと依頼したことがあるのですが、パッとしたものが出てこなかった記憶です。公表されているデータだけでいいので16区を時系列とクロス分析しないと難しかったかもしれません。まあ、問題意識も希薄だったんでしょうけどね。
それにしても23区の所得水準は高い。一番低い足立区でさえ全国812市区中157位。大阪市や札幌市より高いのです。その足立区よりも港区は2.8倍、千代田区・渋谷区でも2倍以上です。当然ながら港区、千代田区、渋谷区は全国の1位2位3位です。名古屋市の港区とはえらい違いでしょうね。
因みに4位は兵庫県芦屋市。さすが関西の高級住宅街。
この所得の統計は総務省の「統計で見る市区町村のすがた」に依っていますが、行政区別では出ていないデータです。
これも以前、市長が瑞穂区は金持ちが一番多い(言外にだから寄付で賄え)と言うので反証しようとデータを探したことがあるのですが、これはというズバリのものはなかった記憶です。そこそこ近いデータ(住宅・土地統計調査より1000万円以上の収入の世帯割合)で見てみると金持ち率としての1位は千種区、2位は昭和区、3位瑞穂区、金持ち世帯数では1位千種区、2位緑区、3位名東区でしたけどね。これは余計な話です。
合計特殊出生率は低い23区ですけど子どもの数で言うと転出入があって、幼児人口の増加率1番は港区、以下品川区、世田谷区です。中心部に位置し、年収、学歴、職業の3つが高い3高の区で人口増加率も高い区だからです。
一人暮らし高齢者が多いのは江戸川区、でも3世代同居率も高くて合計特殊出生率も一番。江戸川区は家族力が強いということでしょうか。パラサイトシングルが多いのは目黒区、杉並区の順。さらに詳しく見ていくと杉並区は目黒区に比べて親がかりの男性が多いとのことで、専業主婦の家庭で母親の愛情をたっぷり受けて育ってきた男の子がパラサイト化している…
23区の人口を時系列で見ていくと高度成長期にピークを迎えた北区のような区もあるが、定住率は23区で一番。これって安心して住み続けられるということか。でも定住率が高い区というのは高齢化も進み、知名度も低く住みたい街ランキングでは下位。定住率が低い区は人口も伸びていて高所得で住みたい街ランキング上位なのですが、区として定住率が低いほうがいいのか考えさせられます。あんまり街の新陳代謝の激しい区も住み難いかもしれません。
後半には23区のそれぞれを通信簿として評価していますので、各区の実情と抱えている課題が分かりますが、名古屋市の16区ではどうかと考えさせられます。特別区と違い行政区で何ができて何をすべきかという大きな議論は当然ありますが、現状分析はすぐにでもできるはずです。仕組み云々というと話が際限なく拡散してしまいがちですが、現在の枠組みの中でも今何ができるか、できることはないのか、ほとんど何もできなかった身として自省しています。
この本で一つだけ異論があるのは「病気になっても心強い区は」の部分。診療所数、病院数、病床数そして看護師数に病院平均在院日数で分析していますが、病院についてはその機能によって病床あたりの看護師数は変わりますし、平均在院日数も変わります。高次機能病院は看護師数も多く、急性期から慢性期になれば今の診療体制としては後方病院へ転送するので平均在院日数は短くなります。在院日数が短いことをもって経営の効率性を重視した安心できない体制というのは、急性期から慢性期までの病院の機能が分かれている現在の医療体制についての無知でしょう。この部分はさらに踏み込んだ分析が必要に思います。
ところでこの本の中では23区の位置関係とか主な地名が書いた地図がありません。いろいろな地名が出てきても田舎者の私にはいまいち理解できないところがあります。まあ、地方の読者をあまり想定していないということでしょうけど、ちょっと残念です。読む時に東京の地図を横に置いておくとより理解がしやすいと思いました。
この本を読んで誰か是非名古屋市の16区の比較を分析して発表してください。暇そうなお前がやれと言われると非才な私には荷が重すぎます…
コメント
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