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怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

「風たちぬ」とゼロ戦

2013-10-03 20:17:39 | 映画
前にも書いたと思うけれど、私的には宮崎駿の最高傑作は「天空の城ラピュタ」だと思う。
最近の作品はそれなりに傑作と思うのですが、宮崎駿という名前が先行しているのではと思っています。今回は彼の最後の映画となるみたいですが、それでもというか、それならというか、先日下の子供と一緒に見てきました。
平日の昼間だったのですが、結構満員。年齢層はかなり高め?
結論から言うと映画としての盛り上がりが欠けるのかな…なんとなく退屈してしまいました。
堀越二郎の飛行機にかける夢が憧れのイタリア人設計者との出会いの夢として何回も挿入されるのですが、ちょっと冗長では。ドイツ人スパイとか当時の特高のエピソードとかも必要あるんでしょうか。
ちなみに堀越が働いていた場所は三菱名古屋だろうし、名古屋駅などもちゃんと時代考証もしてあるんだろうと思うとこれはこれとして結構興味津々でした。当時の大学卒の設計担当者はあんな待遇であんな生活していたんでしょうね。
最初に設計して軍に採用されたのは96式艦上戦闘機だと思うのですが、記憶では中国戦線に投入されて向かうところ敵なしだったとか。昔プラモデルを作った覚えがあります。ドイツ軍の飛行機でユンカースという名前も憶えています。急降下爆撃機が有名でしたよね。
ところで私の恩師と言っても直接ゼミで薫陶を受けたことがないのですが、私の思想形成(ちょっと大げさですね)に大きく影響を受けた小池和夫先生によると「ゼロ戦と戦艦大和」は当時の世界技術水準でも最先端のものと言えるとか。ゼロ戦についていえば筑摩書房の「現代日本経済史」の上巻に「戦時経済の遺産」として詳しく書いていますが、「ゼロ戦が同時代の欧米各国の戦闘機を、ほとんどの面でも抜きんでた作品であること、国の内外を通じて全く異論がない。そして航空機は、広くさまざまな産業の技術の総合的成果なのであって、ゼロ戦に示された敗戦前の我が国の技術を過小評価することは到底できない。」と述べています。そしてそれを実現できたのは優れた設計はもちろんですが、設計通り製造できた人的資本の技術水準も素晴らしいものだったと思います。飛行機として完成するためには設計者と現場の技術者との緊張感あるやり取りがあったはず。設計図さえあれば世界最高水準の飛行機ができるものではありません。もう少しそういうところに目が行っていたらと思います。
さらに言えば、どんなに飛行機にかける情熱と言っても結果としてできたものは武器としての飛行機であり、優秀な兵器となります。そういう時代だったといえばそれまでですが、その点への葛藤は描かれていません。
菜穂子が結核なのにサナトリウムを抜け出し一緒に暮す姿は美しいのですが、排菌している患者が出てきたらいかんだろうとこれはなまじ中途半端な知識があるだけに余計な突込みが出てきます。堀辰夫の風たちぬは読んでいないので、ここらあたりどこまで原作の雰囲気を残しているのかわからないのですが、私には縁のないお嬢様ですね。いまひとつ感情移入できませんでした。
映画ではゼロ戦自体は最後に出てくるだけで、ゼロ戦の完成と活躍は出てこない。墜落し壊れたゼロ戦が出てくるだけです。それが宮崎駿なりの戦争に対する姿勢のメッセージなのでしょうか。
ところで映画の中でタバコを吸うシーンが多いのはけしからんという抗議があったそうですが、それならば映画の中で拳銃を撃つのは言語道断、暴力をふるうシーンが多いとみんなが粗暴になる?確かに喫煙シーンは多いのですが、あえて言えば当時の文化を忠実に再現しているのであってこういうことまで表現が制約を受けるのならなんともはやとしか言えません。
コメント
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