カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

カトリックは「ウクライナ戦争」をどう見るか ー ロシアのメンタリティ

2023-10-25 09:21:31 | 教会

 今日は久しぶりに教会の「アカシアの会」(1)に出てきた。この会の毎月一回の例会自体もコロナ禍で永らくお休みだったようで、今日の出席者は10名ほどだった。皆さん高齢者ばかりだがどなたも論客で、楽しくも有益な懇話会だった。

 今日の話題提供者はSさんで、テーマは「ロシアのメンタリティ」 というものだった。わたしはテーマに惹かれて(2)、ロシア正教の正統派と古儀式派の比較の話し(3)かと期待して出かけたが、実際には「ー ウクライナ戦争に関連して」というサブタイトルが付加されていて、極めて時事的な話題であった。わたしはこのブログではあまり時事的な話題は取り上げないことにしているのだが、今日はテーマがテーマなので少しカレントなテーマに触れてみたい。Sさんの結論は、「たとえロシアの立場を斟酌したとしても、ロシアのウクライナ侵略は到底正当化できるものではない」というものであった。妥当な結論だが、問題はロシアの立場をどのように「斟酌する」かだ。

 Sさんはまず、ウクライナ戦争についての東西両陣営の考え方の相違を次のように整理した。

①西側陣営の考え方
ウクライナは独立国であり、これを侵略することは明らかに国際法と国連憲章の違反であり、許されない。


②ロシアの考え方
歴史的・人種的・文化的・地政学的にウクライナはロシアの一部であり、ウクライナ国民は親ロシアである。アメリカの陰謀により、国民の意思に反したファシスト政権がウクライナを奪取した。従って、ロシアのウクライナ侵攻は、奪われた土地を回復する個別的自衛権の行使であり、国際法や国連憲章で認められた行為である。

 言うまでも無く両者の考え方は対立しており、西側に属する日本の多くの人は①の立場をとる。だが、②の立場をとる人もいないわけではない、と説明された(4)。

 ついで、「ロシアの主張の背景」が4点指摘され、おのおのについてSさんの持論が展開された。

①ロシアの被害者意識
②ウクライナの独立性の問題
③NATOの東進の問題
④マイダン革命によるロシアの対ウクライナ政策の大転換

 どれも細かい話しだったので、おのおのについての説明の紹介は次回にまわしたい。

 

【ウクライナ戦況地図】(朝日新聞デジタル)

 


1 「アカシアの会」とは当教会の司牧部に所属する高齢者向けの懇話会だという。もともと女性の集まりだったが、近年は男性も参加するという。毎月誰かがなにかのテーマで話をし、おしゃべりを楽しむ会のようだ。会の終わりにはかならず「童謡」を皆で一緒に歌うのが習わしらしい。今日は、「埴生の宿」と「旅愁」をSさんのオルガン演奏で歌った。
 アカシアの会という名称の集まりはいろいろなカトリック教会にあるという。アカシアの木は「契約の櫃(ひつ)」 the Ark (ヤハウエの箱、神の箱とも呼ばれる)の材料で、クリスチャンにとってはいわば神聖な木だから、この名称はいろいろなところで使われるのであろう。わたしは残念ながらどういう木かは見たことがない。
2 「ウクライナ戦争」という表現が定着しているとは思えないが(まだ宣戦布告が出ていない)、Sさんはあえて侵攻とか紛争という言葉ではなく戦争という言葉を選んでいたようだ。懇談の中ではイスラエルによるガザ「侵攻」「攻撃」の話も出たが、「イスラエル・ガザ戦争」という表現は定着していないようだ。ともにカトリックとしてどう捉えるかという宗教問題としてというより、テロにどう対峙するかという問題として理解されていたのは印象的であった。
3 ロシア正教とウクライナ正教の比較、ロシア正教の正統派と古儀式派の比較は別の集まりでしたことがある。特に「古儀式派」(旧教派、異端派)の重要性は日本のメディアはあまり言及しないので、そこでの紹介は興味深かった。
4 こういう整理の仕方自体に異論を唱える人もいるだろうが、イラン寄り、トルコ好き、イスラエル嫌いの日本のメディアの論調よりは正鵠を得ているように聞こえた。Sさんは①の立場をとる論者の例として国会議員の鈴木宗男氏を挙げていた。プロテスタント神学者の佐藤優氏もロシア寄りと評されることがあるようだ。

 

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