カトリック社会学者のぼやき

カトリシズムと社会学という二つの思想背景から時の流れにそって愚痴をつぶやいていく

イエスの復活の証言 ー 信仰告白(2)

2019-03-28 15:10:42 | 神学


 イエスの復活の証言には二つの類型があるという。 ①信仰告白の伝承と、②復活物語の伝承 だ。


1)信仰告白伝承の類型

 信仰告白には、「復活」論と「高挙」論の二種類がある。

①イエスの復活に関しては、「神はイエスを復活させた」というロマ書が中心で、主語は神だ。神がイエスを復活させた。

 「口でイエスを主であると告白し、心で神がイエスを支社の中から復活させられたと信じるなら、あなたは救われるからです」(ローマの信徒への手紙10:9)

 ここでは主語は神で、能動態だ。

他方、「イエスは復活した」とイエスを主語とする文言もある。

「イエスが死んで復活されたと、わたしたちは信じています。それならば、神はまた同じように、イエスにあって眠りについた人たちを、イエスとともに導き出してくださるのです」(第一テサロニケの信徒への手紙 4:14 聖書協会共同訳)。

 これはイエスが主語になっている。

 他方、パウロは「キリストの復活」と呼ぶ。著名な第一コリント15:3-5だ。

「最も大切なこととして私があなた方に伝えたのは、わたしも受けたものです。すなわち、キリストが、聖書に書いてあるとおりわたしたちの罪のために死んだこと、葬られたこと、また、聖書に書いてあるとおり三日目に復活したこと、ケファに現れ、それから12人に現れたことです」

 主語はキリストであり、書簡のせいか力強い。

②「キリストの高挙」説も信仰告白伝承の他の類型のようだ。高挙というとわたしにはいくつかの絵を思い浮かべるくらいしかできないが、伝承の中では重要視されてきたのであろう。高挙とは、復活後のイエスが父なる神の右の栄光の座に挙げられることをさすが、伝承の中では、イエスが普通の人間から神の子となること、万物の支配者になることを意味してきたようだ(1)。
「キリストが挙げられる」という言い方はおもに次の二カ所に根拠を持つらしい。

ア) フィリピ2:6-11
 「このため、神はキリストを高く上げ、あらゆる名にまさる名を お与えになりました」(2)

イ) テモテへの手紙Ⅰ 3:16
 「まぎれもなく偉大なのは、敬虔の秘義です。すなわち、キリストは肉において現れ、霊において義とされ、天使たちに見られ、諸民族の間で宣べ伝えられ、世界中で信じられ、栄光のうちに上げられた」(3)

③受難予告
 信仰告白伝承には受難予告も入っているようだ。
「それは弟子たちに、「人の子は、人々の手に引き渡され、殺される。殺されて三日の後に復活する」と言っておられたからである。」(マルコ9:31)
「人の子は必ず、罪人の手に渡され、十字架につけられ、三日目に復活することになっている、と言われたではないか」(ルカ24:7)

2) キリストの死と復活

 信仰告白伝承の中でのキリストの死と復活の話は神学的議論が盛んらしい。当然と言えば当然だが、おもに、コリントⅠ 15:3b-5 のパウロの言葉が中心らしい。
「キリストが 死んだこと わたしたちの罪のために 聖書に書いてあるとおり 葬られたこと、復活したこと、三日目に 聖書に書いてあるとおり、現れたこと ケファに、その後12人に」。

 ここでは、「わたしたちの罪のために」、「三日目に」、「復活した」、「現れた」、などの表現をめぐる細かな議論が紹介されるが、川中師の神学的解釈の妥当性は私には分からないので、ここではふれないことにする。
 ポイントは、「復活の解釈」が時間的に変化していったらしい点だ。


①まず、目撃体験があった。「現れた(見た)」というのは体験そのものだ。
②この体験をやがて弟子たちが反省的に解釈する作業が始まる。この自分たちの体験を証明するために、旧約聖書の黙示思想が導入されてくる。イザヤ書26:19とか、ダニエル書12:2などだ。旧約が新しい視点から再解釈されてくる。
③そして、復活の言語化が始まる。パウロたちはイエスが「甦る」「復活した」と語り始めた。

 でも、こういう文字化された復活の証言よりもやはり復活の目撃という体験の方がより重要だというのが川中師の説明のポイントのようだ。復活物語の伝承の話は次回にまわしたい。

注1 なぜ、「神の右の座」であり、「左の座」ではないのか。「左の文化」が支配的な日本ではなかなかすんなりとは受け止められない人も多いようだ。
注2 ここでは、「高く上げ」と訳されている。
注3 聖書協会共同訳では「敬虔の秘義」と訳されている。秘義とは神秘のこと。新共同訳では「信心の秘められた真理」とある。教会での信心は大事ですという文脈だ。

 

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