評論家だから言ってなんぼ、ということは百も承知。だが氏が批判している「紅白」を年の瀬の行事とみなしている方々もいるわけである。
氏の云う大物が出演しないからといって、その番組の存在価値の高低にはあまり関係ないと思っている方々の方も少なくないのではないか。
山下達郎、井上陽水、ザ・タイガースという高齢者をみたいという方より、今年の音楽、歌謡界の実情をとりあえず復習しておきたいと思ってみる方もいるだろう。かくいう拙がそうなのだが。
拙にとって紅白は歌謡曲の現状(ヒット曲の現状ということではない)を知る一種教養番組なのである。
冨澤氏は「とっくに死んでいる」とマンガの主人公のセリフをつかって扇情的にこきおろしているが、死んでいるモノを評論している自身はいかなる評論家と評されるべきなのであろうか?
紅白がなくても困る方はいないかもしれないが、かような評論もなくて構わないと思う方も多いであろう。
楽しんでみる方もいれば、拙のように「なるほど」と思ってみる者もいるのだ。
そうそう言うならもっと早くいいなさいな。
紅白歌合戦 「紅白はとっくの昔に死んでいる」と音楽評論家
NEWS ポストセブン 12月23日(月)7時5分配信
年末恒例のNHK紅白歌合戦。2004年に初めて40%(第2部)を下回って以降は、視聴率40%台をキープできるかが焦点となってきた。昨年は42.5%を記録したが、今年はドラマ『半沢直樹』(TBS系)の42.2%を抑えて年間1位の視聴率をとれるかにも注目が集まっている
今年の紅白はE-girls、泉谷しげる、NMB48、サカナクション、Sexy Zone、クリス・ハートら9組が初出場。そのほかの歌手をみても、大物アーティストや『あまちゃん』関連の出演も発表されなかった。音楽評論家の富沢一誠氏はこう言う。
「『半沢直樹』を上回る視聴率をとれるかは微妙なところでしょう。唯一の見どころは北島三郎の紅白引退ぐらいですね。泉谷しげるにしても、それほどの注目度はない今さら『春夏秋冬』を歌っても新鮮味がない。今年、昭和の名曲を集めたカバーアルバムを出していますが、アルバムで一緒に歌っている大竹しのぶ(『黒の舟唄』)とならまだ話題になるんですが…」
今回、NHKサイドとしても複数の大物アーティストにオファーをしたようだが、いい返事をもらえなかったという。
「山下達郎、井上陽水、ザ・タイガースなどからは断られたようです。アーティスト側からすれば、落ち目の紅白に出るメリットは、はっきり言ってありませんから」(スポーツ紙芸能担当記者)
ここ最近は、紅白でしか見られないような大物の出演はほとんどないと言っていい。それなら演出を工夫するしかないのだが、別のスポーツ紙芸能担当記者は、「美輪明宏の出演など、音楽の演出の試行錯誤は随所に見られる」としながらも、こんな指摘をする。
「ワイドショー的な話題づくりもしていいはず。たとえば先に放送された『FNS歌謡祭』では恋人同士だった小室哲哉と華原朋美の共演が話題を呼びましたが、紅白もこういった演出を参考にすべきでしょう。昔の紅白は松田聖子と郷ひろみを共演させたり、あの手この手を使ってワイドショーやスポーツ紙でネタになりそうな演出をやっていました。視聴率アップを狙うなら、なりふり構わずそんな手も使うべきです」
これまで幾度となく廃止論まで出てきた紅白だが、今後については、前出・富沢氏はこう厳しく指摘する。
「もはや時代が紅白を必要としていない。昔の紅白は視聴率が80%を超えることもありました。もちろん、当時と今ではテレビを見る環境なども変わってきていますが、当時はその年を代表する歌手が出場し、その年の代表曲で1年の締めくくりとなってきました。だからそれだけ注目を集め、国民的番組といわれたわけです。今では、その年の代表曲がない歌手も出場し、過去のヒット曲を歌う歌手も珍しくなくなった。本来の紅白の主旨とは変わってきています。紅白というブランドの中でやっているだけで、もはや紅白とは言えないのです。賞味期限の切れた紅白はとっくの昔に死んでいるということです」