未読の方はご注意を(ってちょっとググればバラしてるヒトはいくらもいるけど)
ヒロインは21歳、一応の教育はあるが身寄りがなくて大金持ちな奥さんのコンパニオンを勤めている(この奥さんがまた軽薄人種、ヒロインのどこが気に入って雇ったのかさっぱりわからないし実際あんましウマが合ってるようにも見えない、誰かに頼まれたというわけでもなさそう、結局これについての説明一切なし)、モンテカルロでたまたまイギリス人の大金持ちマキシム(42歳)に見初められてあっさり結婚の運びに(ホントあっさり、でもこれどんな女の子も密かに願ってる展開かも、あ、そう思うのは私だけ?そらどーも)
マキシムの前妻レベッカは1年前にヨットの事故で死んだ(ということになっている)、美人で有能で誰からも尊敬されていた、特に女中頭のデンヴァーズ夫人(ダニー)は彼女を絶対視してて若い後妻のヒロインを女主人と認めないどころかことごとに根性悪をしかける(この作者は同性愛だったらしいというが確かにダニーがレベッカに捧げる愛の表現はこれを恋愛と言わずして何と言う?というほどリアルそのもの、やっぱ作者は男女間の愛にあんまし関心なかったのかも)、ヒロインが自分はホントにここにいてもよいんだろうかと深刻に悩み始めたその時
海に沈んでいたレベッカのヨットが発見され中に死体(白骨?)があった、マキシムはヒロインに言う「あれが本物のレベッカ、海岸の小屋で自分が撃ち殺し死体をヨットの船室に隠して沖へ出てから船底に穴を開けて船ごと沈めたのだ」
レベッカは確かに美人で有能だったがとんでもなく淫蕩でもあって結婚前から従兄と関係していたし、館へ来てからも回りの男にかたっぱしからちょっかいを出していた、あの日「妊娠したが誰の子だかわからない、だけど証明のしようはないハズだ」とキッパリ言ったのでいかに何でもアタマへ来て撃ったのだ「なにも後悔していない、レベッカを殺してよかったと思っている」
あのさ、お宅いい大人だろ、まんざらのアホでもないだろ、そんな杜撰な犯行がバレんわけないじゃないか、逃げ切るつもりで殺すのならもっとうまくやれよ、衝動的にやっちゃったと言うならすぐ自首すれば当局の印象決して悪くはならんと思うぜ、奥さんが悪妻だったことの証人はいくらもいるハズだしとスレッカラシのミステリ読みは舌打ちするわけなのであるが
ヒロインはと言えば無邪気なものでこれにて一安心、何が何でも殺人を隠しとおすしかあるまい、これからは自分が夫を守ると健気に決意する・・・んだが役に立てるわけもないどころか彼女が一番の弱点と成り果てる、ねえダンナ、奥さんにペラペラしゃべったの客観的には失策だと思うよ(小説としてならまさしくここがクライマックス、お見事としか言いようのない構成であるが)
というマヌケな犯人がどうして助かったかと言えば「実は自殺」という解釈が成立しちゃったから、確かに自殺だったのだ、レベッカは末期癌だった、苦痛の末にベッドで死ぬよりまだ元気なうちに殺されたいとマキシムに(アンタの子ではない子供を妊娠したと)ウソを言ったのだ
そういうわけでまあめでたしと言えば言えるんだが、何があろうとまだ元気な奥さんを撃ち殺した上に死体を遺棄した事実は消えないんじゃない?またあの日レベッカが戻って来ないのにダニーが騒ぎ出さなかったのも不自然、その晩か遅くも翌朝に彼女が「ヨットを探して」と沿岸警備隊(みたいなとこ)へ駆け込めば即射殺死体が発見されてマキシムは言い逃れできなかったハズだし罪も軽くはなかったろうと思うけど
そう、異色作家の解説にもあったけどミステリとしてはなってない、時は(ジェーン・エアの)19世紀じゃなくて1938年、外はクリスティ、クイーン、カーと本格ミステリ真っ盛りなのだ、ン、だ、だけど・・・・確かに「異色」作家はまちがいないわね
ものすごく些細なツッコミ-海岸でアタマの弱い男の子がヒロインに掘ったばかりの貝をくれて「バタつきパンといっしょに食べるとうまいよ」という(ホントは「砂だししてからね」と付け足すべきだが)、ヒロインはそれをスカートのポケットに入れて持ち帰りバタつきパンを食べるが貝は食べない、それきりポケットから取り出したという記述がない、生きた貝をポケットへ入れっぱなしにするなよな、どーいうことになるか想像つかんのか?!