これは私の発行している「数学・物理通信」11巻3号に掲載したものであるが、あまり知られていないらしいので、ここにも再掲する。固有名詞が入っていたところはイニシャルに変えた。
後ろに載せた, K君のメールにもあるように五捨五入の考え方は日本ではまだ珍しいので,ここのブログに再掲載する.
2 月の定例学習会の案内(「研究と実践」(愛数協)第29 号に再録)にS先生(愛数協前事務局長:当時)が書かれている「概数の導入」を読んでちょっと思い出したことを一つ.
昔,占部実先生(元広島大学,元九州大学教授)の応用数学の講義を聞いたときのことです.普通世間では「四捨五入」といいます.しかし.数値計算をやるときには,望ましいのは「五捨五入」だと言うのです.それは4.575とあれば4.58 といつでも切り上げるのではなく,二回目には4.57 と切り捨てるというように切り捨てと切り上げを交互に行う方が計算結果の丸め誤差(round-off-error) が小さくなるというのです.
これは特に計算が連続して行われるようなとき,たとえば,微分方程式を(コンピュータで)数値的に解くときなどには,まったく正しいと思います.
こんな話は他の人から聞いたことはありませんので,占部先生の独自の見解であったのか,それとも数値解析の専門家にとっては常識であったかは存じません.
またコンピュータでの計算では実際にどう処理しているのか,たぶんいつも切捨てではないかと思いますが今はっきりと覚えておりません.それで850 を概数として900 とするのは世間ではそうすることにしていますが,唯一の見解ではないような気もします.銀行等で預金に利息がついたときに,一円未満については,四捨五入でなくいつも切り捨てにしているのではないでしょうか.S先生いかがですか.
(K君からのメール)
卒業生のK君(神戸のある企業に勤務)からつぎのようなメールをもらった(2005.6.13).
昨日,先生から『数学散歩』の本をもらったので, 読んでみると数値計算をするときは「五捨五入がよい」と書いてあって, 計算の誤差を小さくするためだったのかと,初めて知りました.
というのは, 先日, 会社で顧客(アメリカ人)から結果の計算方法が違うと言われることがあって調べたのですが, アメリカの(数の)丸め方は, 五捨五入でした.(ASTM E29 (*3) によると)丸める前の数値が偶数の場合は切捨て, 丸める前の数値が奇数の場合は切り上げでした.
作業者に教育する立場に現在なっていて,「何で四捨五入でダメなのか?,アメリカの方がおかしい」というように反論されて, 顧客の要求だから(仕方がない)と言い聞かせていましたが,(五捨五入の)理由を言って聞かせてあげるともっと(納得して)実践してくれると思います.
(*3) ASTM International は旧称がAmerican Society for Testing and Materials(アメリカ材料試験協会)という名称であったが,いまではASTM が国際規格となって2001 年に改名した.ASTM E29 はASTM の分類記号E(金属の試験方法等)で番号が29 である.普通の場合にはこの番号の後に策定年が来るらしいが,ここではついていない.
(2023.2.28付記)上の記事を「数学・物理通信」に再録したところ測量関係の仕事をしていた方(Aさん)から測量では5捨5入であると教えられた。
(*3) ASTM International は旧称がAmerican Society for Testing and Materials(アメリカ材料試験協会)という名称であったが,いまではASTM が国際規格となって2001 年に改名した.ASTM E29 はASTM の分類記号E(金属の試験方法等)で番号が29 である.普通の場合にはこの番号の後に策定年が来るらしいが,ここではついていない.
(2023.2.28付記)上の記事を「数学・物理通信」に再録したところ測量関係の仕事をしていた方(Aさん)から測量では5捨5入であると教えられた。
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