物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

Der Teil und das Ganze

2017-03-24 15:30:52 | 日記

というのは日本語では『部分と全体』(みすず書房)という題で出版されている、ドイツの物理学者W. Heisenbergの自伝である。もちろん『部分と全体』はすでに読んだことがある。

ところが、このドイツ語版を先日に東京神田の古書店である、明倫館の店頭にあった中に見つけて買った。定価ははじめ900円がついていたが、最近ではドイツ語を読む人など一部の人を除いていないと見えて、私が見つけた時には300円の値段がついていた。

それで私が他の本と合わせて購入した次第である。私だってそんなにすらすらとドイツ語が読めるわけではない。それで、興味がありそうな章だけ読んで見ようとしているのだが、あまり進んではいない。

dtv(Deutscher Taschenbuch Verlag)の1冊であるので、日本でのいわば新書みたいな感じである。Taschenbuchとは直訳すれば、ポケット版書籍とでもなろうか。一番関心があるのはHeisenbergが行列力学の端緒をHelgolandで見つけたという箇所であるが、その後はEinsteinとの話が出ている。話はドイツ語からの訳書で読んで知ったことだが、Heisenbergが原子内で電子の軌道は観測できないから原子の理論から軌道という概念を追い払うという考えだったのに、Einsteinはそういう考えはおかしいという異論を述べたというのである(注)。

Heisenbergは特殊相対論の論文でそういう考えをあなたは展開したではないですかと反論したが、それでもやはりそういう考えはとるべきではないとEinsteinがしたという話であり、観測できる量は理論が決定するのだというEinsteinの主張が述べられる。

この章が一番興味深いので、ここだけでも通して読んで見たいと思いながら、まだ通して読むことができていない。

最近NHKのEテレで放送の「仕事の英会話」の中にある会社の営業担当者(?)の名前としてWerner Heisenbergという人が出てくる。Heisenbergも死後およそ40年も経つと英会話の一人の登場人物の名として復活を遂げているとはご存知あるまい。

ちなみにハイゼンベルクHeisenbergは1901年12月生まれで、1976年2月に亡くなっている。 ちなみに語尾のgはクと発音する。ハイゼンベルグではない。

(注)電子の軌跡は霧箱(cloud Chamber)や泡箱(buble chamber)の中で見ることができる。これは厳密には電子そのものの軌跡ではないかもしれないが、一応難しいことをいわずに電子の軌跡であるとしておくと、電子の軌跡は観測にかかることになる。もっともこれは原子内の電子の軌跡ではない。


数学史家、三上義夫

2017-03-24 11:15:32 | 日記

最近、日本評論社から三上義夫著作集が出版されはじめている。広島市の大きな通りである、平和大通りに数学史家、三上義夫さんの顕彰碑がある(注)。

これは私が大学の学生であったころにできた思うが、三上さんのことは小倉金之助の本で知っていたくらいである。その後、三上さんの話を広島大学理論物理学研究所の教授だった、竹野兵一郎先生から大学院の授業で話をちょっと伺ったことがある。

戦後すぐのことだったかと思うが、三上さんが広島市郊外のお寺の離れかどこかに寄宿していたときに、竹野先生が訪れたことがあったらしい。このとき、数学者が自分を訪問してくれたということで、日頃貯まっていた不平不満を竹野先生がどっさりと聞いたとか話をされていた。

最近知ったことでは三上さんは奥様を亡くされた後で、この広島郊外のこのお寺に寄宿していたらしい。戦後でもあり、日常の生活品も入手が困難なころであったろうから、三上さんとはいわず誰であっても生活に困難を来たしていてもおかしくはない。ましてやもう老人の域に入っていた三上さんの生活も困難であったのだろう。

いまから見れば、世界的な数学史家である、三上さんの世間での評価はそれほど高くなかったのかもしれない。世の中でも三上義夫さんの著作集が出るにあたっても元の「数学セミナー」の編集長であった、K さんの尽力が大きいのだろう。

(注)この平和大通りは北海道の札幌の大通と似通っている。もっとも札幌の大通りにはテレビのタワーなどがあり、冬には雪祭りが開かれて、大勢の観光客が訪れると聞く。

学生のころに札幌を訪れてから、その後もう一度札幌へは学会のときに訪れたくらいしか機会がないが、いい街だと思っている。そこに住まわれていると思われる、Sさんはうらやましい。