物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

熱力学と順列・組合せ

2008-06-08 20:46:27 | 物理学

熱力学と順列・組合せとは世間で評判の悪い学問分野である。これは授業で習ったのによくわからなかったという多くの人の評価から来ている。

このどちらもよくわかっている人も多いのだろうが、わからない人の方が多いというわけである。量子力学も難しい学問だが、これはあまり評判は悪くないと思う。

これは私の主観的な意見であって、私の講義を聴いた学生たちは電磁気学よりもわかりにくかったという評判であった。授業の単位がもらえるから出ているが、本当に関心をもったという学生は37年近い講義の中でごく限られていたと思う。

熱力学の著書として最近有名な田崎晴明さんの著書でも大いにその努力を認めるが、やはり既存のテキストから離れているためにやさしいとは言えないと思う。

熱力学第一法則での

dU=d'Q+d'Wで熱の出入と仕事の量がそれぞれ単独では不完全微分なのに、それらの和dUは完全微分になっていて経路には寄らない

ということなどもそういったわかりにくさの一つであったが、ムーアの「物理化学」上の熱の力学的定義を読んでやっとこのことに納得がいったのはいつのことであったろうか。

やはり熱力学と関連している疑問は、

「熱はなぜ温度の高い方から低い方へしか流れないのか」

という疑問である。高校の物理の教科書で

「物理の言葉でいえば、いわゆるphase spaceが小さい」

ということを知ったのは受験勉強も終盤に入った高校3年生の1月頃だったと思う。そのころは一旦問題を解くのを止めて教科書とか参考書を読み物を読むように読んでいた。

そのことをもっと具体的に知りたいと思いながら、そのチャンスがなかったが、ごく最近では和田純夫さんのテキストの説明にしたがってこのことを具体的に教えようとしている。学生は何をしようとしているのか理解が難しいようだが、結局は根本的な問題を説明しようとしているのである。さてどれくらいの学生が理解をしてくれるだろうか。

(2011.12.23付記) 最近のブログでも書いたが、ダイヤモンド社発行の物理学講座で久保亮五さんが書いている冊子に「熱はなぜ温度の高い方から低い方へしか流れないのか」という疑問の解答が出ていると思う。なかなか手に入らない書物であるが、図書館等で見られたらいい。