四元数なんてものはついぞ関心がなかったのだが、昨日触れたCauchy-Lagrangeの恒等式とか不等式との関係において関心が生じてきた。四元数では 1 , i , j , k の4つの元があるから四元数というのだが、このうちの i , j , k がある代数を満たしている。
それがこれらの2乗はー1でこれはまず虚数単位 i と同じ性質でいいとしても、i , j , k の積が例えば i・ j =k といったようにベクトルのベクトル積と同じ性質を満たしている。だから四元数とベクトル積とは何か共通のものをもっているにちがいない。
いま私にわかっていることはそのくらいだが、『現代数学教育辞典』(明治図書)に森毅さんが書いているところでは四元数はベクトルへの橋渡しとなったと書いている。現在では四元数自身は廃れてしまってあまり省みられなくなっているが、それなりの影響を与えたということであろう。どういう風に関係しているのか知りたいと思っている(注)。
それと昨夜に複素数の虚数単位 i ^{2}=ー1となったことを複素数が体をなすことから、導こうとしたのだが、これはできなかった。『数学序説』(培風館)を今朝開けてみたら、この昨夜の考えはちょっと行き過ぎており、2次方程式の解があるようにということで数の範囲を広げてきたと説明があり、Hamiltonたちの試みも紹介されていた。もっとも四元数の導入の説明はなかったが。
虚数単位 i の意味を発見法的に導入した遠山啓の『数学入門』には昔感心したが、これはベルの”Men of Mathmatics”にすでにこのアイディアが書かれていることを知った。遠山は独自に考案したのかもしれないが、ベルという人はなかなか深い理解を数学にしていたことがわかる。これは分岐点の概念についてもそうであったことは自著『数学散歩』(国土社)でも触れた。
また、反数という言葉も遠山の発明かと思っていたが、これもベルの本の中にあるようだ。反数は英語でなんというのだろう(後でわかったが、oppositeという)。ベルの本の訳者は銀林浩さんなので、反数という訳をすっと与えているが、英語ではどういう言葉になっていたのだろう。
(2011.4.24付記) この四元数のブログを書いてから、なんどとなくこのブログに四元数のことを書いてきた。また、四元数についての認識は私としては深まっている。
四元数について書かかれたものとしてはJohn Stillwell (上野健爾・並川幸彦監訳)『数学のあゆみ』下巻(朝倉書店)20章 多元数 の説明がいいと私はいま思っている。
また、「数学・物理通信」(インターネットで検索せよ)に載せている、私の四元数の3回の記事が役立つと思う。このシリーズを、「数学・物理通信」にもう少し書き続けるつもりである。
このシリーズは上記の書とは独立に書かれたが、いま振り返って見るととても似通っている。私自身はこのシリーズを書くことによってようやく上記の『数学のあゆみ』に書いてあることを理解できたのである。
ただし、四元数といえば、現在では空間回転との関係であろうが、これについてはまだ書いていない。インターネットのたくさんのサイトでこのことを述べられているが、まだもう一つ納得ができていない。
(2016.12.6付記) このブログは多分私が四元数のことに言及した、おそらくは最初のブログであろう。この後、何回も四元数について言及している。そして『四元数の発見』(海鳴社)という本まで書いてしまった。いまは四元数について私のまだよくわからない話題を探してはときどき「数学・物理通信」に書いている。
「数学・物理通信」についてはインターネットで検索すればすぐに検索できる。