「うつせみ和尚」のお説教

『うつせみ和尚の日記』二件の事故が元で『(複雑性)PTSD/鬱』になって
闘病、障害当事者として活動している者です。

読まずに死ねるか!(書評)「アウシュヴィッツを生き抜いた心理学者 ヴィクトール・E・フランク『夜と霧』」

2021年01月06日 00時58分56秒 | 読まずに死ねるか!(書籍紹介)
前々から気になっていて「年末の書籍爆買い」で買いました。
今日スタバで読み始めたのですが「遅読派」の私でも3.5時間ほどで
読了いたしました。本編は157頁と短いものです。
やっぱり翻訳がいいと読みやすいものです。
私が引き込まれたのは113頁の「運命-賜物」から終わりまでの約40頁。
著者専門の精神・心理学はもちろん西洋の古典からの引用など
説得力があるものでした。なにより、著者自身があの「アウシュヴィッツ収容所」の生還者であること。
入所から徐々に失われていく人間味。
その中で感じた他の収容者や監視兵の優しさ、人間味。
「どんな運命も私だけが感じるることができること」。

ここから少し本文から抜粋しますが・・・
『~この具体性が、ひとりひとりにたった一度、他に類を見ない人それぞれの
運命をもたらすものだ。だれも、そしてどんな運命も比類しない。どんな状況
も二度と繰り返されない。そしてそれぞれの状況ごとに人間は異なる対応を
迫られる。具体的な状況は、あるときは運命をみずからすすんで切り拓くこと
を求め、あるときは人生を味わいながら真価を発揮する機会を与え、またある
ときは淡々と運命に甘んじることを求める。だがすべての状況はたった一度
ふたつとない現象であり、そのたび問いに対するたったひとつの、ふたつと
ない正しい「答え」だけを受け入れる。そしてその答えは、具体的な状況に
すでに用意されているのだ。
少し長い引用になりましたが、特に赤い太字の箇所は良い状況もまた最悪と
見られがちな状況、私の解釈でいうと「」をも含めた状況/現象も
時には淡々と甘んじなければいけないということかと思います。

さらに抜粋しますと・・・132頁の「苦しむことはなにかを成し遂げること」では
『~私たちにとって、「どれだけでも苦しみ尽くさねばならない」ことはあった。
(原文まま)ものごとを、つまり横溢する苦しみを直視することは避けられなかった。
気持ちが萎え、ときに涙することもあった。だが、涙を恥じることはない。
この涙は、苦しむ勇気をもっていることの証だからだ。しかし、ことことを
わかっている人はごく少なく、号泣したことがあると祈りにふれて告白する時
人は決まってばつが悪そうなのだ。
たとえば、あるとき私がひとりの仲間に、なぜあなたの飢餓浮腫は消えたので
しょうね、と尋ねると、仲間はおどけて打ち明けた。
「そのことで涙が涸れるほど泣いたからですよ・・・」

苦しむことで成し遂げられるもの、苦しみという経験を手にすることができる。
とも換言できるかもしれません。

なるほどなぁ~、と感心も同調もいたしました。今回読ませていただいて
目の前の困難、苦しみを甘受しながら人生を味わっていこうと再確認させて
いただきましたよ。


ん~、この本読まずに死ねるか!!