僕は鉄道という血管を流れる一つの赤血球なのか。外の景色が大きな生命体に感じた。
都心に行くにはクルマより便利だ。電車は運転しなくていいクルマだ。ただ残念なのは公共の交通機関であるということだ。マナーがあり譲歩があり快適さにおいて劣る。
今日はかろうじて座っていくことができた。と思い直角な背もたれにも我慢しようと思った瞬間、老婆が乗り込んできた。
その一瞬、多くのことを考えた。となりに座っているのは中学生くらいの子供だ、その子が譲るべきだ。いやほかの人が譲ろうとしている。まて、その子は目線を浴びている。遠くには空席もあるようだ、そこに座ってもらえばいい。・・・
僕は立った。何らかの結論の結果ではなかった。自分でもよくわからないまま老婆に「どうぞ」と言っていた。
冷静になり我にかえると、どうも合点がいかない。どうしてガキは譲らなかったんだ。しつけの悪い奴だ。だいたい休みに朝から天神に行って何するんだ。・・・
しこたま怒りの渦の中を泳いでいると座ったままのその子が立っている僕に言った。「次の駅で降りますからどうぞ。」
その子も老婆に声をかけようとしていたに違いない。ほんの一瞬僕が速かっただけだったのだ。しかし僕のなかでその子は完全に悪者になっていた。
デジタルの世界はオンとオフだけだ。罪な世界だ。
午後から山に行った。自生する山茶花の北限あたりだそうだ。五枚の花弁がめずらしく写真を撮った。