メキシコの隅っこ

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ユカタンのアシエンダ:手綯いの縄

2006-12-01 02:09:33 | 観光
それでは今日もアシエンダの続きです。

エネケンというのは前にもお見せしたことありますが、
テキーラを作るリュウゼツランと同じ仲間です。
近いうちに植物自体ももう一度お見せしますね。

その葉を切り取り、繊維を取り出し、
縄を綯い、布に編んで、
当時(19世紀半ば)は帆船の帆をはじめとして、
頑丈で貴重なものでした。
「緑の黄金」と呼ばれるほど売れて多額の富を産み出したのは、
昨日もお話したとおり。
もっともその後、ナイロンの台頭ですっかり廃れてしまったわけです。

で、ガイドのおじさんがしきりと主張してましたが、
このアシエンダ「ソトゥート・デ・ペオン」は
唯一、今でもエネケン生産を実際に行っているアシエンダだとか。
他のアシエンダは放置されているか、
ホテルやレストラン、博物館、あるいはマイナーな場合は大学になっているか。

まあ、このアシエンダ、
「エネケン生産で生計を立てている」わけではなさそうですが、
「実際にエネケン生産を続けている」ことは間違いないようです(笑。

ペオン Peon(oにアクセント記号)というのは
アシエンダ時代の下男や労働者、農奴たちのことですが、
当時の写真と同じ格好をした人たちが、ここでも働いています。
      ↓



これはまず最初に見せてもらった、
手動で縄を綯う(なう)工程です。

エネケン繊維をこうやって、針山(?)に叩きつけては引っ張って、
梳いているところ。
オアハカで見た織物も、羊毛を針ブラシで梳いていた、
アレとおんなじですね。
繊維の太さに伴い、針の太さもだいぶ違いますが。

そしてこのおじさんがまた、とっても典型的マヤ人の風貌。
小柄で丸顔、目も丸くて、
昔のマヤ絵に出てくるおじさんそっくりです。
まだまだいるんだなあ、マヤの血を濃く引く人。

さて、こうやって梳いた繊維を、今度は細い縄に綯うところ。



緑色の鉤爪のところに繊維を引っ掛けて、
左の黄色いハンドルをカラカラカラ~♪と回すと、
右のほうにいる人(写真には写ってませんが)が手にした繊維を
少しずつ繰り出していくことで、
写真に見える細い縄が見る見る伸びていきます。
写真は、そうやって作った細い縄を二本つないだところ。
そして、



二本をねじ合わせるようにもう一度黄色いハンドルを回すと、
お店なんかでも見られる二本縒りの縄の出来上がり~。

なんだかあんまり鮮やかで、写真がうまく撮れませんでしたが、
何となくわかってもらえるでしょうか。




これは、その横に置いてあったサンプルです。
向こう側の細いのから順に、
2本縒り、3本縒り、6本、9本、12本、15本と
太くなっていくわけですね。
一緒に写っているのは、解説をしているガイドのおじさんです。



さて、これは手動なので、実際にはどれくらい使っているのかわかりません。
ちょっとした縄がほしいときなんかだと、これで充分ですかね。
でもさらに見せてもらった大掛かりな機械での縄綯いもあるので、
この手動縄綯い器(?)は、私たちが帰るころには
木箱を被せられてお休みしてました。

でも、捻じって縒ってある縄って、捩じれ方が独特で、
そのままではほぐれないようになってるじゃないですか。
それが、こんなハンドルでくるくる~~♪とできるんだ、というのは
何だか私には新鮮な発見でした。

縄を綯うと言えば、子供のころ読んだ斉藤隆介か松谷みよ子の物語で、
足の指に藁をはさんで、両手に唾を吐きながら
掌で揉んで綯っていく、というようなシーンがあり、
掌が真っ赤にすれてしまったり、
縄が均等にならずデコボコだったり、という話を思い出します。
それに比べれば、この手回しハンドルも立派なもんですね。

そう言えば、これ。



アシエンダのお手洗いの窓なんですが。
これもたぶん、古くなった機械のハンドル部分みたいですね。
窓から見える向こうの小屋も、同じ窓になってます。