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『孟子』巻第七離婁章句上 八十四節、八十五節、八十六節

2018-01-04 10:30:14 | 四書解読
八十四節

孟子は言った。
「自分にとっての弊害は、好んで人の師になろうとすることだ。」

孟子曰:「人之患、在好為人師。」

孟子曰く、「人の患いは、好んで人の師と為るに在り。」

<解説>
人に教える器量もないのに、教えたがるのは、己自身の進歩を妨げることになるので、慎むべきであると言うことであろう。

八十五節

孟子の弟子の魯の樂正子が、齊の使者として魯に来ていた子敖が齊に帰るのに随行して齊に行った。そして齊に居る孟子にお目にかかった。すると孟子は言った。
「お前もやはり私に会いに来るか。」
「先生はどうしてそのような事をおっしゃるのですか。」
「お前は、こちらへ来て何日になる。」
「数日でございます。」
「数日も経つのなら、私がそのように言うのも当然ではないか。」
「宿舎が定まっていなかったらでございます。」
「お前は目上の人にお目にかかるのに、そんな礼があると教わったのかね。宿舎が決まってから挨拶に行くものだという礼を。」
「私が間違っておりました。」


樂正子從於子敖之齊。樂正子見孟子。孟子曰、子亦來見我乎。曰、先生何為出此言也。曰、子來幾日矣。曰、昔者。曰、昔者、則我出此言也、不亦宜乎。曰、舍館未定。曰、子聞之也。舍館定、然後求見長者乎。曰、克有罪。

樂正子、子敖に從いて齊に之く。樂正子、孟子に見ゆ。孟子曰く、「子も亦た來たりて我を見るか。」曰く、「先生何為れぞ此の言を出だすや。」曰く、「子來たること幾日ぞ。」曰く、「昔者なり。」曰く、「昔者ならば、則ち我、此の言を出だすも、亦た宜ならずや。」曰く、「舍館未だ定まらざればなり。」曰く、「子、之を聞けりや。舍館定まりて、然る後に長者に見ゆることを求むるか。」曰く、「克、罪有り。」

<語釈>
○「樂正子」、趙注:魯の人樂正克、孟子の弟子なり、齊の右師子敖に從う、子敖、使いして魯に之く、樂正子、之に随い、來たりて齊に之く。○「昔者」、趙注:「昔者」は往なり、數日の閒を謂う。

<解説>
孟子が樂正子に厳しいことを言ったのは、次節とも関係が有るので、次節の解説で詳しく述べたい。

八十六節

孟子は弟子の樂正子に言った。
「お前が子敖に従ってやって来たのは、ただ飲食のためか。私は思ってもいなかった、お前が古の聖人の道を学びながら、それを活かしもしないで、飲食の為だけに行動するとは。」

孟子謂樂正子曰、子之從於子敖來、徒餔啜也。我不意、子學古之道、而以餔啜也。

孟子、樂正子に謂いて曰く、「子之の子敖に從いて來たるは、徒に餔啜するなり。我意わざりき、子、古の道を學びて、而も以て餔啜せんとは。」

<語釈>
○「餔啜」、趙注:學びて其の道を行わず、徒に食飲するのみ、之を餔啜と謂う。

<解説>
前節で孟子は、樂正子がすぐに挨拶に来なかったのを非難したが、その本意はそこに有るのではなく、とかく正道から外れた評判の悪い子敖を匡正することもなく、ただ飲食の為だけに随行してきたことを非難しているのだ。服部宇之吉氏云う、即ち道を以て子敖を匡正する所なく、徒に衣食を目的とするを責むるなり。