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『呂氏春秋』巻第五仲夏紀

2017-06-13 10:16:19 | 四書解読
巻第五 仲夏紀

一 仲夏

一に曰く。仲夏の月。日は東井に在り、昏に亢中し、旦に危中す。其の日は丙丁、其の帝は炎帝、其の神は祝融、其の蟲は羽、其の音は徵、律は蕤(スイ)賓に中る。其の數は七、其の味は苦、其の臭は焦、其の祀は竈、祭るには肺を先にす。小暑至り(小暑について、高注は、夏至の後六月の節としているが、五月紀に六月の節を記すのは不自然であることから、節の小暑でなく、単に夏の始め的な意味だろう)、螳蜋(トウ・ロウ、かまきり)生じ、鶪(ゲキ、高注:伯勞なり)始めて鳴き、反舌(もず)聲無し。天子、明堂の太廟に居り、朱輅に乘り、赤駵(セキ・リュウ、栗毛の馬)を駕し、赤旂を載て、朱衣を衣、赤玉を服び、菽と雞とを食らう。其の器は高にして以て觕(ソ、「粗」に通じ、粗大の意)なり。壯狡(高注:壯狡は多力の士)を養う。是の月や、樂師に命じて、鞀・鞞鼓を修め(「鞀」(トウ)、ふりつづみ、「鞞鼓」(ヘイ・コ)、祭祀用の太鼓)、琴瑟管簫を均え、干戚戈羽を執り(高注:「干」は楯、「戚」は斧、「戈」は戟、長さ六尺六寸、「羽」は以て翿(トウ、かざし)為り)、竽笙壎箎を調え(高注:「竽」は笙の大なる者、竽は三十六簧、笙は十七簧、「壎」(ケン)はつちぶえ、「箎」(チ)は竹製の横笛)、鍾磬(ケイ、石のかね)柷(シュク、木箱の中に木椎をつるし、左右に振って音を出す)敔(ギョ、木で作った虎の背に筋目を刻み、それをこすって音を出す)を飭(ととのえる)えしむ。有司に命じて、民の為に山川百原に祈祀し、大いに帝に雩(ウ、雨乞いの祭)するに、盛樂を用いしむ。乃ち百縣に命じて(高注:百縣は、畿内の百縣の大夫なり)、雩して百辟(君の意)卿士の民に益有りし者を祭祀して、以て穀實を祈らしむ。農は乃ち黍を登む(高注:「登」は進)。是の月や、天子、雛を以て黍を嘗め、羞(高注:「羞じ」は進)むるに含桃(ゆすらうめ)を以てし、先づ寢廟に薦む。民をして藍を刈りて以て染むること無く、炭を燒くこと無く、布を暴すこと無からしむ。門閭は閉づること無く、關市は索むること無からしむ。重囚を挺め(高注:「挺」は緩なり)、其の食を益す。游牝は其の群を別ち(春に放牧していた牝馬は懐妊しているので別にする)、則ち騰駒(発情した馬)を縶ぎ、馬正を班ぐ(高注:「班」は告なり。畢沅云う、馬正は月令は馬政に作る、と。馬に関する政令を告げること)。是の月や、日の長きこと至り、陰陽爭い、死生分かる。君子齋戒し、處るには必ず揜くし(高注:「揜」は深。屋敷の奥に居ること)、身は靜かにして躁ぐこと無く、聲色を止め,進むること或る無く(高注:「進」は御なり。「御」は寝所に侍ること)、滋味を薄くし、和を致すこと無く(高注:「和」は齊和なり。「齊和」は調味の事で、味を求めない事)、嗜慾を退け、心氣を定めんことを欲す。百官は靜かにし、事は刑すること無く(高注:「事無刑」とは、當に精詳にして後に行うべし。善く調べてから実行すること)、以て晏陰の成す所を定む(高注:「晏陰」は、微陰。かすかな陰の気、それがもたらすものを安定させる)。鹿角は解(おちる)ち、蟬は始めて鳴き、半夏生じ、木堇榮く(「半夏」はからすびしゃく、「木堇」はむくげ、共に薬草に用いる、「榮」は“はなさく”と訓ず)。是の月や、火を南方に用うること無かれ。以て高明(高くて見晴らしの良い所)に居る可く、以て眺望を遠くす可く、以て山陵に登る可く、以て臺榭に處る可し(「臺」は土を築いたもの、「榭」は其の上に築いた木造の建物)。仲夏に冬の令を行えば、則ち雹霰(ハク・サン、ひょうとあられ)、穀を傷ない、道路通ぜず、暴兵來たり至る。春の令を行えば、則ち五穀晚く熟し、百螣(トク、いなごの類)時に起り、其の國乃ち饑ゆ。秋の令を行えば、則ち草木零落し、果實早く成り、民、疫に殃いせらる。

二 大樂

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