日本庭園こぼれ話

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遠山記念館の庭=記念館の庭(1)・・・埼玉県(再編)

2021-02-05 | 日本庭園

埼玉県川越市は「小江戸」としての町並みが人気ですが、散策の際に是非、足を延ばしたいのが遠山記念館。

遠山記念館は、川越の隣町、川島町にあり、当地出身の日興證券創立者・遠山元一氏が、幼少時に没落した生家を再興し、苦労した母の住まいとするために建てた邸宅が始まりです。

川越駅からバスで30分程。「牛ヶ谷戸」停留所で下車。水田が広がるのどかな雰囲気の中を、要所に立てられた案内板を頼りに歩くこと15分。やがて、いかにも旧家らしい長い土塀が見えてきて、重厚な長屋門が迎えてくれます。

(上: 長屋門)

 

(上: 遠山記念館の表玄関のたたずまい)

建物は、昭和8年から3年近くをかけ、当時最高の建築技術と、全国各地から集めた銘木を使って竣工したというもので、東棟、中棟、西棟と、それぞれ様式の異なる伝統的日本建築3棟が、渡り廊下で結ばれています。

その後、邸宅の保存と、元一氏が長年にわたって蒐集した美術品を一般に公開することを目的に、敷地内に美術館を併設し、記念館として、昭和45年に開館されました。

収蔵品は、日本と中国の絵画、書跡、陶磁器、染織を中心に、アジアから中近東、中南米、ヨーロッパと、時代も国も種類も実に多彩。古今東西の美術品が、季節のテーマに応じて展示されています

(上: 周囲の雰囲気に調和するモダンな蔵造り風美術館)

続いて邸宅の拝観。邸宅は9,000平方メートル余りという敷地の北側に並列し、南側は広々とした庭園に面しています。

表玄関のある東棟は、豪農の屋敷を彷彿させる、どっしりとした茅葺き屋根の建物。ここから望む庭園は、枯流れのある和風庭園。縁先には、近年復元された水琴窟が興趣を添えています。

(上: どっしりと風格のある東棟)

(上: 東棟の庭は和風)

中棟は書院造り。前面に明るい芝庭がスカッと横たわり、後方では和風の植栽と流政之作の御影石の現代彫刻が調和しています。

(上: 書院造りの中棟)

 

 (中棟から眺めた芝庭と植栽)

西棟は数寄屋風の建築。ここでの庭の眺めの主役は、自然石を組み合わせた井筒と端正な石燈籠のコンビネーション。(下の写真) 

このように、庭園は眺める位置によって、それぞれに趣きを変えながら、風情豊かな姿を見せてくれます。建物内の意匠もまた、派手ではないけれど、気品があり、吟味した材料を使った設えと、職人の確かな仕事ぶりが窺えます。

記念館で過ごした、ゆったりと、気持ちの良いひとときを思い出しました。

 

 

 


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