「いかんいかんいかん このままではいかん」
信長の態度が変われば織田家での自分の立場が悪くなります。
尾張の頃より信長に注目してきた光秀は 諸国を巡り自分を高めることを目指しました。
そして織田家に仕官し やっとここまで這い上がってきたのです。
織田家の家臣のほとんどは 信長を恐れ同時に尊敬しておりました。
その逆鱗に触れれば最後、生きては居られないだろうと思いました。
やっと城持ちの身分になった光秀にとって 織田家での自分への風当たりは 信長の機嫌ひとつにかかっています。。
「何が何でも近江 丹波の領地は守らねばならぬ」
彼には彼を信じてついてくる 可愛い家来が多くおりました。
そして父祖の地 美濃以上に守りたい領地が 今ある近江 山城 丹波でした。
こうなったら 自分の領地を守る為 信長から分捕らねばならぬ。欲の深い信長のこと 家来の切り取った国は どの家来にも与えず全部取り上げてしまうだろう。
やがて信長はこの国を全部自分のものにしてしまうだろう。
従わないものは殺す。人は道具としか思っておらず 神仏さえ恐れない 帝さえ都合が悪ければ配してしまうだろう。
それに引き換え 自分はどうだろう。
明智の家は土岐家の筋 ひいては清和源氏の末流ではないか。
これは家来が主人を倒すのではない。信長が斯波家から奪い取った国を 由緒正しい足利家幕臣が 天に代わって取り戻すのだ。
ただし欲張りでなにかとトラブルの多い足利義昭公ではなく ふさわしい誰かを立てよう。
それが駄目なら自分が征夷大将軍に立てばよい。源氏の末流である自分こそ 信長より源氏の棟梁にふさわしいではないか。この行いは 正しい行いなのだ。
そして朝廷をお守りするのだ。
朝廷をないがしろにする 信長は取り除かねばならない。
そう考えるとあれだけ恐れていた信長が すこしも恐くはなくなっていました。
彼は信長公を倒す夢を持つようになりました。