ゆっくりかえろう

散歩と料理

ブログ中の画像・文章の無断使用を禁じます。

チョイ悪オヤジ養成講座5

2015-12-31 | フィクション

 さっきから小松の腹が グウグウ鳴って まことに喧しい。

「小松、空腹なら軽食でも食べておいで」

「いえ、あの私 お金持ってないんで」小松が情けない顔をしてしょんぼりしている。

専務に聞こえないところで内緒で訳を聞いてみると 食事は社食の1日一食だけ 昼に間に合わなければ 夜まで取り置きしてもらうという ギリギリの生活らしい。

交通費などはカード決済で現金は使わないそうだ。

まるで中世の奴隷のようだ。

「分かった 俺のカードを貸してやるから 三人分のドリンクとお前の分のサンドイッチでも買って来ておいで」

小松の顔がパッと明るくなって 子供のように駆け出した。

これから一緒の時は飯の世話をしてやらねばなるまい。

小松と三人でレースを観ながら 専務とお話した。

小松は相変わらず食べるのに夢中だ。

よほど腹を減らしているのだろう。不憫な身の上だと思う。

 

「専務、どうしてチョイ悪オヤジなんかに興味をもたれたのですか?」

専務は遠いところを見るように身の上話を語り出しました。

「私は大阪の生まれです 若い時 自動車関係の小さな部品工場に就職しました そこが不況で上の子会社に吸収され それを繰り返しながら 段々上へ上へと上がって行きました」

「その頃は私は製造 企画 営業 販売と全部こなしていました そうしなければ工場はやっていけなかったからです」

「そんな私を見て親会社の幹部が目を付けて 上に引っ張り上げました」

「しかも会社費用で大学までいかせてくれました」

「卒業したときは幹部候補生でした」

「それからまた 上へ上へと上がって 今の会社の取締役になりました」

「でも あの頃の大阪時代の方が充実していて 生きる実感がありました」

「友人と酒を飲み 喧嘩したり泣いたり喚いたり それが楽しかったのです」

専務は途端に寂しそうな 悲しそうな何とも言えない顔で下を向きました。

なる程 引退前に やりたかった事をやってみたいのかな? と俺は勝手に解釈した。

 

「じゃあ、次はオヤジ達の溜まり場 立ちのみに行っていっぱいやりましょう」

俺たちは競艇場を後にして 都内に向かった。

帰りは分かりやすいので 小松に運転を代わって貰った。

目的地は上野界隈 ここには近くにウチの代理店があって 車を置いておける。

上野といっても 正確には御徒町だ。

途中 俺は降りて専務の為に安っぽいジャケットを買って来た。

服装ひとつで人の印象はガラッと変わる。

立ちのみには立ちのみらしい出で立ちが必要なのだ。

駅から少し離れた立ちのみに入る。

 「まいど!」

 ここはいちげんでも お馴染みでも 必ず「まいど」という まいどと言えば間違いないと思っているようだ。

言われた方も気分は悪くない。 


たぬきそば

2015-12-31 | ランチ

 これは大阪ではハイカラそばと呼びますが 東京ではたぬきそばです。

大阪のハイカラそばは意味不明ですが 東京のたぬきそばは実に明快で テンカスを天ぷらのタネ抜きと見たてて タネ抜き→たぬきとなかなかお洒落です。

これなら納得出来るのですが テンカスを貧乏くさいという考えから わざわざエビ粉と小麦粉から別作りのあられを作って入れるという荒技に出るお店が多くあります。

これはつまらない見栄えを気にして 本質を失っていると思います。

乾燥エビ粉なんてわざわざ味を落として 見かけを取った結果です。

テンカスを使うからこそ たぬきの語源である「タネ抜き」になるのです。

料理人なら 味を第一に追求するのが筋なのにね。

………という事でこれは関西でいうハイカラそばか 或いはあられそばと呼びましょう。

見かけばかり気にして 味がわからない人には 偽天かすが良いのかも?


チョイ悪オヤジ養成講座4

2015-12-30 | フィクション

「今日は競馬はお休みです あとは競艇か競輪ですけど、競輪場は郊外で遠いです それに初心者向きじゃない」

「お任せします」

「小松 首都高七号線へ向かってくれ」 

「いや、あの七号線と言われても わかんないです」

「今、上を通っているのが六号線だから これに乗れば七号線方面に繋がるよ 七号線を小松川で降りれば 後はナビが教えてくれる」

「華岡さんややこしいから 運転代わって下さいよ」

しょうがない 通い慣れた道だから 俺が運転するか。

チョイオヤジの本領発揮だ。

車は何事も無く 江戸川競艇場についた。

平日なのに この賑わいはなんだ いかに遊び人が多いかだな。 

江戸の昔から この街は遊興でもってたところがある。昔遊郭 今はギャンブル。

国が胴元だもの 一番あこぎなのはお上だ。

広いスタンドに出て レースを眺めていると 気分がすっきりする。

「専務、舟券を買ってみましょう」

「いや、私はこのままここで見てます 華岡さんどうぞ」

「どうしたんですか? チョイ悪オヤジになるんじゃないんですか」

「流石にここは初心者が来る所じゃ無いですね 昼間一所懸命働いているうちの社員にも悪くて」

雰囲気に圧倒されるのも無理は無い 野球場の熱気とはまた違う 一種独特の毒気に当てられたようだ。

「もう少し風に当たっていましょう、レースを観ているだけなら これほど面白いものは無い」

その通り、私もここへはよく来るが 舟券は買わずスタンドや奥で休んでいる。

ここへ来るのは 保険金詐欺や遊び呆けている偽被害者を見つけて 証拠写真を撮る為だ。

何せ俺の仕事は特殊だから。

ギャンブルなんてやってた日には仕事にならない。

元来 俺もこういう場所は性に合わない。  

  

 


鶏キムチ

2015-12-30 | ランチ

 豚キムチならぬ鶏キムチです。

鶏肉は骨付きの唐揚げにする場所をナイフで切り開いて使っています。

 ここは身がしまっていて弾力があり 油も十分ついていて食べでがあります。

身を小型ナイフで骨から外すのに苦労しました。

先に鶏肉を炒めて キムチは火を止めてから絡めるだけにします。

せっかくの乳酸菌を殺してしまっては勿体ないですから。


チョイ悪オヤジ養成講座3

2015-12-29 | フィクション

「やあ、悪いね、こんなところまで」

紳士は名刺を差し出したので こちらも慌てて名刺を出して名刺交換になった。

確かにこの会社の専務取締役吉田と書いてあった。

俺は少し違和感を持った。

普通 受付を通して専務室まで 案内してもらって 初めて会えるものなのにこの軽々しさはどうだ。

本物の専務さんだろうか?

「やあ小松君も来てくれたのか」小松は愛想良く頭を下げた。

小松は既知のようだ。ということは本物の専務か。

「もう私は窓際に追いやられていてね 暇を持て余しているんだよ」「今日はよろしく 華岡君」

仕立ての良いスーツ 品の良い物腰 年齢を感じさせない力強さから 偉い人のオーラを感じ取れる。

小松を知っているのだから 間違いないのか。

人柄も良さそうだし 悪い気も出ていない。

俺たちは挨拶もそこそこに 車に乗り込んだ。

「専務、今日は役職名では具合が悪いので お名前でお呼びしますが よろしいですか?」 

専務はにこやかに頷いた。

「それで今日はどこで何をしましょう」

「ご要望をお聞きしたいのですが」 

「まずは公営ギャンブルを体験したいな」

チョイ悪オヤジ初歩の初歩だ。


豆シチュー

2015-12-29 | ランチ

 トマトビーンズのリベンジ料理です。

とにかく豆料理はお腹いっぱいになるので 鍋にあまりがちです。

チリビーンズの残り物をリベンジしました。

冷凍庫にストックしておいたビーフシチューをチリビーンズに混ぜ込んで、ビーンズシチューを作りました。

 ご飯は珍しいジャスミンライスです。

ジャスミンライスもクセが無く 日本米みたいに普通に食べられて美味しく ピリ辛なのもポイントになります。


非常識

2015-12-28 | デジタル

 非道い話ですけど 大阪四天王寺の中の注意看板です。

人間が口をつける柄杓を犬の口へ持っていくなんていうのは、バチ当たりというものです。

しかもこれをやっているのは 高齢者で有る確率がとても高いです。

私も目撃したことが在ります。

もうやりたい放題ですね。 


タイ米 ジャスミンライス

2015-12-28 | ランチ

 タイ米ジャスミンライスは 現地では高級米です。

ジャスミンといっても香りは米本来の日本米と共通の匂いで 別名香り米といいます。

米は長粒米でインド米よりは短いです。 

 味は粘り気は無いですが インド米よりは親しみやすく、水を多めに炊けば よく膨らんで 日本米っぽく(気のせい?) なります。

今日は湯とり法で炊きました。

 炊くとき塩をひとつまみ入れると 美味しくできます。


チョイ悪オヤジ養成講座2

2015-12-27 | フィクション

 車は滑るように走り出した。今日は失礼が無いようにいつもの社用車ではなく、クリーム色の小型のクラウンだ。

大きすぎないのが 気が利いている。

都内の車庫のどこでも使えるし小回りが効く。

「今日の接待って 相手は誰なの?」

「取引先の車の部品メーカーの専務さんなんですけど 引退前で 最後の思い出にやりたかった事があって それを我々にお願いに来られたそうです」

「チョイ悪オヤジの気分になってみたいって」

「専務さんの社内には該当者が無くウチに頼み込まれた訳です」

「それでウチなら適任がおりますって上層部が推薦したんです」

 まったく人をバカにしている、俺がチョイ悪オヤジなの?

みんなそう思っているのか? 

……………

まっ しょうがないか 当たらずとも遠からずだ。

「チョイ悪オヤジ」 結構じゃないか。

 車は都内某所の大きなビルの地下駐車場に吸い込まれるように入った。

そこで待っていたのは 背の高い痩せ形の初老の紳士だった。  

   誰だろう?

 


ジャスミンライスのチリビーンズカレー

2015-12-27 | ランチ

タイ米のジャスミンライスを使ってマメご飯。

日本米と違って粘らないので、食べやすい。

炊飯器で 普通の水加減で炊けるので簡単です。

香りは炊きたてご飯の香りが日本米より強く、苦手な人は湯炊き法で炊けばいい。

ピリッと辛くしてあるので、マメや野菜のにおいも気にならず 美味しく食べられます。

これだけの量のマメを食べればお腹いっぱいになります。


大阪名物たこやき

2015-12-26 | デジタル

 昔は大阪でもたこ焼きは子供のおやつでした。

時にはおとーさんのお酒のともになり 受験生の夜食になり 大型スーパーのフードコートの一員になりました。

 どこも屋台とかそれに準ずるものでしたが いまは出世して道頓堀で ラーメン店や串カツ店と張り合っております。

私は晴れがましいのは嫌いです、下町の屋台やお好み焼き店でいただく風情を好みます。

 好みは人それぞれですので 一概にこうだとはいえません。


チョイ悪オヤジ養成講座1

2015-12-26 | フィクション

 今月は忙しい。また本社に呼ばれた。

「おはようございます」

「この前の件はありがとう、おかげで私の顔がたちました」

 …いっているわりには顔は笑っていない。これは気を引き締めないと。

「今日は取引先の大事な方の接待をしてもらいます」

接待?そんなものしたことが無い。断ろうと思ったが そんな雰囲気ではない。

「下で小松君が車で待っていますから 彼から詳細を聞くように」

小松? どっちの小松だろうか? 本体?分身? 分身ならもう消滅している筈だ。

暗い駐車場まで降りると、分身の方の小松が歯を見せて笑っていた。

俺は内心ほっとしながらも 「よう、お前まだ生きてたのか」と精一杯の親しみを込めて言った。

生きててくれて とても嬉しい。

「お陰様で こないだの報告書が評価されまして 勿論猫又の所は人間に書き換えましたけど 報告書もですが、華岡さんと唯一組める人物 という評価をいただきました」

瓢箪から駒というべきか。俺は苦笑いした。

「勿論、分身の存在は誰も知らないので 小松氏の手柄になったのですが 結果 華岡さんと組むべき相棒に指定されたのです」

「それで急遽私の命が繋がりました」

よほど俺は小松氏に嫌われているらしい。俺と組むのはいやなのだろう。 

まあ、そのお陰で分身君が生かされているのだから 結果オーライか。 

とりあえず俺たちは車に乗り込んだ。