5月15日といえば、日本のサッカーファンにとって毎年思い出す記念の日。1993年のこの日、国立競技場で川淵チェアマンが開会を宣言し、ヴェルディとマリノスが歴史的な一戦を戦った日だ。私にとっては、それに加えてチューブの春畑道哉さんが作曲した音楽「Jのテーマ」が生涯忘れられないシーンを彩った曲として、今も鮮明に蘇る。
「Jのテーマ」は、その後2年間、CS放送の当時のチャンネル「スポーツ・アイ」がJリーグ全試合放送をしてくれた関係で、試合放送のエンディングに必ず流れ、ちょうど試合の余韻に浸る感覚で聴き続けた。本当に幸福な2年間だったことを、今も昨日のことのように思い出す。
いまとなっては、ヴェルディは「川崎」ではなく「東京」となりJ2を戦っていて、マリノスもフリューゲルスを合併した時の「F」をくっつけたままの、いま一つすっきりしないチームだ。時代は巡った。
あれから丸19年、5月15日、いよいよ20年目に突入した。
日本全体で5月15日というのは、沖縄返還の日なので、今年の当日はニュースでの扱いは案外小さかった。来年、満20年となれば、もっと特集が多くなると思うが・・・。
そんな中で、日テレ、夜のNEWS-ZEROが北澤豪さんとカズ選手の対談を軸にJリーグの20年を振り返ってくれた。
私は、テレビ番組のニュース枠でサッカー関係をどの程度特集してくれるかどうか、結構ウォッチしているが、おそらく、その番組制作陣やメインキャスターと言われる人たちのサッカーに対する思いの強弱に左右されているだろうな、と感じている。日テレ・NEWS-ZEROは、これまでも積極的にサッカー特集を組んでくれたり、サッカー選手をスタジオに招いたりしてくれていると感じている。制作陣かキャスターのどなたかが思い入れてくださっているのか、あるいは番組全体の雰囲気としてサッカー好きなのか、どこからか情報が流れてくればいいなと思っている。
反面、この番組はサッカーにさほど関心を示してくれないな、とはっきり判るのが「NHKニュースウォッチ9」だ。メインキャスターの大越さんが続けているうちは、やむを得まい。ダントツの最下位・東大とはいえ東京六大学のエースピッチャーを張った方だ。野球にばかり肩入れしないでもっとサッカーを、と言うのが土台ムリだろう。
そのぶん、他の番組にお願いするしかないと思っている。
話しが脱線したが、NEWS-ZEROの特集番組、対談のほかに、この20年の歴史を彩った選手たちに「あなたの最も印象に残ったゴールは?」とたずねるコーナーがあった。例えば中村俊輔選手は「ガンバ大阪・エムボマ選手の異次元の身体能力が衝撃だった97年の開幕戦でのゴール」といった具合だったが、最新世代であるロンドン五輪代表世代からは、セレッソ・清武弘嗣選手とレッズ・原口元気選手が登場した。
その原口選手の選んだゴールから、私に一つの着想が生まれた。彼が選んだゴールは「レッズの先輩・永井雄一郎選手が70mをドリブルして決めたゴール」だった。
その時私は、即座にはそのゴールを思い出せなかった。例えばマラドーナの1986年W杯における5人抜きドリブルゴールのように、長距離ドリブルゴールの代表格として繰り返し繰り返し映像が流れているゴールでないと、なかなかパッとそのシーンが出てこないものだ。
しかし、その時流れた永井雄一郎選手のドリブルゴールは確かに圧巻のシーンだった。そして思った。おそらく過去20年の間に、これぐらいのドリブルゴールを決めた選手が、あと何人かいるはずだ。
その中で、どのドリブルゴールが高い評価を与えられるゴールなのか、単に走った距離だけでなく抜いた選手の数とか試合における劇的性とか、さまざまな要素を加味して評価したランキングを常に加除修正していく必要があるという着想が生まれた。そうした役割が、我が「サッカー文化フォーラム&アーカイブス」には求められていると、新たな自覚が芽生えたのだ。
おそらく、これまでもテレビの例えばTBS「スーパーサッカー」やテレ朝「やべっちFC」の特集企画とか、週刊サッカーマガジン、週刊サッカーダイジェストの企画などでもランキング付けされたことがあると思うが、それぞれ単発的に企画だろうし、私たちの記憶に常に刷り込まれているわけではない。
同じようにロングシュートによるゴールもある。流れの中でのロングシュートもあるだろうし、横浜フリューゲルスのエドゥーが決めたフリーキックでの伝説の超ロングシュートもあるだろう。果たしてどれが最高と言えるのか、これから新たなゴールが加わった時、それが何番目に食い込むのか、そういった評価基準は用意しておきたいものだ。
Jリーグだけではなく日本代表の試合も含めると、さまざまな伝説的シーンが20年のあいだに紡ぎ出されてきたことを、つくづく感じる。あぁ、Jリーグ20年は、やはり重みのある歳月だ。
サッカーの記録は、野球に比べて数字の上で残せる要素が少ない。攻撃の選手ですら得点とせいぜいアシストだけ。あとは出場試合数、出場時間数程度の記録でしか表せない。ディフェンス陣に至っては何試合出場、何得点とか記録されても、ほとんど得点数がないわけだから、つまらないことこの上ない。我が「サッカー文化フォーラム&アーカイブス」は、この部分に光をあて、合理的で説得力のある評価方法を生み出し、それに基づいて多くの選手たちの活躍ぶりを数字の上でも表したいと考えている。
さきの永井雄一郎選手のドリブルゴールもそうだ。彼は出場試合数でいったらJ1通算で300試合に達していないから現時点で50位にも満たない。しかし、この一つのゴールだけでも、彼は十分にJリーグの記録に残るに足る選手だと思う。
お読みいただいた方で、何か思い当る案をお持ちの方はぜひお寄せいただきたい。皆さんの智恵を集めて、いい評価方法を作り上げたい。
カズ選手と北澤豪さんの対談も楽しかったが、原口選手の選んだゴールから、そのような着想が生まれたことを記しておきたかった。