「サッカー文化フォーラム」夢追い人のブログ

1993年のJリーグ誕生で芽生えた日本の「サッカー文化」。映像・活字等で記録されている歴史を100年先まで繋ぎ伝えます。

京川舞選手、下を向かないで

2012年05月16日 17時56分10秒 | インポート

「好事魔多し」、このたびの京川舞選手の重傷のニュースに接して、最初に浮かぶのがこの故事だ。

古くは小倉隆史選手、アトランタ五輪出場をめざす五輪代表のエースと期待されながら、最終予選直前の合宿で右足後十字靭帯断裂、次いで小野伸二選手、1999年7月、シドニー五輪アジア予選で左膝靭帯断裂、最近では香川真司選手、2011年1月のアジアカップで負傷、そして今回の京川舞選手。

いずれの選手にも共通していることは、その前1年ぐらい、とにかく所属チームや代表の試合などが続き、満足なオフをとれていなかった点である。本来ならシーズンオフがあって少なくとも1ケ月程度、身体を休める時期があるが、所属チームでも代表チームでも大事な選手は、休ませてもらえない。

京川舞選手、常盤木学園高校を卒業してINAC神戸に入団、即レギュラーメンバーに抜擢され、なでしこジャパンにも選ばれた。前評判どおりの才能を発揮してゴールを量産、まさに順風満帆の春を送っていた。しかし、先の小倉、小野、香川選手などの例が脳裏をかすめる私は「危ないぞ」という気持ちが膨らんでいた。

そして案の定だ。好事魔多し。

しかし、京川舞選手。下を向かないで。決して焦らないで。まだ先は長いから。ロンドン五輪のチャンスを逃したぐらいで悲しまないで。澤選手は代表デビューからW杯優勝まで18年だよ。1年かかっても完全に治るまで無理しないで。完全に治したら、その後のサッカー人生の中で絶対、あなたが世界中にその名を轟かせられる日が来るから。

それを信じなければ、へんに焦ったり無理をしたりして、かえってあなたのサッカー人生がおかしくなるって。ひたすら信じること。そのあとの10何年かの為に、この1年ぐらいの期間は、ひたすら休み、鍛えられるところ(身体と心)を鍛え、よりたくましく、より強くなって帰ってきてください。

そういうあなたを、何万人ものファン、いや何十万人ものファンが待っていることを忘れないでください。

今日は、京川舞選手だけではなく、日本サッカー協会を頂点に、末端のサッカーチームまで、サッカー選手を預かる組織が、宝物の選手にケガをさせない「システム」とサポート体制を作ってもらいたいという点も力説したい。

私は、結局、こういう不幸が相変わらず起きてしまう原因はなんなんだろう、と深く考えざるを得ません。

そうすると思い至るのは、所属チームが変わったり代表チームに呼ばれりすることで、選手一人ひとりのフィジカルコンディションの管理に行き届かない点があるからだということです。

つまり過酷なスケジュールが続いている選手は、それだけで身体に金属疲労が蓄積していることは自明なわけで、何かの拍子にケガしてしまうのは、ある意味当たり前ということを、チームでも協会関係者でも、フィジカル担当あるいはドクターの方はわかっておられると思います。

京川舞選手を預かる立場のフィジカル担当の方、ドクターの方は、おそらく「舞は心配だ」と懸念しておられたと思います。にも拘わらず、絶対にケガをさせないという対策はなされなかった。

もはや結果論で考えるのではなく、大切な選手に絶対ケガをさせない、そのために選手のフィジカルコンディションを、預かる立場のフィジカル担当者とドクターがより総合的に管理するサポート体制を構築して欲しいのです。いわば今回のことを「京川事件」として教訓にし、何か対策に着手して欲しいのです。そして選手が所属チームから代表スケジュールに移る時には、それが協会のフィジカル担当者とドクターのチームに引き継がれるシステムを構築して欲しいのです。

京川選手が負傷した2日後、インターネットに次のような記事が載った。タイトルは「シーズン不敗優勝を達成したユベントス、変貌の理由」

webスポルティーバが配信した記事で、内海浩子さんというライターの報告だ。

以下、必要な部分を抜粋する。

【B降格を境に苦しんできたユベントスと今季のユベントスの大きな違いは、数多くあれど、真っ先に思い浮かぶのがケガ人の少なさだ。(中略)
コンテ(筆者注・ユベントス監督)と共にグラウンドでの体作りに目を光らせたのがフィジコのベルテッリ。
彼はスパレッティがベネチア時代から重用した人材で、美しいサッカーで魅了したゼロトップ・ローマの陰の立役者でもある。一方、ジム担当はフリオ・トウス。ライカールト時代のバルセロナのフィジカルコーチである彼は、特にパワートレーニングには細心の注意を払い、筋弾性を上げるメニューを多く取り入れたという。

その結果、故障者が少ないどころか、チームが大きくコンディションを落とすことすらなかった。優勝のキーマンと言われるピルロがいい例だ。シーズンを通してこれほどコンスタントに出来のいいピルロを見たことがない。ミラン時代は砂上トレーニングで肉離れをするなど、筋肉系のトラブル続きだった彼が今季欠場したのはたったの1試合。理由は出場停止だったからである。】

これは、主として故障になりにくい身体作りに取り組んだ例ではあるが、疲労度合も勘案して休ませるなどのドクターサイドのメニューが加われば盤石だろう。いずれにしてもフィジカルコンディションの管理・サポート体制の重要さがわかるレポートだ。

ぜひ、改革のレポートが届くよう期待したい。

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