本日10月3日(火)、偶然、新聞のテレビ番組欄で見つけた「2002年W杯ブラジル代表の真実」というNHK-BSのドキュメンタリー番組を見ました。エンドロールを見たら2022年制作、イギリスとパラグアイの共同制作のような表示でした。(なぜパラグアイと共同制作なのか不思議でしたが・・)
どうやら「前編」「後編」とあって、今日の放送は「後編」45分でした。冒頭、「前編」のあらすじが流れ、1998年W杯決勝でフランスに敗れ、選手たちも国中も「2位なんてビリと同じ」と打ちひしがれた、という内容のようでした。
番組の作り方が上手いというか、こういう番組を見ると、必ず何度も涙がこぼれそうになり「いいものを見た」という気持ちになります。
それはサッカーというスポーツが、地球上最も多くの人たちが関心を持っているスポーツで、その中でも世界最高峰の舞台であるワールドカップで優勝をめざすことの大変さ、それに突き進んでいる選手たちの思いに触れることができたからだと思います。
ブラジルは、2002年までにすでに4度のワールドカップ優勝を果たし、自他ともに認める世界一のサッカー大国ですが、それ故に、ワールドカップに臨むチームは、計り知れない重圧と戦いながら大会に臨んでいることを思い知らされます。
そのような2002年大会の一部始終を撮影した当時のフィルムに、あれから20年を経て当時を振り返った選手たちのインタビューを重ねて制作していますので、当時は、選手たち自身も気づいていなかったことや、真相とも言えるエピソードが織り交ざり、まさに2022年制作のドキュメンタリーが仕上がっていました。
番組は、準々決勝のイングランド戦、準決勝のトルコ戦、そして決勝のドイツ戦をつぶさに振り返る形で作られていて、イングランド戦のところではオーウェン選手、ベッカム選手の現在の表情を映しながら、多くの証言をしていました。
決勝のドイツ戦では、大会MVPに選出されたGKオリバー・カーン選手も当時を細かく振り返ってくれました。
そしてセレソンの選手たちの中では、主将・カフー選手、ロベルト・カルロス選手、ジュニーニョ・パウリスタ選手、ロナウジーニョ選手、そして御大・ロナウド選手たちが多くのことを語ってくれました。
皆んな、当時の絞りに絞った精悍な身体つきに比べ、ただのおっさん風の風貌でしたし、御大・ロナウド選手にいたっては、どうすれば、こんなに見事に丸々となってしまうのかと思うような太鼓腹を見せてくれました。
ロナウド選手は、ブラジルに凱旋した時の国中の歓喜の様子を見て「自分たちは、これほどの喜びを国中の人たちに贈ることができ、自分もそのご褒美として、大きな名声と富を得られて、本当によかった」と述懐し、主将・カフー選手は「優勝トロフィーを掲げた時、何とも言えない、いままで味わったことのない気持ちになった」と話していました。
しかし、そこに至る道のりが決して平坦なものではないというエピソードもありました。ロナウド選手は、フランス大会決勝を前に、とてつもない重圧に押しつぶされ、身体中が痙攣してしまうという症状に襲われました。その結果、試合では精彩を欠いてしまい、フランスに優勝を許してしまいます。
2002年大会も、同じような重圧がじわじわと迫ってきたことに加え、足のケガが治りきっておらず、そのことを世界中のマスコミが気にしていることを感じていました。
そんな中、ロナウド選手は準決勝・トルコ戦の直前、頭髪を前頭部だけ残してカットした姿で現れたのです。日本人であれば「大五郎カット」とすぐ名付けなれたほどの、あの面白い頭です。
ロナウド選手は、そのようにカットした理由を次のように語りました。「フランス大会の痙攣がトラウマになって、このままでは、また同じ経験をしてしまう。そこで考えたのは、マスコミの注意をそらす何かをしたいということだった。頭を面白いカットにすれば関心がそちらに向く、そう考えたんだ。」
作戦は見事当たったと思います。
ロナウド選手は、日本の劇画で描かれた「子連れ狼」の幼な子・大五郎のことを知識として持っていたのでしょうか? 日本人が見れば、あの頭は完全に「大五郎カット」ですので、日本のマスコミは、かなり話題にしたと思います。ブラジルのマスコミの人たちも「あの頭は日本のマンガに描かれた幼な子に似てるそうだぞ」と話題にしたかも知れません。
それから、涙がこぼれそうになったエピソードに、主将・カフー選手が「オレはロナウドよりうまいか? ノーだ。ロベルト・カルロスよりうまいか? ノーだ。リバウトよりうまいか? ノーだ。けど、サイドバックの仕事をさせたら誰にも負けないよ。みんな、それぞれのところで役目を果たせばいいんだ。それがチームだ」と話していたところや、第三GKで、出場機会は全くノーチャンスだったロジェリオ・セーニ選手が「自分が試合に出ないからと言ってセレソンの挑戦を邪魔するわけにはいかない。正GKのマルコスのためなら何でもする、という気持ちだったよ」と話したことなど、いろいろありましたが、スコラーリ監督がいかにチームマネジメントができていたかを感じさせるものでもありました。
話してくれた選手の名前は忘れたのですが、面白かったのは、決勝のホイッスル前のところでのエピソードです。両チームのペナント交換のあとオフィシャルのフォトセッションの時、その選手は「本来、フォトセッションはスタメンイレブンだけのセッションですが、その時、自分は、スタメンイレブンだけがメンバーなのではないよ、と考え、つい、ベンチからフォトセッションのところに駆け出したんです。そうしたらベンチのメンバー全員が追いかけてきて、セレソンメンバー26人全員が写ったセッション」になりました。」放送の画面には、その26人が写ったフォトが出ました。いかにもブラジルらしいですね。このあたりの自由奔放さもサッカーで頂点を極めるには必要な要素なのかも知れません。
優勝を目指して史上最高との呼び声もあったチームで大会に乗り込んできたイングランドが、ブラジルに敗れた時、オーウェン選手は「彼らのほうが完全に上だと悟ったよ」とサバサバして語り、ベッカム選手が「ブラジル代表には人のいいヤツが多くて敬意を持っているんだ」と語っているのを聞いて、2002年はブラジルの大会であり、日韓大会と言われる大会でブラジル代表の優勝を見れたことは、本当に幸せなことだと感じました。
この2022年制作のドキュメンタリーは録画保存はしていませんが、こうして書き込みの形で伝えられてよかったと思います。
今日(こんにち)日本代表も「ワールドカップ優勝」の可能性を語ることができる時期が来ました。20年前は「いつかそのうち」という夢でしかありませんでした。
かと言って、2011年女子W杯のように、何もかもうまくいって「優勝しちゃった」というわけには行かないと思いますが、日本サッカーの成長と進化(より能力の高い選手たちが、他の国以上に輩出され、W杯での勝ち方ができる指導者に恵まれるといった成長と進化)が順調であれば、あと2回あるいは3回のうちには「夢のワールドカップトロフィーを日本代表主将が掲げる日」が来るかもしれません。
今回のドキュメンタリーは、そういう気持ちで見たせいもあり、結構、現実味のある番組でした。
やはり、2002年大会から20年の歳月は日本サッカーの「成長と進化」を実感できる歳月でもあるんですね。
どうやら「前編」「後編」とあって、今日の放送は「後編」45分でした。冒頭、「前編」のあらすじが流れ、1998年W杯決勝でフランスに敗れ、選手たちも国中も「2位なんてビリと同じ」と打ちひしがれた、という内容のようでした。
番組の作り方が上手いというか、こういう番組を見ると、必ず何度も涙がこぼれそうになり「いいものを見た」という気持ちになります。
それはサッカーというスポーツが、地球上最も多くの人たちが関心を持っているスポーツで、その中でも世界最高峰の舞台であるワールドカップで優勝をめざすことの大変さ、それに突き進んでいる選手たちの思いに触れることができたからだと思います。
ブラジルは、2002年までにすでに4度のワールドカップ優勝を果たし、自他ともに認める世界一のサッカー大国ですが、それ故に、ワールドカップに臨むチームは、計り知れない重圧と戦いながら大会に臨んでいることを思い知らされます。
そのような2002年大会の一部始終を撮影した当時のフィルムに、あれから20年を経て当時を振り返った選手たちのインタビューを重ねて制作していますので、当時は、選手たち自身も気づいていなかったことや、真相とも言えるエピソードが織り交ざり、まさに2022年制作のドキュメンタリーが仕上がっていました。
番組は、準々決勝のイングランド戦、準決勝のトルコ戦、そして決勝のドイツ戦をつぶさに振り返る形で作られていて、イングランド戦のところではオーウェン選手、ベッカム選手の現在の表情を映しながら、多くの証言をしていました。
決勝のドイツ戦では、大会MVPに選出されたGKオリバー・カーン選手も当時を細かく振り返ってくれました。
そしてセレソンの選手たちの中では、主将・カフー選手、ロベルト・カルロス選手、ジュニーニョ・パウリスタ選手、ロナウジーニョ選手、そして御大・ロナウド選手たちが多くのことを語ってくれました。
皆んな、当時の絞りに絞った精悍な身体つきに比べ、ただのおっさん風の風貌でしたし、御大・ロナウド選手にいたっては、どうすれば、こんなに見事に丸々となってしまうのかと思うような太鼓腹を見せてくれました。
ロナウド選手は、ブラジルに凱旋した時の国中の歓喜の様子を見て「自分たちは、これほどの喜びを国中の人たちに贈ることができ、自分もそのご褒美として、大きな名声と富を得られて、本当によかった」と述懐し、主将・カフー選手は「優勝トロフィーを掲げた時、何とも言えない、いままで味わったことのない気持ちになった」と話していました。
しかし、そこに至る道のりが決して平坦なものではないというエピソードもありました。ロナウド選手は、フランス大会決勝を前に、とてつもない重圧に押しつぶされ、身体中が痙攣してしまうという症状に襲われました。その結果、試合では精彩を欠いてしまい、フランスに優勝を許してしまいます。
2002年大会も、同じような重圧がじわじわと迫ってきたことに加え、足のケガが治りきっておらず、そのことを世界中のマスコミが気にしていることを感じていました。
そんな中、ロナウド選手は準決勝・トルコ戦の直前、頭髪を前頭部だけ残してカットした姿で現れたのです。日本人であれば「大五郎カット」とすぐ名付けなれたほどの、あの面白い頭です。
ロナウド選手は、そのようにカットした理由を次のように語りました。「フランス大会の痙攣がトラウマになって、このままでは、また同じ経験をしてしまう。そこで考えたのは、マスコミの注意をそらす何かをしたいということだった。頭を面白いカットにすれば関心がそちらに向く、そう考えたんだ。」
作戦は見事当たったと思います。
ロナウド選手は、日本の劇画で描かれた「子連れ狼」の幼な子・大五郎のことを知識として持っていたのでしょうか? 日本人が見れば、あの頭は完全に「大五郎カット」ですので、日本のマスコミは、かなり話題にしたと思います。ブラジルのマスコミの人たちも「あの頭は日本のマンガに描かれた幼な子に似てるそうだぞ」と話題にしたかも知れません。
それから、涙がこぼれそうになったエピソードに、主将・カフー選手が「オレはロナウドよりうまいか? ノーだ。ロベルト・カルロスよりうまいか? ノーだ。リバウトよりうまいか? ノーだ。けど、サイドバックの仕事をさせたら誰にも負けないよ。みんな、それぞれのところで役目を果たせばいいんだ。それがチームだ」と話していたところや、第三GKで、出場機会は全くノーチャンスだったロジェリオ・セーニ選手が「自分が試合に出ないからと言ってセレソンの挑戦を邪魔するわけにはいかない。正GKのマルコスのためなら何でもする、という気持ちだったよ」と話したことなど、いろいろありましたが、スコラーリ監督がいかにチームマネジメントができていたかを感じさせるものでもありました。
話してくれた選手の名前は忘れたのですが、面白かったのは、決勝のホイッスル前のところでのエピソードです。両チームのペナント交換のあとオフィシャルのフォトセッションの時、その選手は「本来、フォトセッションはスタメンイレブンだけのセッションですが、その時、自分は、スタメンイレブンだけがメンバーなのではないよ、と考え、つい、ベンチからフォトセッションのところに駆け出したんです。そうしたらベンチのメンバー全員が追いかけてきて、セレソンメンバー26人全員が写ったセッション」になりました。」放送の画面には、その26人が写ったフォトが出ました。いかにもブラジルらしいですね。このあたりの自由奔放さもサッカーで頂点を極めるには必要な要素なのかも知れません。
優勝を目指して史上最高との呼び声もあったチームで大会に乗り込んできたイングランドが、ブラジルに敗れた時、オーウェン選手は「彼らのほうが完全に上だと悟ったよ」とサバサバして語り、ベッカム選手が「ブラジル代表には人のいいヤツが多くて敬意を持っているんだ」と語っているのを聞いて、2002年はブラジルの大会であり、日韓大会と言われる大会でブラジル代表の優勝を見れたことは、本当に幸せなことだと感じました。
この2022年制作のドキュメンタリーは録画保存はしていませんが、こうして書き込みの形で伝えられてよかったと思います。
今日(こんにち)日本代表も「ワールドカップ優勝」の可能性を語ることができる時期が来ました。20年前は「いつかそのうち」という夢でしかありませんでした。
かと言って、2011年女子W杯のように、何もかもうまくいって「優勝しちゃった」というわけには行かないと思いますが、日本サッカーの成長と進化(より能力の高い選手たちが、他の国以上に輩出され、W杯での勝ち方ができる指導者に恵まれるといった成長と進化)が順調であれば、あと2回あるいは3回のうちには「夢のワールドカップトロフィーを日本代表主将が掲げる日」が来るかもしれません。
今回のドキュメンタリーは、そういう気持ちで見たせいもあり、結構、現実味のある番組でした。
やはり、2002年大会から20年の歳月は日本サッカーの「成長と進化」を実感できる歳月でもあるんですね。