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人を縛らない。しかし、ルールは徹底する会社

2017年09月03日 | コンサルティング

「好きな日に出勤すればよい。休みの連絡の必要はない。嫌いな作業はやらなくてよい」

これは社員2名、パート9名のエビ工場の「株式会社パプアニューギニア海産」の労務管理です。最近、経営者である武藤北斗氏著の「生きる職場」(イーストプレス)がマスコミ等でたびたび紹介されていますので、私も先日読んでみました。

武藤氏が導入した「フリースケジュール制度」では、前述のように事前に出勤予定を決めたり、欠勤の連絡をしたりすることを禁止しています。さらに、仕事においては嫌いな作業はしなくてもよいとのことです。

一般的には理解しがたい経営手法ですが、この制度の導入は功を奏したそうです。制度の導入当初は退職した人もいたようですが、その後、離職率は低下して、現在9名中7名は当初からのパートとのことです。その結果、熟練者が業務を担うことになり、品質も向上したそうです。

このように、この制度の肝は「従業員を信用する。そして任せる」ことで、武藤氏は就業規則を設けず社員の自主性に任せているのです。

しかし、一方で現場の仕事に関しては、「人の悪口は言わない」「時間は守る」をはじめとしてルールを徹底させています。つまり、労務に関しては自由にするけれど、現場の作業については細かいルールを作り、徹底して守らせるというようにしているわけです。

「自由」と「ルールの徹底」、一見相対しているように思いますが、制度の成功の肝はこの2点にあると感じました。

現場の作業を円滑に進めるためには日々改善が必要ですが、改善したらそれをきちんとルールにする、それを武藤氏は徹底しているのです。そのために現場に行き、従業員の話を聞く時間を惜しみませんし、折に触れて面談時間を設け本音の声を聴いています。そして、それを従業員にフィードバックしているのです。さらに、ルールを決める際もトップダウンではなく、従業員に話し合いをさせて決めさせています。

本の中では、「現場において争いを生まないためには、まずは作業の根本的なところを統一し、曖昧なルールもきちんと線引きするようにした。その際も品質のことを考えながらパートさんの意見を反映した。」とされています。

ルールには、作業には直結しない「包丁の使い方」、「掃除の順番」、「朝の挨拶のタイミング」、「室温が何度になったら冷房をつけるのか」「トイレに行きたくなったら誰に報告するか」などがありますが、曖昧さを排除してルールとして明確にしたとのことです。

このルール、直訳すれば規則という意味です。規則というと、一般的には縛られる窮屈なものというイメージがありますが、一方では誰が作業を行ったとしても、同じ時間で求める品質を保つためにはなくてはならないものだということです。

企業規模にかかわらず、仕事を進めていく上では大なり小なり問題が起きることは常のことです。それを放置するのではなく、問題点を皆で共有して、改善するためのルールを作ることはとても大切なことです。しかし、これは簡単なことではありません。

それを当たり前のように日々行っているのが、このパプアニューギニア海産という会社なのです。

フリースケジュールや嫌いな仕事はやらなくてもよいなど、「人を縛らない会社」というイメージが先行しているパプアニューギニア海産です。一方、同時にこのように決めなければならないことは細かくルールを作っていることが特徴であり、それが成功の土台にあるということなのでしょう。

本の中で武藤氏はこのようにも言っています。「ルールは働きやすい職場を作るための一つの手段に過ぎず、結論ではない」

実に印象的な言葉です。(冒頭の写真はパプアニューギニア海産のHPより)

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