中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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できるけど、やらないだけ

2015年11月29日 | コンサルティング

公開セミナーや企業研修で伝えることができるのは、ほんとうに役に立つことのほんの一部にしかすぎません。それさえも同じことを何度も話し、ディスカッションやロールプレイングをやってもらって、ようやく伝わるかどうかというところです。

研修講師の中には「腹に落ちる」という言い方をする人がいます。講師が伝えた内容を受講者が理解した、納得したという意味です。「腹に落ちる」ことで受講者は満足し、受講後のアンケートの評価点も高くなります。

内容にもよりますが、5点満点で平均4.3以上なら、受講者にとっても講師にとっても、十分満足できる結果であると言えます。ただし、受講者が少なくとも20名以上でないと、アンケートとしての信頼性は低いと考えた方が良いでしょう。

さて、セミナーや研修で「理解した」受講者はその後どうするのでしょう。学んだことを職場で実行するのでしょうか。

残念ながら、その可能性は極めて低いのです。時間を使って学んだことは消えてしまい、後に残るのは「面白かった」というぼんやりとした記憶だけです。

せっかく学んだ知識やスキルは、職場で使わなければ無駄になります。それは、クッキングスクールで習った料理を、家に帰って作らないのと同じことです。それでは料理を習いに行った意味がありませんよね。

自分が身に付けた知識が役に立つとわかっていても、職場でそれを実践することは非常にむずかしいのです。時間がない、今はそのタイミングじゃない、面倒くさいといった「自分への言い訳」が次々と現れるからです。

そして、セミナーや研修で貰ってきた資料を引き出しの隅に押し込んで、「できるけど、やらないだけさ・・・」とつぶやきます。

ほんとうに良い講師は受講者がそうならないよう、多少嫌われても、しつこいくらい「必ず職場で実践してください」と言い続けます。

良い講師の条件は、受講者を楽しませることではありません。手を変え品を変え、なんとか実践してもらうために講義の中であらゆる努力を続けることです。アンケートの評価点が高いことだけを自慢する講師は二流以下です。

私たちはセミナーや研修の最後に、受講者こう言います。

「『できるけどやらないだけだ』と言うのは、『できない』ということを別の表現で言っているに過ぎません。」※

アンケートの点数はちょっと下がってしまうかもしれませんけれど。

(人材育成社)

※ R・P・ファインマンの言葉です。「ご冗談でしょう、ファインマンさん(岩波現代文庫) 」をご一読ください。


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