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「熟練の技」は簡単には手に入らない

2014年11月19日 | コンサルティング

「手触りで、たった一枚の違いがわかるのですか?」

「はい。信金に入ってもう30年になりますが、若手の時には外回りをしていて、毎日お客様の前で数えていましたから。徐々に手で触わればわかるようになっていきました」

先日、ある信用金庫の窓口でまとまった金額を現金で受け取る機会があったのですが、その際お札100枚を一束にして、それを二束受け取ることになったのです。

私の目の前で職員の方が、まず全部のお札をざっと2つの束に分け、それぞれを手触りで厚さをはかったあと、片方の束から2枚を抜いてもう一方の束に移し、その後再び1枚を元の束に戻しました。そして双方の束の紙幣の勘定したところ、何と一枚の狂いもなく、ぴったり100枚でした。私は思わず「凄い!」と一言叫んでしまいました。

以前、金融機関に勤務している友人から、勤めてすぐに紙幣の勘定の練習をすることや、お札を数える方法は「札勘」と呼ぶこと、1枚1枚を目で確認できるということは聞いていましたが、手触りによる技?については聞いたことがなかったので、まさに「熟練の技」を見た思いがしました。

調べてみると一束の厚さは1センチ、そうすると1枚厚さはわずか0.1mmです。0.1mmの違いが手触りでつかめるとは、実に見事であり、これまでの長いキャリアのなせる技、時間を積み重ねた結果磨かれた技術なのだと思いました。

最近では何か新しく行おうとすると、いわゆるノウハウ本やインターネットなどで そのやり方やコツなどを簡単に手に入れることができるようになっているようです。そして、いわば「付け焼刃」であってもある程度の結果ならば簡単に出せてしまう、ある意味では便利な時代になったと言えるのかもしれません。

しかし、そうした「知識」は簡単に手に入れることができても それを本当に自分のものにしてきちんと使いこなせるようになるまでには、やはり相当程度の時間や自身の努力が必要になるものだと思います。

そして、そうした経験を一つずつ積み重ね、自身がスキルアップして成長していくという過程が抜けてしまっては、そこで得られる技術は本当の意味で手に付いたものにはならないような気がします。

その意味でも、「熟練の技」は相当の努力とキャリアを経なければ決して身に付けることはできないものだと感じました。

企業において「人を育てる」ことも同じなのではないでしょうか。仮に単に上辺の知識だけを教えて一時的にある程度の結果が出せても、やがてそれでは対応できなくなってしまうことは明らかだと思うのです。

もちろん、それぞれの企業の置かれている状況は千差万別でしょうが、人材を育てるためには、じっくりと時間をかけてキャリアを積ませていくという心積りが大切です。新人にも即戦力になって欲しいと言う企業担当者がいらっしゃいますが、それは乱暴ことだと改めて思ったのでした。

(人材育成社)


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