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営業に雑談力は「必須」?

2016年09月18日 | コンサルティング

営業に向いているのは「明るくておしゃべりが得意な人物」というのが世間一般の認識のようです。営業パーソンの中には、初対面のお客さんともすぐに打ち解けて、商談をスムーズに進めることができる人たちがいます。

一方、お客さんとの話がはずます、気まずい雰囲気の中でなんとか商談を続ける人たちもいます。どちらかと言えば消極的で、人と話すのが苦手な人たちです。以前、私がコミュニケーションスキル研修を行った外資系測定器メーカーの営業担当者Nさんもその1人でした。

Nさんは20代後半で、背も高くスポーツマンタイプの好青年です。大学院で電子工学を専攻し、就職して3年目でした。入社時の希望はSE(セールス・エンジニア)部でしたが、配属されたのは営業部でした。

研修の中盤、10分間の休憩に入った時のことです。Nさんが私のところに来て、こう質問をしました。

「セールストークが苦手で困っています。どうすれば上手くなりますか?」
「そうですか。商談のプロセスの中でどこが一番苦手ですか?」
「初回面談です。いつも、初めて会う担当者と話がはずまなくて・・・」
「話をはずませる方法を知りたいのですか?」
「そうです。雑談のしかたとか、そういったやつです。」
「なるほど、雑談力ってやつですね。」
「雑談に関する本を読んで試してみたのですが、上手くいきませんでした。」
「でしょうね。雑談テクニックは、法人営業ではほとんど役に立ちませんから。」
「そうなんですか!なぜ役に立たないんですか?」
「法人のお客様の場合、商品を買うのは個人的な行為ではないからです。」
「でも、話が盛り上がらないままでは、商談がスムーズに進みません。」
「盛り上げる必要はありません。Nさんの商談がスムーズに進まないのは、無理に盛り上げようとするからです。」
「しかし、気まずい雰囲気をなんとかしないと話が進まなくて・・・」
「ところで、Nさんは自社製品が好きですか?」
「え? もちろんです。大学の研究室で使っていて、良い製品だなって思って、それでこの会社に就職したようなものです。」
「それは素晴らしい!ではNさん自身、お客さんだったんですね。」
「はい、そうです。」
「では、ユーザーの立場で自社製品の良さを十分アピールできますね。」
「そうなんですが、商談では一方的に売り込みをしてはダメだと先輩から教わりました。」
「Nさんの場合は別です。ただし、自社製品を愛しているユーザーとして売り込んでください。」
「それならいくらでもできますが・・・」
「それは良かった。だまされたと思って実践してみてください。」

休憩時間が終わったので、このやり取りもここまででした。

翌年の同じ研修で、人事部の担当者にNさんのことを聞いてみました。Nさんの営業成績は、去年から比べるとかなり上がったとのことでした。雑談力を身に付けるために費やしていた時間と努力を、自社製品につぎ込んだのですから当然です。

ある研修会社のホームページにはこう書いてありました。

「雑談力とは、相手との距離を縮め、信頼関係を築く力です。お客様からの評価が高まり、営業成績も伸びていきます。営業担当者にとって必須のスキルです。」

確かにそうかもしれませんが、お客様が評価するのは、雑多な知識やおもしろいお話ではありません。

雑談力は「必須」ではなく「おまけ」なのです。

(人材育成社)

 


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