ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

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全国最低 人口10万人当たり医師の数

2014年07月13日 17時41分23秒 | 医学


埼玉県には全国最高のものもあるが、最低のものもある。

非常に気にかかるのは、人口10万人当たりの医師の数が全国最低であるという事実である。それが今年に始まったことではなく、1984年末から連続して全国最下位だというから驚く。

厚生労働省は1954年以来、2年に一度、「医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果を発表する。18年末の埼玉県の医師の数は1万2443人。全国最下位で、10万人当たり169.8人だった。

18年までの10年間で2489人増え、増加率は25.0%と全国でトップだったにもかかわらずである。

首都圏の医師数が少ないのは、医師の卵が魅力のある東京の病院に惹かれてしまい、周辺県に勤務せず、東京に定着してしまうからである。東京都周辺の各県は総じて少ない。

この医師不足が県民の生活にどれほど影響を与えているか、119番・救急への対応状況をみるとよく分かる。

典型的な例は、13年1月の午前零時前、久喜市で一人暮らしの老人が「呼吸が苦しい」と119番した。救急車はまもなく来たのに、市内の4つの病院を手初めに、さいたま市、春日部市、さらに県を越えて茨城県古河市などを含め14の市町の25の病院から36回にわたって拒否された。

翌午前2時前2度目の要請に応えて、茨城県境市の病院がOKした。病院に着いたのは通報から約3時間後の午前2時15分。すでに心肺停止状態で、死亡を確認するだけだった。

拒否の理由は「処置困難(人員や設備がない)」16件、「ベッド満床」7件、「他の患者治療中」5件、「専門医不在」4件、「その他」4件だった。.拒否というより「受け入れ困難」と言ったほうがいい。

医師だけでなく、人口10万人当たりの救急用のベッドの数も、本県は全国の7割しかないという数字もある。

本県は、高齢化のスピードが今や全国で最も速くなっている。

県が実施した県民世論調査では、県民の要望は第1位が「高齢者福祉の充実」、第2位が「医療体制の整備」となっている。

無医村とは、辺地の問題というのがこれまでの常識だった。それが首都の隣の県で、実質的な医療の空洞化が進行している事実を直視する必要がありそうだ。

県は医師確保のため、10年から奨学金制度を設け、医師になった後、最低9年間、県内の医師不足地域の医療機関か、産婦人科や小児科として勤務すれば、返済を免除される仕組みになっている。

しかし、医師免許を取得した後、「初期研修医」から専門知識を深める「後期研修医」に移行する際に約5割の医師が県外に流出するのが現実で、この流出に歯止めをかけるかが課題になっている。