槍見河原では素晴らしい槍のピークを見る事ができ、感動であった。 時期外れでも来て見れば、それなりに得るものは有るものだと、つくづく感じた。 安定した時期の登山は高山植物などを見る事ができ、それはそれでまた素晴らしいものである。
迫力あるピークを脳裏に焼付け、カメラに収め、槍見河原を11時半に出発した。 常念岳(2,857m)から流れくる一の俣谷の橋を11時48分通過。 大天井岳<おてんしょうだけ>(2,922m)から流れくる二の俣谷の橋を12時に通過した。 段々、槍沢の深みに入り込み、左手の横尾尾根が覆いかぶさる様な迫力で迫ってくる。 横尾まで川幅が広かった梓川も涸沢からの横尾谷と槍ヶ岳からの槍沢と分岐すると一気に渓谷に変わる。
その渓谷沿いを徐々に高度を上げながら前進、日陰の登高となり休むと汗が冷たい。 槍沢ロッジ到着12時半。 連休明けの11月3日(月)で今年の営業は終了の為、小屋閉めの準備がされていた。 時間的に見ると、まだまだ行けそうであったが、地図上の槍ヶ岳山荘まで4時間半は夏山での登高時間であり、既に雪をかぶり、益々斜度を増す峰を目指すのは危険と判断し、今夜は槍沢ロッジにお世話になる事とした。
若い時は地図の時間と競うように歩いたが、今は趣味を生かしながら歩くようにしているので、中途半端な時間にロッジに着いてしまった。 槍沢の左岸に建つロッジは右岸に聳える横尾尾根の日陰となり、昼過ぎと言えどもジッとしていると寒い。 周りの雪も来年まで解ける事はないだろう。 宿泊者はまだ私達2人。ジッとしていても寒いのでババ平まで散歩に行く事にした。 何回も歩いている道なので、とても懐かしかった。
40分程でババ平に着いた。 北側に西岳(2,758m)から槍ヶ岳(3,180m)に連なる東鎌尾根がそびえ、そこに日差しが当たり、雲一つないコバルトブルーの空と雪をかぶった東鎌尾根の迫力に釘付けとなった。
久し振りのインパクトある感動でした。
槍ヶ岳に登頂できた訳では無いが、満足感一杯で槍沢ロッジに戻った。14時半。 夕食の17時までは、まだ時間があるので部屋で横になっていた。 少しずつ宿泊者が増え、賑やかになりホッとした。 夕食時には10名程の山屋さんと一緒になった。小屋の中ではラジウスを使用してはいけないと言われ、暖かい物を口に出来なかったので、この時とばかりに暖かいお茶や御味噌汁を充分に頂いた。
単独登山の方々は、食後すぐに部屋に戻られたが自分達と、もう1グループの2名の方とストーブを囲んで山の話に花を咲かせていたら、寒そうに女性2名の方がストーブのそばに見えられ、それからというもの椅子を出し6人で消灯の8時半までどちらから来たとか、明日の予定とか、今までに登った山の話とか、色々な話が聞け予想外の楽しいひと時を過ごす事が出来ました。 同じ趣味を持つ仲間とは話しが弾むものです。
女性2名の方は素泊まりで外で自炊をされていたと聞きビックリ 寒い筈です。 もう1グループの男性の方は時折、外に行き「イヤ~ッ星が綺麗だ。」・「外、マイナス1度」 何て言うものだから、誰も見に行く人は居なかった。 ロッジの対応は、あまり良くなかったけど、楽しい方々とご一緒出来た事が何よりでした。
小屋では、ぐっすり眠れない事が多いのに、今回は寒いと思いながら休み気づいたら朝だった。 朝食5時半。 朝食が全部食べられる事が体調の良し悪しと判断するが御飯2膳、味噌汁2杯と良好で安心した。昨日のストーブ仲間は2グループとも、既に出発されていた。 急がねば ロッジ6時40出発。 天気は昨日に続き良好で、防寒を万全にして後を追った。 ババ平通過7時25分。その間、雪の上に残された沢山の動物の足跡をビデオに収めていたので時間をオーバーした。
昨日散歩した同じ道でも今日は午前、ガラッと違った回りの景色に心が弾んだ。
ロッジから休まず登り続け9時。天狗原分岐点と坊主の岩屋の中間辺りだろうか 標高2,555mまで登った所で稜線の天候が急変、稜線からの突風が巻き込み雪煙が上がり、顔に当たるのが痛かった。
顔を覆うものも無く更に高度を上げて凍傷や低体温症にでもなったら大変と思い、登高を断念下山する事とした。 もう1泊する予定であれば挑戦は可能であったが、今日中に上高地まで戻るには、ある程度の体力的余力も必要であった。
高度を下げてきたら、天気はまた素晴らしい秋晴れでハイキング気分になれた。 横尾山荘到着13時。ここでは暖かいおでんでノンビリ昼食とした。 その時にロッジで一緒であった顔馴染みの男性山屋さん等と再会、話をしたらその方々も皆さん登頂されなかったようであった。同様の判断をされたようである。 女性2名の方は関西方面から見えられたようで、新穂高温泉へ下山した方が便利との事で頑張って稜線を越えられたようだ。女性の根性に敬服です。