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VALERIE AND A HER WEEK OF WONDER
1969チェコスロヴァキア
監督:ヤロミール・イレシュ
脚本:ヤロミール・イレシュ
音楽:ヤン・クルサーク
出演:ヤロスラバ・シャレロバ、ヘレナ・アニェゾバ
知人に勧められ全く予備知識なしの衝動買い鑑賞。
しかしすごい邦題をつけたもんだな(笑)
チェコ産少女幻想潭。
初潮をむかえた少女ヴァレリエが出会う不思議な出来事たち。
旅芸人の一座とともに村にやってくる謎の司祭。
笛吹きのやさ男
老いを嘆きヴァンパイアになる老婆
ヴァレリエに迫るエロ神父
・・・あらら?
比べる必然性は何もないが、「小さな悪の華」と比べると、こちらはずっと安心してみることのできるエロティックゴシックファンタジー(エロゴス?笑)タッチとしてはたとえば『まぼろしの市街戦』からユーモラスな部分を少し除いてエッチとヴァンパイア要素を注入したような感じではないかな。(って全然別ものでは?)
ヨーロッパ辺縁臭にあふれた幻想感とチープな画面の肌触り、そしてなにより音楽がヨーロッパのものだなあ。いいなあ。
さして中心的なストーリーで押す映画ではなく、異形の父親、若さを求める老いた女性、はなればなれだった兄との近親相姦的出会い、といった関係性のなかに、初潮を向かえる時期の少女ヴァレリエが、その芽生え始めた色気と無垢の狭間で世界を再発見していく様が、吸血鬼と化した父親と祖母によりグロテスクに味付けされて静謐に展開していく。
ヴァレリエのエロ度がなかなかよい。服も慎重に選んであると見え、チラリズム的でしかし清楚な薄着系だ(なんだそりゃ?)。途中でお色直しまでしているし、ここぞというところで小さい胸がさらりとあらわになる。祖母と関係があったらしい神父さんがトチ狂ってヴァレリエに迫るのも無理はない。(この神父さんの迫り方が妙にホモっぽくて気色悪いのがまたすごい)
一方このエロ度に幻惑されず、根源的つながりを求めて歩み寄るのが、若い男(名前忘れちまったよ)。男はヴァレリエを守るものとして真珠?の耳飾を彼女に渡す。この耳飾がヴァレリエをめぐる大人のぐちょぐちょな影響から身を守ってくれるわけだが、同時にヴァレリエにとって男は慕い守るべき存在になっていく。
そう。彼はけっこう情けないヤツなのだ。彼は謎の司祭の下僕のように使われていて、なんだかしらないが噴水にくくりつけられたり川中にしばりつけあれたりして虐げられている。そのたびにかわいいヴァレリエに助けられ、なんだかシスコンのような気持ちを抱く。
と思ったら、なんと、司祭は実は彼の父親であり、かつヴァレリエの父親でもあった。エロでない心からのつながりとは実は血のつながりが呼ぶものだったのか?
ここで、愛し合う二人は実は兄妹だったのか!ご~ん!!と一気に悩み盛り上げるのがメロドラマの定石だろうが、この映画はメロドラマではないので、近親相姦的思慕もものともせず、むしろ怪しさを増幅するエッセンスのひとつとしてしみわたる。
なわけで、これは鬱屈しかつどこかなつかしい異国白日夢として、意識/無意識をさらけだしつつひとり楽しむべき映画であったろう。
****
先に書いたとおりヤン・クルサークによる音楽がよい。ライトモチーフ的にテーマが繰り返されるが、繰り返しに耐えるコード進行とメロディで浸れる。クルサークは参加作品は少ないながらシュヴァンクマイエルの『アッシャー家の崩壊』、ヒティロヴァ『天井』で音楽をやっているようで、チェコアヴァンギャルド中堅どころに使われたという感じなのでしょうか。
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