Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「ひなぎく」ヴェラ・ヒティロヴァ

2008-03-01 03:50:51 | cinema

ひなぎく


Sedmikrasky
1966チェコ・スロバキア
監督:ヴェラ・ヒティロヴァー
原案:ヴェラ・ヒティロヴァー、パヴェル・ユラーチェク
脚本:ヴェラ・ヒティロヴァー、エステル・クルンバホヴァー
撮影:ヤロスラフ・クチェラ
音楽:イジー・シュスト、イジー・シュルトゥル
出演:イヴァナ・カルバノヴァー、イトカ・チェルホヴァー他


ながらく入手不可能?であった「ひなぎく」がDVD再発なので、
つい買ってしまう。
なぜかAmazonではヒットしないが・・・

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「60年代おんなのこ映画決定版!」というふれこみでキッチュなパッケージのDVD。
「女の子映画」というくくりには、まあ明らかに販売戦略的な響きがあってちょっと違和感を覚えつつ、でもな~あながち間違ってはいないのかもしれないな~と思いながら観る。

若い人が、世の中のジョーシキをぶちこわしてハチャメチャにやりたい放題やって、でも結局自分で袋小路に飛び込んで行く、みたいな物語は世にたくさんあって、その感覚は、反体制、実験、ポップという世界的な(というか欧米的な)60年代のアートの雰囲気にしっかり結びついている。

そういう反乱分子を、男女ペアとかでなく女の子二人組に設定したのは、やっぱ非常にりっぱなことで、秩序撹乱の先鋒は女の子が担うのだ~という感覚は、いまでこそ自明の理のようであるけれども、60年代のチェコでこれをやったというのはやっぱりすごいことなのかしらん?

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という武器としての女の子映画というパワフルな枠組みで捉えるのもそれなりに正解だな~と思うけれども、ワタシのこの映画に感じたところは、むしろシュルレアリスト作家的な手触りであるよ。

モノクロ・セピア・赤・青とめまぐるしく変わるモノトーン画面や色ズレ、はさみでちょん切られる画面、字幕による奇妙なメッセージ。シャンデリアから落ちたと思ったらいきなり水中にジャンプしてしまう荒唐無稽は、なんだかマックス・エルンストのコラージュをみるような気分にさせられる。破壊行為が性欲と食欲を基調に行われるというのも、なんだか精神分析とかを背景とした20年代文化の香りがしないでもない。

それにハイライトのパーティ会場での荒れ果てた食物たちの超アップによる一瞬の連続フラッシュバックは、シュヴァンクマイエル作品のタッチを想起させる。チェコのシュルレアリスム独特の感覚。女の子のもつ撹乱パワーは、実はこのシュルレアリスムの要請から動員されたものだ思うのがよいのではないかと。

もちろん最後に出る観客に向けられたメッセージは、これまたシュルな感覚を持ちながらも、映画を観終えた者にはとても直裁的なものに見える。69年から7年間にわたる活動停止をチェコ政府から強いられたというのもむべなるかな。

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『ひなぎく』の評価が異様に高いので、これを気に他のヒティロヴァ作品もソフト化されないかなと期待する。
たとえば『楽園の果実』とか・・

『ひなぎく』がたくさん売れればそれも可能だろう。
なわけでみんな買いましょう!!

ちなみにワタシは黒っぽい服の女の子(妹?)のほうが好みですた。




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