Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「インランド・エンパイア」デヴィッド・リンチ

2007-07-25 14:01:37 | cinema
インランド・エンパイア

INLAND EMPIRE
2006アメリカ/ポーランド/フランス
監督:デヴィッド・リンチ
製作:デヴィッド・リンチ、メアリー・スウィーニー
脚本:デヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ハリー・ディーン・スタントン 、ジャスティン・セロー、カロリーナ・グルシュカ、スコット・コフィ、グレイス・ザブリスキー、ローラ・ハリング
声の出演: ナオミ・ワッツ


いや、観ましたよ~~!!
今年最大の期待作。「わたしも、世界も、乱れていく。」
いいですね~乱れましょう。

これはなんというか、今までのリンチの作品にあった緊張の極端な起伏のようなものはちょっと鳴りをひそめて、終わりのない霧の中の回廊をひたすら延々とまよいさまよい歩くような、そんなどこまでも不安で宙づりなリンチでありました。

なので、ブルー・ヴェルヴェット以降のリンチが好きな人にはちょっと物足りないかもしれません。パンチがないのです。「イレイザーヘッド」からベイビーを抜いたものを、パラレル世界に展開したような感じ?

でも私はこの霧の中のはてしない時空間スリップが大好きです。



この感覚、どこかで似たものを体験している!!という記憶のうずきがあるんですが、それがなんだったのかどうしても思い出せないでいます。
う~~ん、、う~~~~ん、、、、なんだろうこの感じは???

なんというか、バッハにおける「フーガの技法」?、ディックにおける「ヴァリス」?、YESにおける「錯乱の扉」?、グリーナウェイにおける「プロスペローの本」?
・・・なにか違うけれど、そんなような位置づけに思えました。・・・


ワタシ、「インランド・エンパイア」を支持します!
でもって、もう一度観にいきます!!

どうやらあの3人はナオミとコフィとローラだな!とか細かい所が山ほどきになるけれども、
今はひたすら浸るです!!


****

ところでYOU TUBEで話題になっていた牛とはこれのことかなあ??





好き度:そりゃもう


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「街のあかり」アキ・カウリスマキ

2007-07-25 03:58:27 | cinema
街のあかり [DVD]

アミューズソフトエンタテインメント

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街のあかり

LAITAKAUPUNGIN VALOT
2006フィンランド/ドイツ/フランス
監督・制作・脚本・編集:アキ・カウリスマキ
出演:ヤンネ・フーティアイネン、マリア・ヤンヴェンヘルミ、マリア・ヘイスカネン、イルッカ・コイヴラ、カティ・オウティネン


おもしろかった。

「浮き雲」「過去のない男」に続く敗者三部作のラストということです。
「浮き雲」は見ていないのですが、「過去のない男」に比べると、主人公の生きる力の発露という点でかなり違う人間像を描いていたと思います。

これは「街のあかり」のテーマが「孤独」であるということに由来する違いで、生きる力を孤独がどのように苛んでいくのかということが、かなり控えめな通低音になっているからだと思います。苛まれちゃってるので生命力が衰えてる。


コイスティネンはデパートの警備員ですが、もともと社交的な性格ではなく、上司からも同僚からもなんとなく疎まれている。それが孤独であるが故にそうなったのか、そういう性格だから孤独になっていったのか。その両方のような気がしますが。

その孤立感を鋭く見抜く悪い奴がいて、コイスティネンはさんざんな目にあうのですが、このプロットはなんとなくファスビンダーの「自由の代償」などに通じるものがあります。ただコイスティネンはファスビンダーの主人公とは違って、自分の境遇や自分を陥れたものの正体を理解しています。その理解がこの作品のひそかな希望の細い糸となって全編をかろうじてつらぬいていて、とうとう絶望の淵に至る最後にこそ孤独からの解放の糸口をつかむという、感動的薄明につながっています。

主人公にあからさまな感情移入を拒むような作りは、この生命力の低下と、希望の糸の細さを表現する方法だったのだと思いました。
号泣ではなく、心の奥の方でくくっと涙する、そんな作品。
そういう感じは私は結構好きです。

****

ヘルシンキの街を、決して風光明媚に撮ることがない。徹底して魅力のない景色・・工事現場とか港のハズレの荒れ地とか夜のデパートの周りとか・・。
よくみると結構色に溢れていて、おそらくは入念な色彩設計がなされているにもかかわらず非常にくすんだ空気をだしています。いい感じです。
「かもめ食堂」であれだけ透明な空気感を持っていた街とは思えませんね。

カウリスマキはほとんど見たことがありませんが、美男美女が出てこないところが好きです。

それから、この作品にも魅力的なロックバンドが出てきます。MELROSEというバンドなのでしょうか。実にかっこいいです。ちょっとダサめなところがかっこいいです。

音楽と言えば、オープニングの曲はカルロス・ガルデル「ヴォルヴェール」。泣けますね~

後は・・・カウティネンと悪女ミルヤの会話なんか、目線が小津的でありましたね~
それからその悪女のミルヤが、悪者たちの部屋でなぜか掃除機をかけているところとか、妙にわびしくて笑えましたね。

そうそう、ワンコ。カウリスマキ映画ではかなり由緒正しき血統のワンコのようで、逆に犬の寿命の短さというのを感じてしまいましたね~ドッグイヤー。

原題は「街のはずれのあかり」という意味があるようで、ああ、なるほどな~

最近ちょっと外し気味の映画鑑賞だったので、口直しによいものが観れました。
8月にまたカウリスマキ回顧上映があるようなので、出来たら行きたいな。



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