漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「失シツ」 <うしなう>

2016年10月15日 | 漢字の音符
 シツ・シチ・イツ・うしなう  大部         

解字 篆文は、「手+乙オツ・イツ(骨べら)」 の会意形声。乙は十干(甲・乙・丙・丁など10字からなる順序を表す字)の第二位に仮借カシャ(当て字)されているが、実際は骨べらと推定されている。失は手から骨べらが滑り落ちて、手にあったものを「うしなう」こと。転じて、忘れる・誤る・その場を去る意ともなる。現代字は失に変化した。
意味 (1)うしなう(失う)。なくす(失くす)。「失望シツボウ」「紛失フンシツ」 (2)忘れる。「失念シツネン」「忘失ボウシツ」 (3)誤る。しくじる。「失敗シッパイ」「過失カシツ」 (4)にげる。にがす。その場を去る。「失跡シッセキ」「失踪シッソウ

イメージ  「うしなう」 (失・跌・迭)
       「その場を去る:意味(4)」 (佚)
       「同音代替」 (秩・帙・鉄)
音の変化  シツ:失  チツ:秩・帙  テツ:迭・跌・鉄  イツ:佚

うしなう
 テツ・つまずく  足部
解字 「足(あし)+失(うしなう)」の会意形声。足の置く場所を見失って、つまずくこと。
意味 (1)つまずく(跌く)。たおれる。「蹉跌サテツ」(つまずく。失敗する) (2)あやまつ。「跌誤テツゴ」 (3)こえる。度をこす。
 テツ・(かわる)  之部
解字 「之(ゆく)+失(うしなう)」 の会意形声。人が現在いる場所をうしない、その場を去り、別の人がくること。入れ替わる意。
意味 かわる(迭る)。かわるがわる。入れ替わる。「更迭コウテツ」(人がかわる、また、かえること)「迭立テツリツ」(かわるがわる立つ)

その場を去る
 イツ・テツ  イ部
解字 「イ(ひと)+失(その場を去る)」 の会意形声。人がその場をのがれ、かくれること。人以外にも、ぬけて見えなくなる意で用いる。また、人が隠れ住んだ所で気ままに楽しむこと。常用漢字でないため同音の逸イツに置き換えることがある。
意味 (1)のがれる。かくれる。「佚民イツミン」(隠れ住む人=逸民) (2)ぬけて見えなくなる。「散佚サンイツ」(散りうせる。=散逸)「佚文イツブン」(散佚して伝わらない、また、一部だけ残っている文書=逸文) (3)気ままにたのしむ。「安佚アンイツ」(安心して楽しむ)「佚楽イツラク」(気ままに遊び楽しむ)

同音代替
 チツ・ジチ  禾部
解字 「禾(こくもつ)+失(チツ・ジチ)」 の形声。ジチは実[實]ジチ・ジツ(中身がいっぱいつまる)に通じ、収穫した穀物を倉庫に積み重ねること。順序よく積むことから、重なった物事の順序を表わす。
意味 (1)物事の順序。次第。「秩序チツジョ」(①順序・次第。②社会のきちんとした状態) (2)くらい。官職。役人の俸給。扶持ふち。「秩禄チツロク」(官職によって支給される俸給)「俸秩ホウチツ
 チツ・ジチ・ふまき  巾部
 
解字 「巾(ぬの)+失(=秩。順序よく)」の形声。和とじの本を順序よく積んで包む布張りのおおいのこと。
意味 (1)ちつ(帙)。ふまき(帙)。ふみづつみ。「書帙ショチツ」「巻帙カンチツ」(書籍の巻と帙。転じて書籍。また、その巻数)
 テツ  金部
解字 「金(きんぞく)+失(テツ)」 の形声。旧字はテツで、「金+の右辺テツ(黒い)」の会意形声で黒い金属の意。鉄は、同じ発音の失テツに当てた文字。失に迭テツの音がある。
意味 (1)てつ(鉄)。くろがね。「鉄鉱テッコウ」「鉄器テッキ」 (2)刃物。兵器。「鉄血テッケツ」(兵器と兵隊)「寸鉄スンテツ」(小さい刃物) (3)鉄のようにかたい。「鉄人テツジン」「鉄腕テツワン
<紫色は常用漢字>

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